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「プロダクトのように組織を開発する」仮説検証を繰り返すプレイドのオンボーディング戦略

プレイドでAccelerator/HRを担当している城です。プレイドでは「KARTE Dojo」と「TECH::Dojo」という2つのタレントオンボーディングの取り組みがあります。
今回は、プロダクトや技術に関する社内理解を深めるための2つのオンボーディングプログラムがどのようにスタートし、運用しながら改善をしていったのかを紹介します。

技術とプロダクトの理解を深める2つの「Dojo」

まず、2つのタレントオンボーディングプログラム「Dojo」について簡単に紹介します。Dojoのネーミングは「道場」から来ており、文字通り道場のようにプロダクトや技術についてのインプット・トレーニングを行うための仕組みです。

KARTE Dojoは、入社後なるべく早い段階でクライアントよりもKARTEを知っている、使える状態にするため、合計で5日程度の時間をかけてKARTE自体を利用しながら学ぶプログラムです。



自分のECサイトを作るところから入り、SMS、LINE、webhook等を使っての配信まで、KARTEのあらゆるシーンを網羅する内容となっています。上の画像は、KARTE Dojoのプログラムの一部です。

TECH::Dojoは、KARTEの機能やKARTEで実現できることを理解するため、技術的な知識についてインプットするためのプログラムです。社外で講座に通うと多額の受講料が必要になるような講座+ハンズオンのプログラムを提供しています。

KARTEのそのものの理解と、KARTEを理解する上で前提となる技術的な知識のインプットを、2つのDojoが担っています。続いて、それぞれのDojoが生まれた経緯と、どう変化していったのかを紹介していきます。

社内の共通言語を作るために始まった、KARTE Dojo

KARTE Dojoの取り組みは、2018年4月にKARTEがCXプラットフォームへリブランドしたタイミングに始まりました。KARTEが機能拡充していくスピードが早くなり、周辺サービスも増えていたタイミング。さらに、リテラシーの高いクライアントも増えていました。

プロダクトの進化に合わせて、採用にも変化がありました。前職での業務領域と親和性の高くないメンバーを採用するケースも増え、技術知識に明るくないビジネスサイドの入社も増えていたのです。課題は、どうすれば新しく入ってきたメンバーの技術のリテラシーが上がり、いち早くプロダクトを理解し、そして使いこなせる状態に持っていけるかということでした。

KARTE Dojoの土台となったのは、チャットサポートの練習問題です。元々、プレイドのメンバーはクライアントのことをより理解するために、どんな役割であれ、チャットサポートを担当することになっていました。私も前職はHRでしたが、プレイドに入社してチャットサポートを担当することに。KARTEについて適切にチャットサポートするのは至難の業だったので、他のメンバーがキャッチアップしやすいように練習問題を作っていました。

ただ、チャットサポートの練習問題はあくまでもチャットサポートができることを目的にしたもの。入社したメンバーがいち早く活躍してもらえるように、KARTEについて必要な知識を体系的に整理しようということでKARTE Dojoは始まりました。

KARTE Dojoには、KARTEというプロダクトの理解を促進し、社内に共通言語を作る目的があり、加えて会社全体で技術の知識を上げることでエンジニアとの脳内の同期率を上げる狙いもありました。プレイドはKARTEが働く上でのベースとなっているので、そこを理解するとプロダクトに関して職種を超えて誰でも対等に議論することが可能になり、事業のスピードが上がると考えたのです。

また、新しいメンバーはプロダクトに対して、ピュアな視点を持っています。KARTE Dojoを体験してもらって、KARTEにわかりにくい点や使いにくい点があれば、それをフィードバックしてもらうことができる。KARTE Dojoには、KARTEをより良くするためのフィードバックを得る機会にする目的もありました。

KARTE Dojoを作る上で、まず私とCPOの柴山とエンジニアのメンバーと3人で、どういうシナリオがあれば、KARTEを理解できるのかを全て洗い出しました。その上で、KARTEを理解するために必要な具体的な内容を考え、プロトタイプをつくり、テストを実施しました。

シナリオの洗い出しからテストまでは1週間ほど。最初はDropbox Paperでシナリオを書いていましたが、2ヶ月後からはゆくゆくは社外のクライアントも利用可能にできるようにすることを見越して「Teachable」を使って構築していきました。

Teachableに移行したタイミングで、KARTE Dojoをaccelerator(PLAIDではコーポレートのメンバーをacceleratorと呼んでいます)にも受講してもらいました。KARTEのクライアントは多様で、リテラシーも様々です。acceleratorにもKARTE Dojoを利用してもらうことで、より幅広いリテラシーに対応可能なプログラムにできるようにと考えました。

PDCAを重ねてセルフサーブ可能なプログラムに

その後は毎月入社してくるメンバーにKARTE Dojoを使ってもらい、そこでのフィードバックを踏まえて改善し、翌月に入社してくるメンバー向けに体験してもらうという流れを繰り返していきました。

最初のKARTE Dojoは、時間と場所をおさえて、どんな職種の人も一緒に5日間終日受講するプログラムでした。プレイドのエンジニア社員が「師範」として参加し、何かわからないことがあったら聞けるというスタイルです。

ところが、何回か重ねると、職種によってKARTEを理解するベストなタイミングが違うことがわかってきました。例えば、セールスであればまずKARTEのコンセプトや世界観の理解が大事。いきなり機能についての知識をインプットしてしまうと、全体像を描きにくくなってしまいます。KARTEについてインプットする際、セールスは下記のような優先順位で進めていくのが理解しやすいことがわかってきました。

この他にも、継続して実施していると、色々と課題が浮かび上がります。2018年11月頃にはそれまでのフィードバックを踏まえて、よりスムーズに理解を深めてもらいやすくするため、ボリュームやコンテンツの提供方法の再検討を行いました。結果、それまでは機能別に分けていたコンテンツをレベル別に変更。

その次に浮上した課題は、業務と紐付いていないと、KARTE Dojoを終わらせることが目的になってしまうというもの。「KARTEを理解する」という本来の目的に沿うように変更を余儀なくされました。

ちょうど「サポートサイト」のリニューアルなどKARTEを理解するための環境も揃ってきていたタイミングだったこともあり、本人が必要だと感じたタイミングでやってもらおうと、時間も場所も拘束していたのを完全にセルフサーブのスタイルに変更しました。

今は入社初日にどういうタイミングでKARTE Dojoを利用するといいかを伝え、学ぶタイミングは一人ひとりに任せるスタイルで継続しています。

技術のリテラシーを上げるためのTECH::Dojo

KARTE Dojoをスタートして、少ししてから始まったのがTECH::Dojoです。KARTEを使いこなすためのKARTE Dojoとは異なり、TECH::DojoはKARTEの機能やKARTEで実現できることをより理解するため、技術的な知識についてインプットするためのプログラムです。

TECH::Dojoが必要になった背景には、多種多様なKARTEのクライアントの存在があります。クライアントが多様だと、トークスクリプトを覚えるだけでは対応できない場面も珍しくありません。技術やプロダクトの本質を理解した上で、クライアントのニーズを正確に掴み、そこに対してKARTEがどのように寄与できるかを自分なりにクライアントと対話できるだけのリテラシーはビジネスサイドのメンバーにも必要でした。

そのためには基本的な技術のリテラシーを身につける必要があるということで、TECH::Dojoが始まりました。

KARTE Dojoと同様に、TECH::Dojoも5日間のプログラムとしてスタート。最初はプレイドのエンジニアがつきっきりで教えていましたが、その後すぐに外部講師をお呼びして、プレイド向けにカスタマイズしてもらったプログラムを実施するスタイルに移行しました。
なんとなく知っている技術をしっかり理解するために、1回6時間の講座のうち最初の2時間は講義を受け、あと半日は講師がハンズオンで付きながら手を動かして学ぶスタイルです。

当初は入社後すぐにTECH::Dojoを受講し、翌週はKARTE Dojoに取り組むようなスケジューリングにしていました。ただ、TECH::Dojoで5日間、KARTE Dojoで5日間、計10日間インプットをしていても、知識が身になったというフィードバックはあまり得られませんでした。

メンバーにヒアリングしてみるとKARTEのことを知らない状態で、技術のインプットをしても定着しないことがわかりました。それを踏まえ、TECH::Dojo実施前にKARTEのコンセプトやKARTEの基本操作を知ってもらうため、KARTE Dojoのカリキュラムの一部を事前に見ておいてもらうように変更、かつTECH::Dojoを絶対に知らないといけないことだけ抜粋した3日間のプログラムに変更しました。

3日間のプログラムでは、初日に「HTML、CSS」、2日目に「DOM」、3日目に「SQL」を学びます。


また、「知識を自分のものにするために復習をする時間が必要」というフィードバックを受けて、受講の仕方も3日間まとめて時間をとるのではなく、カリキュラムも1日1テーマ、週1回ペースでの開催で、毎回参加希望者を募って運営するスタイルに変更しました。
そしてこのタイミングで新入社員向けのみに実施するのを止め、全社員が受講できるように変更しました。

このスタイルに変更する前は、既存のメンバーからも「受けてみたい」というニーズをもらっていたものの、業務との兼ね合いで3日間連続で時間を取ることは難しいという理由で参加出来ない状況になっていました。今では既にKARTEのことをよく知っているメンバーが参加することによって、「この技術がKARTEのXXの機能を実現させているのか」など、KARTEと技術を紐付けた会話がTECH::Dojo内で交わされることが増え、新入社員がより早くプロダクトと技術を理解できることにつながっているのではないかと思います。

また既存メンバーからのニーズを受けて、5日間から3日間にプログラムを変更した際に休止した「フロントとサーバーサイドつなぎこみ/API」や「クッキー/セッション」というテーマも復活させました。現在はビジネスサイドだけでなく、法務や経理のメンバーも受講することもあります。

プレイドは、BizとDevの境界が曖昧な組織です。エンジニアにはビジネスの話ができる人たちが多いため、TECH::Dojoを使って、ビジネス/acceleratorのメンバーが技術のリテラシーを向上させ、エンジニアと共通の言葉でフラットに話せるようになれば、更にプロダクトや事業の優位性につながるのではと期待しています。

社外のオンボーディングにも展開

プレイドには、ニーズや課題点の把握のために、開発したサービスを自らがユーザーとして日常的に使う「ドッグフーディング」のカルチャーがあります。KARTE Dojoもまずは社内でドッグフーディングを行い、ゆくゆくは外に向けてリリースする前提で作っていました。

2019年の年始からは、徐々に社外にKARTE Dojoを展開するための準備を進めています。定期的に実施しているKARTEのクライアント向けセミナーを、新しく入社した社員にも受講してもらい、その後KARTE Dojoを受講してもらってセルフサーブでKARTEが使えるようになるかをテストしています。クライアントが実際に経験するのと同様の流れで新入社員がKARTEを使いこなせるくらいにプログラムが育てば、クライアントもKARTE Dojoを使ってセルフサーブでKARTEが使えるようになるはずです。

KARTE DojoによってセルフサーブでKARTEが使えるようになれば、KARTEの海外展開も視野に入ってきます。また、Salesforceが同社のツールを使いこなしているユーザーを「Trailblazer」と呼称しているように、KARTEを使いこなすユーザーに名称をつけ、資格化するといったこともありえるかもしれません。

これまではHRの担当者として、タレントオンボーディングの観点から私がKARTE DojoやTECH::Dojoの土台を作ってきましたが、今後はこれらのプログラムがより大きな目的を果たせるよう、事業との境目を溶かしてブラッシュアップしていく段階です。どんどん進化するKARTEにあわせ、社内の誰もがこのプログラムを進化させていけるような運用方法へ変更することに挑戦する予定です。

プレイドは、社内だけではなく社会全体においてテクノロジーのリテラシーを向上させることで、さらに人の可能性が拡張していくと考えるメンバーが集まっています。一緒にデータによって人の価値を最大化することに挑戦する人のご応募をお待ちしています!


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