【創作小説】まわれ!今川やきくん!中国の巻⑼
「だが、しかし…」
「ん?しかし?」
「やがて、人間は 家族だけではなく、友人や知人へも 円満の願いを込め、月餅を贈りあうようになった」
「カーーーーーーッ! みんなが円満!なくてはならない月餅!素晴らしい!」
「ぺーーーーーーっ!ちゃん!」
「ん? んん? なのに…ちょっと待て。それなのに なぜ『しかし』なんだ? なぜ 月餅たちは悲しそうなんだ?」
「ぺぇ?」
「ああ…。初めは 良かった…。月餅を贈ることに、相手を思う “思いやり ” も入っていたからな。それが いつのまにか…」
「いつのまにか…?」
「人間は 自分の欲張りな気持ちまで 入れるようになってしまったんだ」
「欲張りな気持ち?」
「そうだ。月餅を贈る時には、もっと豪華な月餅を…もっと高級な月餅を…とな」
「あーあー!思いやりの気持ちが おっきくなっていったのか?」
「それならば 良いのかもしれないが…。思いやり よりも、人間たちは 自分を良く見せるための 気持ちの方が 大きくなってしまったようだ」
「そうなのか…。なんか思いやりが 違うな…」
「人間の欲張りな気持ちが どんどん 大きくなり、もっとたくさん…もっともっと豪華な月餅を贈ろう…となると…」
「ふ〜むふむ…」
「本当に 大切にしなければならない “思いやりの心 ” としての伝統 が 置き去りにされてしまう…」
「あぁ…だから 悲しんでいたのか…」
「それだけではない」
「まだ あんのか!」
「“月餅を贈る” ということ の為に、たくさん作られ、食べきれなかったり、元から 食べる気持ちがない人間もいるから、こうやって 捨てられたり、隠されたり…」
「そ、そんな!それは いかん!いかんよなーーーーっ!」
「ぺっぺーーーー!」
「オレたち月餅が 人間のステータスとして、高級な月餅で 作られてきたのは 胸を張って喜ばしいことと思うが…しかし行き着く先は… こうなるのさ」
「あああぁ…」
「ぺぺぺぇ…」
続く