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【創作小説】まわれ!今川やきくん!中国の巻(12)


「月餅たち! 一緒にここを出よう!」

「ここを出る?…ハハ…。そんなこと 考えたこともなかったな…」


「なら!今 考えて! ゴミとして捨てられる前に!オレは…オレは嫌なんだ!こんなに悲しくなる気持ちだけが 残ってしまうなんて!うわぁ〜〜ん!!」

「う…そうか…。ありがとうよ、太鼓…。だがな…」


「ヒックヒック…ん?…だ?…だが…?」

「オレたち月餅は…本当は 伝統あるお菓子なんだ。人間のステータスとして作られた…胸を張って喜ぶ高級な月餅…いいや…きっとそれは 違っていたんだ…」


「で!でも!でも!でも!!! 月餅たちは 何にも悪いことなんてしてないじゃないか!!!」

「ハハ…そうだな…。だから、月餅のオレたちは…今度 生まれ変わって作られる時が来たら、ステータスとしてではなく、伝統ある月餅として 胸を張って喜ぼうじゃないか!」


「ヤダヤダヤダーーーーーーッ!」

「ぺぺぺぺぺーーーーーーッ!」

「そして 『美味しい!』と言ってもらえたら こんなに嬉しいことはないだろう。お菓子は人間の笑顔のために あるんだよ。自分のための ずるい気持ちや 欲張りな気持ちのため ではないんだ」


「だ、だからって!…わわ〜〜ん!」

「誰かが…気づいた誰かが…止めねばならないのだよ…」


「ストップ! ザ!ステータス だぜーーーーーーっ!!ヒック‥」


今川ダンボ…おまいは…。


「太鼓。 一つお願いがある」

「お願い? ヒック」


「ああ。オレたちのような月餅も いるということを、未来ある人間の子供たちに 伝えてほしいのだ」

「人間の子供たちに…?」

「これからを 変えて行くのは 子供たちなんだ。そして 伝統を受け継いで行くのも、そう…子供たち。その未来を “心の希望 ”へと変えて行くのだ」

「心の希望…それは 目には見えないもの…ということか?」 


「そうだ。中国では パンダを見ることが “ 普通  ”と思い込んでいる子供たちのように…高級な月餅を贈ることが “ 普通 ” と ならないように…」

「ああ!その通りだぜーーーー!」

「ぺっぺーーーー!」

「よし!分かった!! 今川ダンボ!ガッテン承知の助でぃっ!!」


「太鼓…約束だ」

「約束……。ん!!はいなーーーーーーっ!!必ず伝えるぜーーーー!」

「ぺーーーーーーっちゃん!」



今川ダンボ…約束したのはいいんだが…どうやって?



続く

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