長島昭久議員ツイートの問題~日本学術会議任命拒否から
日本学術会議の菅義偉総理大臣による推薦された学者の任命拒否。
言いたいことは山ほどあるが、長島昭久議員(自民)のツイートをみていく。まず、彼は本件問題について以下のようにツイートした(2020/10/03,10:00)。
日本学術会議問題は、政府から明快な説明責任が果たされるべきであることは勿論、首相直轄の内閣府組織として年間10億円の税金が投じられる日本学術会議の実態や、そのOBが所属する日本学士院へ年間6億円も支出されその2/3を財源に終身年金が給付されていること等も国民が知る良い機会にして貰いたい。
まず、結論からいうと、このツイートは論点ずらしと誤解を呼ぶ表現の塊であり、任命権限問題を矮小化している。
前例と異なる任命拒否に「説明責任が果たされるべき」とはしている。しかし、問題はそのあとだ。
1.日本学術会議の実態という論点ずらしとフェイク的表現
まず、年間10億円の税金が投じられる日本学術会議の実態を知る良い機会と書いているが、今回の任命権の話とは別次元の話である。
また、実態を明らかにする、とあるが、これでは日本学術会議が悪の組織であることを前提にしているとしか思えない。
これは本質から離れるが、200名以上の世に認められた学者で構成され、政府への提言を行っていることからしても10億円という額がそこまで大きいと言えようか。しかしながら額面の話は本質ではないので、ここまでにする。
2.日本学術会議=日本学士院というフェイク的表現
大きな問題は、「OBが所属する日本学士院へ年間6億円も支出されその2/3を財源に終身年金が給付されていること」をやたらと強調していることだ。
そもそも、日本学士院と日本学術会議は全くの別組織であり、学士院会員は日本学術会議のOBであるという要件はない。当然ながら、世に認められた優秀な学者というのは限られるわけであり、結果的に学士院会員が日本学術会議会員OBであることは何ら不思議ではない。
また、日本学術会議のOBの"殆どが"日本学士院会員にはなれないという事実もある。
これもまた本質から離れるが、日本学士院会員の年金はあくまで給与名目であり、かつての議員年金のようなものとは性質を異にする。(また、調べればわかるが、国や世界に貢献した優秀な学者に対する年金にしては額は少なすぎるくらいだ)。またお金の話になると、論点がずれるのでここまでにする。
とにかく、本件ツイートの問題点は、
①日本学術会議と日本学士院は別組織であるにもかかわらず、意図的に混同させたこと
②あたかも日本学術会議の会員となることで終身年金がもらえると誤解をまねきかねない表現したこと
③それを狙って日本学術会議会員になろうとしているといった憶測まで招いたこと
④そして、本来関係のない、しかしフェイクまがいであろうが人の関心を呼ぶものを書くことにより、任命権限の濫用という今回の問題の矮小化を図っていることだ。
3.最悪な、その後
さて、このツイートは当然に批判を呼ぶ。
しかし、彼は居直ったかのように
日本学術会議の主張は、「お上」に認められなければ「学問」でもなければ「自由」でもない、と泣き言を垂れているのに等しいと思います。
というツイートに
御意。お見事です!
とツイート。
つまるところ、憲法上保障される学問の自由の制約を懸念する学者らの声を、「泣き言を垂れている」と言ってのけたもとうぜんだ。
4.学問の自由は本当に侵されないのか
まず、実際に学問の自由は侵されず、菅首相の任命拒否を批判する学者らは「泣き言を垂れている」のだろうか。
憲法学や政治学を専門とする教授らは、学問の自由の侵害に繋がりかねない旨を述べている(「批判的な研究者を狙い撃ち」 任命除外、識者の見方は)。
何も難しく考えなくても、わかる。
というのも、日本の場合、研究費等の多くは国からの補助金などに頼らざるを得ない構造となる。お金がなければ当然に研究はできず、それこそ学問は死んだも同然である。
そして、今回、日本学術会議会員への任命を拒否したことは、国が特定の研究(者)に対し、"こうした研究をしてはいけない(こうした研究者はいけない)"という「逆のお墨付き」を与えたわけだ。
研究者たちは国に認めてもらおうなどという気はあまりないだろう。しかし、積極的に国が研究を否定することで、さまざまな不都合がうまれ、研究が実質的にできなくなることは想像に難くない。
仮に日本学術会議そのものに問題があるとしても、学問の自由の侵害(違憲可能性)の問題、法律違反問題である今回の任命拒否の問題とは、切り離して考えるべき話だ。
フェイクまがいのツイートをし、開き直った長島昭久議員には、まず自身で言ったのであるから菅首相に説明責任を追求するとともに、最低限、誤解を解くべく、訂正ツイートをすべきであろう。
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