我慢しないことができなくなりたい 〜S席のイライラおじさん〜

その日僕は、珍しくアイスホッケーの試合を観戦に来ていた。
知人に頂いたチケットはまさかのS席で、最前列の指定席に鎮座まします僕。しかも隣は通路。のびのびできるにも程があるぜ。

このS席に対して、僕の実力も地位も金銭も一切働いていないのに、なぜかドヤ顔になってしまう。

ふふん。控えよ下々の者よ。
我を誰と心得るか？
S席ランクの薫さんだぞ！
はっはっは。

…自分のシモジモ感が半端ないな笑

それにしても
アイスホッケーって、めちゃくちゃ格闘技だ。
選手同士の接触が激しい。
((((((((((っ>ωΣ[壁]ﾄﾞﾝｯ!
壁に衝突した選手に選手がぶつかったり。
なんだか乱闘になってみたり。
知らなかったのだけど、アイスホッケーって１分もしないうちに選手交代が繰り返される。肉体的にかなりハードなスポーツだったんだな。

僕の目の前、絶好のシュートチャンス…
…おい。
なんだ、見えないぞ？

のびのびスペースのハズの右側に、
視界を遮る小さな影。
どこからやって来たのか、
小学生の女の子がスマホ片手に騒いでいる。

見えない。
全然見えない。
だがしかし。
これ、注意するの勇気いるな…

僕はビビりだ。
注意して泣かれたらどうしよう。
他の人に大人げないと怒られたらどうしよう。
無視されたら悲しすぎないか？
だいたいさ、座ってない時点でダメだよね？
これは立見とは言わないんだよね？
お金払ってる人がいるのにズルいよね？
あ、でも僕お金払ってない。
そんな偉そうに言う権利ないかも？
ぶつぶつ。
ぶつぶつ。

…あ。シュート入ったんだ。
全然見てなかった。
イライラして楽しくないや。
マナーが悪いこどもへの怒りか
マナーを教えない大人への怒りか
なにも言えない自分への怒りか
ごちゃごちゃ嫌な渦が巻いてきた。

誰もいない広場

2ndピリオドはまだ終わっていないけど
僕は会場の外に出て来てしまった。

悪いのは誰なのか？

なんのことはない。
注意できない僕が悪いんだろうな。
苛立ちの伝え方が分からない。
怒ったらダメなんだろうな。
怒らないのも変なのかな。
分からないうちにパニックになって
いつもその場から逃げたくなるんだ。

キレて逃げる
って日本語として意味わからんけど
僕は、いつもそう。

プロのスポーツ選手すら乱闘するのに
僕はなぜ我慢してしまうのか。

（なんだかなー、、、）

さっき買った缶コーヒーを一気飲みする。
あちーよ。ふざけんなよ。

あーあ
我慢しないことが出来なくて辛いや。