あの世につながる道を思う(想像強め)
親族が亡くなる。大往生だった。
お寺の出ということもあり、お坊さんのお経は長かった。朗々と響く、よい声だった。おりんと木魚のリズムと、お香の匂いが立ちこめて、本当に極楽浄土に行けそうな気がする。
旅立つ日のためにあつらえた白い仏衣に包まれて、長い闘病から解放され、穏やかな顔で横たわる故人から、ゆっくりと魂を引き離していくために、必要な時間と手順のように思えた。
華麗な生まれ変わりとはならずに、故人が三途の川を渡り、あの世につながる道を歩いて行く、という「成仏」のイメージは、宗派やお国柄は違っても似ていると思う。人が亡くなると、子どもの頃に父が読んでくれた『ライオンと魔女』を思い出す。C. S. ルイスの「ナルニア国物語」。
第二次世界大戦下のロンドンから疎開した四兄弟が衣装だんすに入り込み、古い毛皮のコートなどをかき分けていくとナルニア国につながっている。やはりルーシィが主役だと思う。雪が降る世界に街灯が見えて、紳士なフォーンのタムナスさんに出会い、お茶をして・・・。
古英語学者だった父が読むと、ときどき変なところで発音を気にしたりして、それがなんとなくイギリスのよい時代の文化や田舎の風景に見えてくる(戦時下なので恵まれてはないですが)。実写化された映画も好きでした。
雪が降る中で森の道をとぼとぼと、しかし道中で誠実な旅仲間を得て、あたたかい方へ、明るい方へ歩いていく。そんな旅になればと思う。
亡くなった親族はパワフルで、明るい人だった。戒名に「照」の文字が入る。
父も、それからイギリスで偶然出会い、忘れられない人となったおじさま、おばさまも、もう、この世の人ではない。いつか再会できる時は、極楽浄土だとよいですが!
お葬式には、おばさまの形見となった真珠を身につけた。私のお葬式の時は、お棺にこのネックレスを入れてもらおうと思っている。
この noteのトップの写真は、岩波書店Webサイトの『ライオンと魔女』(2000年版)の画像から拝借しました。
思い出に残るのは、オレンジの表紙の単行本です。『ライオンと魔女』の1966年版。この画像も、岩波書店Webサイトより。