「虎に翼」と女高師附属の高等女学校
NHK連続テレビ小説「虎に翼」。明治大学史資料センターの「女性法曹養成機関のパイオニア:明治大学法学部と女子部」展(2024年10月28日まで)は、弁護士や裁判官となる寅子(伊藤沙莉さん)、桂場等一郎(松山ケンイチさん)、はるさん(石田ゆり子さん)などの等身大パネルと貴重な資料でいっぱいでした!
チャンピオンベルトが輝く✨セーラー服
大人気の朝ドラ「虎に翼」
「虎に翼」は、戦争や女性の置かれた理不尽な環境に翻弄されながら法曹界を切り開いていく寅子の波瀾万丈なストーリーで、15分があっという間です。一癖あるけど好きにならずにいられない同級生と家族、癖が強すぎるけど!清貧で理想が高い弁護士や裁判官、そして市井の一人ひとりが丁寧に描かれ、その台詞に聞き入ってしまう。
登場人物が住み、働く建物や甘味処「竹もと」(神田の「竹むら」がモデルだそうです)といった背景や道具類の時代考証がしっかりして説得力があります。
お茶の水にあった女学校
当時は女性にとり、実質的な最高学府だった東京女子高等師範学校。その附属の高等女学校で、寅子はもちろん、モデルとなった三淵嘉子さんが学びました。現在はお茶の水女子大学とその附属校となり、幼稚園から高等学校までが、お茶大と同じ茗荷谷(文京区大塚)のキャンパス内にあります。
関東大震災で現在のお茶の水一帯は焼け野原となり、東京女子高等師範学校とその附属校は校舎が焼けるなどして大塚に移転しますが、かつては明治大学と目と鼻の先にありました。移転する前は、女高師や附属校の生徒たちが甘味処や本屋、ニコライ堂もあったりするお茶の水や神保町界隈を行き交いしていたんだろうな・・・。
寅子の制服は、お茶中のセーラー服
ドラマがスタートしたばかりの4月に、思わず見入ったのは女学校の制服でした。それはセーラー服。お茶中生だった私には懐かしい制服です。それこそ一癖あるデザインで、上着の丈は長め。その上から、焦げ茶色と抹茶色のストライプで栗の模様の入ったベルトをガチャッと締めます。真ん中には校章が浮き上がった金色で、少し重めの直径5、6センチほどのバックルが。チャンピオンベルトと呼ばれていました(笑) ドラマでは落ち着いた錫のような色に見えました。
セーラー服のスカーフは濃紺のシルクで大きめ。おしゃれな同級生は、少し後ろで止めてスカーフを短くしていました。ふわっとしているけど艶がありしっかりしたスカーフの質感は、「とらつば」でリアルに再現されていました。布地が重めで、ちょっと野暮ったいセーラー服でしたが、寅子たちは素敵に着こなしていて、脳内の自分の姿の記憶が塗り替えられたような気がします?!
高等女学校のルーツをもつ私立の女子校は、三越の制服が多いかと思います。お茶大附属の制服は、近所の槌屋という名前の洋服店の他、丸ビルの中のレトロなお店でした。もっとも丸ビルはリニューアルしたので、中高生の制服を受けるようなお店は残っていないかもしれません。
明治大学専門部女子部の存在の大きさ
女学生と法学部
女高師の附属校には全国から優秀な生徒が集まりましたが、法学部どころか、そもそも大学に女性は進学できませんでした。高等女学校は、男子校である中学校に準ずる学校となっていて、例えば漢文がない、外国語は(中学校は7単位だけど)3単位しかない、だけど家事2単位、裁縫4単位があるなどで、中学校とかなり教育課程が異なります。大学に進学できる制度設計ではない・・・。
だからこそ、明治大学の法学部に進学できるよう、予備校のような「女子部」を作ったことは、明治大学の素晴らしい英断だったと思います。
「女性法曹養成機関のパイオニア」展では入学希望者に配られた「入学志願者心得」や、女子学生で講堂があふれるような女子部開校式の写真パネルなどがあり、胸アツでした。明治大学の法学部と、女子部法科のカリキュラムの対比のパネルもあり、女子部の科目はほぼ必修だったり、「簿記」科目があったりと、細かな工夫がされていました。女子部で学んだ生徒が満を持して男性ばかりの法学部に入学する、という画期的な仕組みが作られたことになります。
女子大学の専門分野のこれから
東京女子高等師範学校は、女性にとり戦前の最高学府でしたが、教員養成に特化した学校でした。現在のお茶の水女子大学に法学部はないですが、共創工学部という、文理の枠を超えて工学系の分野を充実させた学部が新設されました。
もっと攻めているのが私立の京都女子大学で、法学部がある上、「データサイエンス学部」もできました。工学、といっても情報技術や建築の分野を充実させるのがトレンドかもしれません。女子高も理系が増えているように思います。
「虎に翼」人気で、法学部が増えるかもしれません! 弁護士の同級生は天職かもしれなくて、生き生きお仕事しています。朝ドラの勢いで!法学部という選択肢が、もっと身近になってほしいです。
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