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2011年4月に書いたこと:「要らない服を、誰が着ると思う?」

「要らない服を、誰が着ると思う?」という問いは、もう20年くらい前の!東京ボランティア・市民活動センターのスタッフの言葉だ。まさに善意の押しつけを戒める言葉である。
東日本大震災からさかのぼり、阪神淡路大震災をきっかけにボランティアや寄付の活動が盛んになっていく。1990年代の当時は「ボランティア元年」と呼ばれたように、企業も自治体も個人も、ボランティアや寄付をすることにまだ慣れていなくて、むしろ被災者や被災地が困ってしまう活動はたくさんあったと思う。
次第に災害時のボランティアや寄付の受け入れ体制と、「困った時はお互いさま」という社会的で良識的なコンセンサスが整えられていくが、受け入れる側は、誇りといった気持ちを含めて尊重されているか。
東日本大震災でもさまざまな寄付が増えた。私もわずかなりでも寄付をしたり、被災地にいる夫を支えようとしたりした。今でもフェアトレード・ショップで被災地の商品を選んでいる。もともと個人的な好みと経済的な理由で、服と本は、だいたいセカンドハンドの商品を購入していることもあるが・・・だからこそ、自分が不要だと思う服やものを「困っている人」に届けて自己満足することは、あってはならないと強く思う。
そんなことを思いながら、2011年4月に書いたブログ記事を転載したい。その際に寄せられたコメントと、先ほど調べなおしたお店やキャンペーン、施設の情報もあります☆

2011年4月26日のブログ(記事はそのままで、お店などの URLは再確認しました)

昨年秋、鎌倉に『トローヴス』という名の一風変わったリサイクルショップができた。お客が3人入ると身動きがとれないほど(!)小さなお店には、古着やアジア系の雑貨が所狭しと並ぶ。雑多さの中にスタッフのセンスが光る。店の売りは、それだけでない。経費を除く売り上げの全額が、途上国の子どもを支援する国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」の「EveryOne」というキャンペーンに寄付される。

 店の商品の仕入れ値は実質的に「ただ」。家庭の不要品を「寄付」してもらう仕組みだ。ただ、お店は寄付品を選ぶ。売れる商品(ゴミにならない物品!)をちゃんと選ばないと、子どもを支える(団体に寄付する)という目的に達することができないからだ。

 寄付を集める仕組みのお店は、「セーブ・ザ・チルドレン」の故郷にあたるイギリスによくある。チャリティショップと呼ばれ、Oxfamや赤十字のお店は全国に展開されている。教会の運営するお店、フェア・トレード商品も扱うお店もある。「いい年」の大人がジャンクな雑貨や古着が好きで(高級なアンティークも豊富だが!)、お金をかけない生活と慈善活動を美徳とするイギリスならではのシステム。スタッフはボランティアが多いと聞くが、それにしてもどうして経営が成り立っているのか不思議なほどのロー・プライス。

 チャリティショップの優れた点は、寄付品を直接届けるのではなく、お金に換えることだ。アンティークや「ジャンク」好きにとっては、センスの良い豊富な品揃えの店で特定の時代や工房のアンティークに巡りあったり、信じられないくらい安い買い物ができたり、ついでに寄付ができ、もしかしたら自分の「ジャンク」を寄付して家が片付いたりして、一石二鳥、三鳥の威力がある。

 以前、担当する授業のなかで、ある自治体のボランティア・センターを訪問した。旧知の専門員にレクチャーをお願いした。活動家の彼が、学生に発した問いが忘れられない。どんな活動ができる?と彼がたずねると、学生が口々に「古着を寄付する!」と答えた。流行に敏感で、たしかにたくさんの洋服と、「ジャンク」となった服をため込んでいそうな学生たちだ。すると彼は、学生にたずねた。「要らない服を、誰が着ると思う?」、「あなたは古着を着たい?」

 困った人に「不用品」をあげれば喜んでもらえる、という安易で、場合によっては傲慢かつ不遜な発想を、彼はいさめたのだ。もとはと言えば自分で選んで購入したはずの洋服や雑貨だ。選ぶ視点が異なる他者が喜んで受け入れてくれるだろうか、そうした「善意」を受け入れる他者の視点を忘れていないか・・・・・。

 私自身が学生時代(10年以上前だが!)、障害児者や高齢者の施設で「不用品」の仕分けを手伝った経験がある。突然、段ボールで送られてくる寄付品。善意はありがたいのだが、若い私には、流行遅れの洋服や何かの景品のような雑貨や食器、時には洗濯していないような古着が入っていることが、ひどく悔しかったりした。着物や帯が入っていることもあったが、古着屋に持っていくのは一手間だし・・・・・。

 もちろん、定期的にバザーをしたり、入居者が元気に楽しく物品を選んでくれるような施設ではよいが、やはり問い合わせてから送るのが最低限のマナーと言えよう。要らない物を「善意」として押しつけるのではなく、必要な物を必要な人に送る、プレゼントするという基本は、決して忘れてはならないと思う。

 東日本大震災では、全国からたくさんの義援金の他に、寄付品が集められていくと聞く。乾電池やカイロなど必要な物品のみを募り、それぞれ段ボールの天地すべてに品目を明記して詰めてから送ってもらう、という仕組みが徹底されたことは、素晴らしいと思う。インターネットやローカルFMなどのピンポイントの呼びかけも、効果的であったようだ。寄付の方法は高度に洗練されてきているのだろう。

 報道されたもので「うまい!」と思った仕組みは、送る人が実際に使い、日頃身に付けている物や服をセットにして、手紙も同封して「プレゼント」とするもの。さまざまな得意分野をもつ団体が協同して、一つの大きな団体として寄付品を募るもの。

 冒頭のチャリティショップ「トローヴス」は、被災者の支援のためのセールを展開している。堅くない仕事の日に使えそうな薄手の白地に刺繍がたくさんのジャケット、アウトドア・ブランドの丈夫そうでコンパクトなポロシャツ、黒地にアジアンな刺繍の針山を選ぶ。半額セールで計1,800円ほど。ううん、いいのだろうか☆


ブログに寄せられたコメント: nekohandさん、ありがとうございました!

いらない物だから、使わない物だから・・・
受け取る方も、そんな気持ちじゃ、だったら貰ってあげる、
ってなりますよね、

大切な物を、大事に使ってもらいたい、
気に入ってもらいたい、
そんな気持ちで、受け渡し出来れば気持ちいいだろうと思いました、
お店を通してしまうと、感謝する気持ちが薄くなることにも気が付きました、お金払ってるんだからって・・・

古着って、着ていた本人にはすっごい思い入れがあるのかもしれませんね・・・そんなのは売りませんか?(笑)
でも、いいように取ると、幸せな気持ちになれますね、古着って

投稿: nekohand | 2011年4月26日 (火) 20時46分


古着って好き嫌いが分かれるような・・・・・
nekohandさんは抵抗はないですか?

学生時代は「塾の先生」のスーツ以外は
古着ウェルカム(部活のユニフォームも☆)だった私。
実家の近くは「いい感じ」の骨董屋が多かったので♪
古着って、住んでいる環境や友人に左右されるものかも

究極の古着探しはフリーマーケットではないかと思います。
大切で思い入れのある品を直接、本人が売るのですから☆
そんな古着に巡り合えると、たしかに幸せになれそうです

思い入れがありすぎて逆に売れない物もありそうです
「こだわりの注文住宅」「改造したシステムキッチン」などは高額な分、本当に売りづらいとか(不動産ウーマンの知人談の受け売りです)。

うまく買う側とテイストがマッチするよう祈りたいです!

投稿: みどり | 2011年4月26日 (火) 23時25分


ブログ記事で紹介した鎌倉のお店やキャンペーン、施設の情報はこちら!

ワンダーキッチン(WanderKitchen、神奈川県鎌倉市)

鎌倉の御成にあるおしゃれカフェ。震災当時は長谷の一軒家でした。


troves kamakura (トローヴス、神奈川県鎌倉市)

ワンダーキッチンが2010年7月に始めた「循環型社会貢献店舗」。


国際NGO セーブ・ザ・チルドレンのグローバル・キャンペーン「EVERY ONE」

「子どもたちが予防や治療が可能な病気で亡くなることのない世界の実現」が目指されています。


東京ボランティア・市民活動センター(東京都新宿区)

ブログ記事にあるボランティア・センターはここです。
学生に「要らない服を、誰が着ると思う?」と話してその場をぴりりと引き締めたスタッフは、現在は大学の先生をしています。当時の勤務先から30分ほどだったので、「ボランティア論」と「地域社会と子ども」という授業で見学し、ボランティア活動に関心のある学生は情報を教えてもらって実際に参加していました。
国際NGOの職員になったスタッフもいて、さまざまな活動を知る窓口になりました。私自身が学生時代に地元の社会福祉協議会で、若者向けにボランティアの広報誌を作る活動をしていて、当時の手書き!の広報誌がストックされていて、うれしかったです。


新潟市江南区郷土資料館(新潟県新潟市)

この noteのトップの画像は、港南区郷土資料館の展示風景です。
亀田縞という郷土の織物が、機織り機などの道具や、それ自体が歴史資料として価値がありそうな解説パネルとともに所狭しと並べられていました。きれいな縞や色の入った厚手の木綿で、着心地がよさそう。山口智子さんが素敵に着こなしている写真もありました!
余談ですが、江南区郷土資料館の建物は要塞みたいで、とてもかっこいいのです☆ 郷土資料館の他、図書館と公民館と抱き合わせた「江南区文化会館」となっていて、隣に亀田総合体育館(アスパーク亀田)もあります。


亀田繊維工業協同組合(新潟県新潟市)

新潟市江南区の亀田縞の織元・流通の組合の、かっこいいWebサイトを見つけました。
亀田縞は、もともと江戸時代に米どころの越後で生まれた野良着だそうです。江南区郷土資料館の展示で初めて知りました。鈍色がかった丈夫そうな木綿で、シンプルで何重にも重なるストライプがきれいでした!


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