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農業ボランティアを体験してきた。キラキラした苗を植えた話

友人に誘われて、農業ボランティアに行ってきた、先週の日曜日。千葉・南房総の安西農園さん。安西さんの野菜を販売する「百笑園」では、何回か通販でお買い物をしたことがあった。いつもダンボール箱に入って届く野菜の、お世話をしに行ってきた、ということになる。

トウモロコシの苗の植え付け、4つの作業

南房総は、おととしの台風16号(令和元年房総半島台風)の被害が大きかったエリア。壊れたビニールハウスの修復などから、始まった農業ボランティアだったそうだ。誘ってくれた友人は何回も参加していた。

当日朝、東京を車で出発して、9時半に畑に到着すると、すでに作業は始まっていた。この日の作業は、トウモロコシの苗を畑に植え付けることだった。

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作業は4つに分かれていた。
①畑の畝に、マルチ(生体分解される黒いシート)で覆われたところに、プラスチックのペグを使って細い穴を掘る。
②ポットから苗をはずす
③苗を①の穴のそばに置く。1つの穴に1苗ずつ配っていく。
④苗の根を穴に入れて土をかぶせる。このとき、苗は深くもなく浅くもなく、一番下の葉が土から顔を出すくらいの深さに植えつける。
…という4つの仕事があり、①~④をひとりでやるのではなく、①なら①の担当になって、畝1列分ずつこなしていく。


ひたすら体を動かして、働く

作業はとても単純。単純作業ほど、手を動かしてみないとわからないことがたくさんあるものなのだけれど、手どころか全身を動かさないとわからないことだらけだった。

とにかくすべての作業はしゃがんで行う。だって地面に植えるのだから。当たり前だ。
私は最初に①の係になった。細長い支柱に30センチおきくらいの等間隔に印がついたものを定規がわりにして、畝に置き、印のところに穴を掘っていく。
土は柔らかいので簡単に穴は開くけれど、1回に開けられる穴は多くても5個。
1回、というのは、自分がしゃがんだ場所から手が届く範囲で開けられる穴という意味。

畝の両脇には細い溝のような通り道があるだけだ。そこにしゃがみこんで作業して、立ち上がって移動する。移動してまたしゃがんで3~5個の穴を開ける。この繰り返し。つまりスクワットだ。

当然、②以外の作業はすべてスクワットを伴う。

始めはシンプルにしゃがんでいたが、それでは膝もきついので、畝の端に膝をついてみる。でもそれもやがて膝が痛くなる。
中腰で穴を開けてみるが、穴の深さをひとつずつ指を入れて確認するので、中腰だけではできないし、しゃがむよりも中腰の方がずっとつらい。

何列分かの穴あけをしたあと、今度は④をやってみる。畝の端に腰を下ろして、体をひねって作業してみたりもする。が、この姿勢だと片手で体を支えなくてはならない。穴がしっかり深く掘れていれば、苗の根の部分はスポッとすんなり入るけれど、土がやわらかいので、穴の壁面が崩れて浅くなってしまっていることがときどきある。もう一度指で掘り起こしながら苗を入れ、土をかぶせる作業は、片手ではとてもやりづらい。
いずれにしても、しゃがむ→立つ・移動→しゃがむを繰り返していく。

では③は置くだけで楽なのか、というとまったくそうではない。苗はとてもデリケートで、手荒く扱ったら茎が根元から折れてしまう。穴に向かって投げるわけにもいかない(たまにスポッと入ってしまうことはあるけれど)。
やはりひとつひとつ、穴の近くにそっと置いていかねばならないので、しゃがむ。

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②の作業がいちばん楽…ではあるけれど、苗を傷つけないように、弱そうな苗はよけて、と、これは素人ではできない。安西さんのお母さんが②の専任だった。

単純作業というのは、マインドフルネス効果が高い。かなり集中する。ときどき仕事のことが頭をかすめたりするけれど、とにかく目の前の作業に没頭する。だんだん足が痛い、腰が痛い、どうも首も痛い、となってくるのだけれど、なぜだか没頭してしまう。時計も見るけれど、ああ10時半か…と思った次のタイミングはもう「お昼にしますかー」だった。

ボーッと青い空を眺める。それが休憩

昼食休みを小一時間はさんで、13時過ぎから作業を再開。
午前と別段変わったことはない。この日、お天気がよくて、朝のうちは寒かったけれど、日中はお日様が暑いくらいだった。

みんな、着ていたものをどんどん脱ぐ。「もうこれ以上は下着!」と言いながら、薄着になって作業する。午後、風が吹く。2月最後の日曜日。ものすごく気持ちいい。
膝も腰も痛くて、しゃがんで立ち上がるたびに青空を仰ぐ。ふだんめったにないくらい長く、ボーッと青空を仰ぐ。これが小さな休憩。

ときどき、畝の端に集まって、「はーやれやれ」と言いながら、少し長めのサボり…休憩をする。

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みんな手際はいい。だけど足腰がついていかない。

安西さんのお母さんが、「もうね、50年以上もやってるでしょ。腰も膝もまー痛い。」と言う。慣れるなんていうことは、ないんだな。きっと。

東京へ帰る。でも、農作業は続いていく

16時になり、本日の作業終了となる。まだたくさん、植えるべき苗は残っている。これは明日からの作業となっていく。

でも、私たちは東京に帰る。

植えられた苗は、けなげに大地に生えている。ちゃんと根付くだろうか…とても心配。午前中に植え付けた苗は、しおれたりすることなく、まっすぐ生えて葉もふんわりしている。大丈夫かな。大丈夫だよね。
西日が苗の薄い緑色に当たり、キラキラしている。
がんばって、成長してね。と思う。

このあと、まだまだたくさんの工程を経て、初夏には甘いトウモロコシになる、はず。楽しみだ。再会しにきっと来よう。

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残ったのは筋肉痛と、土の香り

それにしても。もう帰り道で筋肉痛はかなりひどくなり、夕飯に入ったファミレスで「ちょっとトイレ」と立ち上がろうとしたら激痛。その後まる2日、ひどい筋肉痛だった。丸1日スクワットしていたのだから。

苗を植えながら、土にどっしりとおしりを下ろし、それでも働き続けた1日。まったく軽やかではないけれど、丈夫な体に感謝する。もう少し、軽く立ったり座ったりができる体になっておきたいと、10年後の自分を考えながら思っていた。

手は、たくさんの仕事をする。
種をまく、苗を運ぶ、苗を植える、虫をつまむ、作物を手入れする、作物を刈り取る。そのときどきで、編んだりしごいたりひねったりつぶしたり様々な仕事をしていく。
それを、足腰が支える。
体で仕事をする。

現代の農業というと、オートメーション化されて、機械で植えて機械で刈り取られる野菜を、なんとなくイメージていた。
でも違う。手と足と体で、野菜は育てられている。
休み休み作業して、休むたびに広大な畑を見て、気が遠くなりそうだった。

すごく陳腐だけど、大地に、作ってくれる人に、感謝した。

帰宅して、履いていたゴム長の土を落とそうと、ビニール袋から出すと、ふわっと土の香りがした。とてもいい匂いだった。土は、とてもきれいだった。

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