オイディプス王
パルテノン多摩でオイディプス王を見てきました。
久しぶりのギリシャ悲劇
とはいえ、舞台見てると多分パリロンドンくらいには頻繁に訪れる地、テーベ!!知ってる知ってる。だいたい実家だわ。
預言者に父を殺し、母と近親相姦を結ぶと予言されたオイディプスは、父母によってくるぶしにブローチの針を刺され、両脚を縛って殺されようとするけれど、哀れに思った召使によってこそっと隣国コリントスに逃がされ、コリントスの王子として育てられる。
大きくなって、自分が父をころし、母と近親相姦するって予言を受けたオイディプスは、自分をコリントス王の子どもって思ってるから、コリントス王を殺さないようにコリントスから逃げるの。
その最中に道でそれが父だともテーベ王だとも知らないまま父のテーベ王を殺しちゃう。そしてテーベに帰ってきてスフィンクスの謎を解き英雄になり、テーベの王として迎えられて母と知らないまま母を妃に取る。
お話は、王様になったオイディプス王に、「元のテーベ王を殺した者を探し出して追放しないとテーベの災難が止まない」っていう神託が下されたところから始まるの。
何も知らないオイディプスは犯人を探す。ここからオイディプス王が自分がしたことを知っていくお話し。自分が予言通り父を殺し、母と姦通したことを知ったオイディプス王は自分の目を針で貫き、自らを追放するように命じる。
アフタートークで石丸さちこさんが王のことを「神と民の間を繋ぐ存在」って言ってたけど、三浦涼介さんはまさにそういう神がかった美しさと存在感があった。
あと、大空ゆうひさんのイオカステが壮絶に美で、そりゃあ、神がかった美しさの三浦涼介さんオイディプスは、神がかった美しい母から生まれたに決まってるでしょうよ!!わたしは顔を見た瞬間から親子だってわかってたよーーってなったよね。
神官の今井朋彦さんが、言葉をあやつって、音楽みたいに言葉をつれてきて、神官が神からの言葉をこうやって届けたんだって納得しちゃった。ちょっと言葉が固体っぽいの。手に乗せて物理的にこの手に受け取った感じ。
ギリシャ悲劇をその時代の価値観や伝え方で受け取った感じだった。
それは多分コロスの力で、ひとりの人格だったり、民衆の感情の波だったり、人でもない祈りの具現化だったり、自由自在に形を変えてもりもりやってきた。すご!!コロスってこういうことなのか。すっっご!!
大久保祥太郎さん、悠未ひろさんといったコロスのボスみたいな人たちが、声を先導したり、動きの先頭に立ったり、人間のオーケストラの指揮者みたいだった。複数人で一つの魂がある何かを表現するってちょっと神がかって怖くない?そういう怖さ。
コロスが、テーベの民衆として、テーベの感情として場の感情を作ってるんだけど、オイディプス王の罪に対して、テーベの民は糾弾しないの。オイディプスを裁くのはアポロンをはじめとした神だけで、にんげんはオイディプスの罪を裁く立場にない。にんげんは、ただオイディプスの罪をおそれて、オイディプスの運命に対して一緒に嘆くの。
これってわたしが今とるべき立場な気がしてはっとしたの。
誰かが罪を犯した時に、「わたし」がその罪を裁くのは違うよね。わたし「たち」が裁くのも違う。そんなのリンチだよね。
コロスが「わたしたち」に相当するとおもうんだけど、コロスはただただ運命を嘆いて罪を畏れただけだった。SNS上で行われてる私刑って自分が神様になったみたいな気持ちがして気分がいいけど、本来ひとが人を裁くって無理がある。
今は「神」が「法律」「裁判というシステム」になったけど、システムとしての法律や裁判を運営してるからって人間が誰かを裁けると思っちゃいけないと思ってるの。
オイディプス王の後、王となるクレオンは、自分を追放してくれと願うオイディプスに対して、「神にはかるべきだ」といって自分で判断しなかった。こういう潔癖さを法律家としてわたしも持っておこうって思ったの。ことさら新木宏典さんのクレオンが潔癖だったからそう思ったのかも
昔オイディプス王を見た時は殺人とか近親相姦とか、目に針とか痛すぎるようとかが先立ってショックだった覚えしかないけど、年を重ねて同じものが別の視点で見えるの面白いね。
目に針を打って暗闇しか見えなくなったオイディプス王はそれは美しくて、穏やかだった。「ありとあらゆる不幸が揃っているのだ」っていう時の、その不幸を受け入れた安心感みたいなものがなんかちょっと救いだったな。
訳者の河合祥一郎さんは、もちろん素晴らしいシェイクスピアの翻訳者なんだけど、わたしにとってはナルニア国物語やドリトル先生、アリスなんかで、もう擦り切れるくらい読んだ本の翻訳者なの。だからなんというか、生まれる前から聞いてたリズムの物語なの。
実家絵本を引っ張り出して読んで、動けないくらい感動しちゃった感じする。素敵な演劇体験だったな。パルテノン多摩も素敵な劇場だった!!
ただ、とおおおおおおいのーーー!
2000字も感想書いといて、まだまだお家まで長い道のりです。
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