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詩〈過去作〉青に飲まれて

高校時代の遺作vol.3

  

青に飲まれて


あれから何年経っただろうか
僕らは まだ
一度もあの街に戻れていない

あの街に置いてきてしまった
僕らのヒビ
果たしてあの欠片は
今も
僕らの帰りを待っているのだろうか

僕らが育ったあの街に
一目散に逃げ去ったあの街に
青い光が降ったあの街に
僕らは本当に戻りたいのだろうか

あれから何年経っただろうか
僕らは まだ
一度もあの食卓を囲めていない

あの街に置いてきてしまった
僕らの食卓
果たしてあの円卓は
今も
僕らの帰りを待っているのだろうか

僕らが暮らしていたあの日のように
一目散に逃げ去ったあの日のように
青い光が降ったあの日のように

僕らは 本当に
あの街の食卓を囲みたいのだろうか

僕らは 本当に
あの街に未練があるのだろうか

僕らは 本当に
あの街を愛していたのだろうか

僕は 知りたい

幸せだったはずのあの食卓は
青に飲み込まれ
目の前で崩れていく日常を
ただ
眺めることしかできなかった
僕らは
あの街みたいにすっからかんだ

今はもう思い出せない
ヒビの入ったあの街を
欠片を失くしたあの街を
頭の隅っこから引っ張り出し
浸ろうとするのは
時代の波に逆らうためか
自分の穴を埋めるためか
はたまた他の理由のためか
本当の 僕らは

僕らは
ただ
立ち尽くし
追い出され
逃げるしかなかった
非力な僕ら自身を
呪いたいだけ
なのかもしれない・・・

記憶がどんなに薄らいでも
青が消えることはなく
僕らの街を我が物顔で占拠し続ける
僕らは
  ただ
    それを見ている

そんな僕らが
あの街を懐かしんでいいのだろうか
あの街を救えなかった僕らが
戦う武器をも持たない僕らが
いまさら

       どうやって







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