結婚の決め手は「排水口掃除」
結婚をする前にほんの少し、今の夫と同棲した。本当に少しだけど。しかも私はその後妊娠してつわり地獄に入るので、2人で楽しく生活した記憶がほとんどない。2人で住むのをとても楽しみにしていたはずなのに「同棲したてのラブラブカップル~♡」みたいな記憶が本当にない。
それでも「この人となら結婚したい」と思ったことがあった。それは今でも覚えている。
同棲=結婚、という考え方はまったくなかった。同棲は結婚前の、ある意味テストだと思っていた。24時間一緒にいれば、今まで見てこなかった姿もたくさん見るだろう。生活スタイルとか、価値観とか、育ってきた環境がまったく違うんだから。私が彼のことを無理だと思うかもしれないし、彼が私のことを無理だと思うかもしれない。それはそれで仕方ない。この先長い人生を一生一緒に過ごすんだから、簡単に決めてはいけない。
♢
本当に細かいことはよく覚えていないのだけど、ある日彼はお風呂掃除をしていた。今では基本的に私がお風呂掃除をしているけど、当時は彼が担当していた気がする。狭くて小さなお風呂を、ピカピカにしてくれていた。排水口まで、ピカピカだった。
「かおりちゃん! お風呂ピカピカになったよ!」
「汚いところは俺がやるから言ってね!」
記憶が定かではないけど、こんなようなことを言った。
♢♦
私が感動したのは「汚いところ(排水口とか)はキミの手を汚させたくないから俺がやるよ」というスタンスのところ。
これはまったく彼が狙って言ったのではなく、本当に心の底から言っていたのが分かったから感動したのである。
そして思ってはいるものの、実行できる男性も多くはない。だって排水口掃除、したくないもんね。排水口の奥のあの、きったなーいところまでだよ?
あの一言で「ああ、この人は人が嫌がることも率先してできる人なんだ」と思ったし、甘やかされて育ってきた私にはそれが、王子様の言葉のように感じられたのだ。え、ちょろい?
♢♦♢
これで、私の彼への同棲テストは合格! (何様)
今でも汚いところの掃除は彼に任せています。「だってあの時言ったでしょ」って。
私も彼を見習って、人がやりたくない仕事も、自分ができることなら引き受けようと思うようになった。人として、少しアップデートできたような気がする。