ソフトクリーム
あの日食べたソフトクリームは人生でいちばん美味しかった。
今から35年ほど前の話。
行くあてがあったのかきっかけはなんだったのか今となっては分からないけども、母と2人で自宅から1時間半ぐらい歩いた所にその店はあった。
店の名前はブルボン。
大通りと脇道に挟まれた三角地帯で洋菓子を売る店だったと思う。
真夏の暑さにちょうど疲れ始めた時、飛び込んできたソフトクリームの文字。
私は思わずもう歩けないとだだをこねた。
休憩しよっか。
そう言うと母と一緒に店に入りソフトクリームをテイクアウトした。
白くて冷たくて甘いそれは今思い返してもヨダレが出てきそうな味覚。
あの日から変わらずずっとそこにブルボンは存在していた。
すっかり大人になってしまったけどもいつも店は待ち構えていた。いつかまた再訪しようと思っていた。
いつからだろう。
シャッターが降りたままの日もあり
その頻度が多くなったのは。
そして月日は流れ、とうとう看板もなくなりシャッターが開く事はなくなった。
ソフトクリーム下さい!って初めて言えたあの日。
5歳の私には大冒険だった思い出。