祇園囃子の聴こえぬ街へ・3
今年の祇園祭は社会情勢により様々な行事が中止や縮小をよぎなくされております。
そんな中、各山鉾町のいくつかは、ちまきやお守りを販売してくださり、本当に有り難いことであります。
その中でも何とも嬉しかったのが黒主山。
何が嬉しかったと言ってこれ、ご町内に提灯を建ててくださったこと。
山鉾と一緒にこれが建つと、ものすごく祭気分が盛り上がるのです。
山鉾が建つと車は勿論通れなくなるので、否応無しに歩行者天国となります。その雰囲気も祭気分を助長してくれるのですが、その時の気持ちを思い出させてくれました。
「ああ、宵山だぁ」て目が覚めるような思いがして、涙が出そうになった。
自分内にどれ程祇園祭成分が不足していたかをしみじみと感じました。
一年前まで毎年当たり前にあったものが、たった一回、なくなっただけなのに、こんなにも慕わしく懐かしいとは。
祇園祭山鉾連合会の理事長さんがテレビで言っておられましたが、「この時期に祇園囃子を聴かない、山鉾を見ないと京都の人は体内時計がおかしくなったように感じられるんじゃないか」と。言い得て妙です。
ちなみにこの写真にちらっと写っている赤い看板のbistro Septさん、すごく好きな店だったのに、コロナもあってしばらくこの界隈に行かない内に、2月で閉店されていたのを初めて知った……ショックです。
大人のハンバーグ、大好きだったのに。
宵山には外の席で食べられるメニューをいくつも出されていてどれも大変美味しかった。
残念です。
黒主山会所であるマンションの1階前に置かれた旗
提灯を下から見上げてみたの図
そもそも自分、こちらの山が大変に好きでして。
うちわは勿論のこと、Tシャツも持ってます。
バックにストイックに一文字配された「黒」。
もう実に何とも、厨二心をくすぐりまくってくれる山であります。
好き過ぎて浴衣まで買いました。
一年の内、ほんの数日しか着られない代物ですが悔いは無し。
そういえば巡行の頃になると、駒形提灯模様の帯を締めたマダムをちらほらと見かけます。あれは真の贅沢。
本来は「舁山(かきやま)」、かつぐものであった山なのですが、今は車輪がついていて引っ張って移動します。
ですが辻回しの際はかつぎます。
その、かつぎ棒の先端の取っ手部分。
こんなところまでとことんカッコいい。
この取っ手デザイン、元治元年、1864年のものだそうです。天才か。
周囲の柵や台座までとことん黒地に赤。
このこだわりたるや。
舁き手の服も、他とはひと味違ってやたらにスタイリッシュです。
こちらの記事の写真なんか、もう格好良すぎて……。
ちなみに「黒主」とは大伴黒主のことだそうで、黒主さんが桜の花を仰いでいる様子が御神体となっています。
桜は勿論、造花なんですが、巡行でガタガタ運ばれていった後、道に落ちていたのを連れ合いが拾ってきてくれたのがこれ。
戸口に挿すと、悪事除け・泥棒除けになるとか。有り難し。