ママのこと⑮入院しない選択

ママは寝ていることが多くなった。
もちろんソファーに座ったままだったけど。

そして突然立ち上がったり、歩きだしたりということもあった。支えていないと倒れるのでいつでも見ていなければいけなかった。

夜パパと2人だったとき、パパかうたた寝している間に立ち上がったらしく、転んで頭を打ってしまった。

それまでなんとかポカリなど飲めていたけれど、それも拒否するようになった。


訪問看護の人は早めに契約に来てくれて、様子も見てくれた。
ママに確認をとるけど、ママは
「よくわからないから、娘とお願いします」
と言って目を瞑っていた。

リビングにばあばの簡易ベッドを持ち込んで寝たり座ったりを繰り返してた。

夜中ばあばは大変そうだった。
なんせママが夜はよく動く。
後から聞いたらそれは身の置き場がないという症状だった。死が近くなると不安感からかそうなるらしい。

そして呼吸の止まっている時間が長くなった。
ばあばは「まだ大丈夫。ちゃんと息している。」と。

そんな状態だったけれど、起きたら眼鏡を探すし、娘が幼稚園に行くときは
「いってらっしゃーい」
と声をかけていた。

でもどう見ても状態が悪くなってきた。

ある朝どうしてもお腹が痛くなって、レスキューを飲んだけど、不安で病院へ行こうかという状態になった。
病院へ電話して聞くと、
「レスキューを飲んだならもう少し様子をみて」
と言われた。もうママは入院しようか。と荷物の準備をしていた。
しかししばらく経つとマシになったようだ。

ばあばに
「入院したらもう戻ってこれないよ。みんなといたいでしょう。」
と言われて、ママは家にとどまった。

その日の10時からの訪問看護で相談すると、また薬を増やして良いということになった。

ますます寝ている時間が多くなった。
会話をあまりできなくなった。

もうすぐ次の診察の日だ。
訪問看護はきてくれるけど、医師は家がエリア外なので来れないから、病院へ診察にいかなければならない。

正直無理だと思った。今のママが病院へ行くなんて…。

ばあばは「パパがおぶってでもいくしかないのでは」と言った。
それだってママには負担でしょう。

だからといって今から訪問してくれる医師を探すのも…。

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