4500万だから何か?産経新聞のミスリード~日本学術会議をめぐる謎の予算論
この見出しを見たら、どう思うだろうか。
学術会議の会員手当約4500万円 加藤官房長官が人件費示す
おそらく、多くの人は、一人当たり4500万円手当てがあると思うだろう。しかし、この4500万円、一人当たりではなく、総額である。しかも年間の。
金目当てで学術会議に入りたい学者など考え難い
学術会議の定員は210名。つまり、この手当て(給与)は一人当たり年間21万円程度、月額2万円にもならない。これでも多いという人がいるかもしれないが、少なくとも学術会議に推薦される学者にとって、これが大きな数字ではない。
前の記事などでも述べたように、金目当てで学術会議に入ろうなどという学者がいるわけがないのだ。
これも前にも述べているが、そもそも今回の任命拒否問題の本質は、違法性、違憲性にあり、予算云々の話は関係ないが、この予算規模からしても、ここでも改めて、お金の話をすることが無意味であることがわかる。
ミスリードによる学術会議の非正当性への影響
この記事は、4500万円という数字を前面に出し、それが異常で、大きい数字かのごとく見せている。では、なぜこのようなミスリードをするのか。
記事の主は、産経新聞だ。よく知られるように、産経新聞は保守派、自民政権に非常に近いメディアである。(前稿の平井文夫氏のフジテレビもフジサンケイグループで実質的に体質は変わらない。)政権を擁護するために、本来用いるべきでないものまでだして学術会議の非正当性を強めようとしたのではなかろうか。
この記事がそうであるように、SNSでは見出しとごく簡単な説明、リード文のみが掲載される。SNSに掲載された記事は、多くの人はリンクを開き、そして丁寧に最後まで見ることは少ない。そうした特徴を前提にしたSNSにおいて、このような記事・見出しを世にだすメディアに強い危機感をおぼえる。
メディアは第四の権力であり、監視機関
メディアは、司法立法行政という三権とならび、第四権力などと呼ばれることもある。その第四権力は、権力を監視し、国民に正しいことがらを伝えることにその役割がある。
それが逆に、政権を擁護するために、嘘ともいえる情報を発し、あるいは誤解を招こうとする。
右派とか保守とかではない。デマゴーグを平然といってのけるメディアを許してはならない。
追記~実際にYouTubeでデマが拡散される
ある意味狙い通りなのかもしれない。
YouTubeでは、1人当たり4500万の手当てで高すぎるといった動画が出回っている。そしてそこには、高すぎる、というコメントが連なる。
正しいことを伝えようとしないメディア。そして、記事の中身を見ることなく動画を出すYouTubeの発信者。情報を誰もが発信できるようになった以上、それを鵜呑みにする危険性がわかる。
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