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書庫冷凍【毎週ショートショートnote】

大学の司書課程修了生の同期会、「こんな図書館はいやだ」で盛り上がる。

朝から当日の新聞を独占して離さないご老人(もちろん指に唾をつけてページをめくる)。

相談カウンターでエロ小説を検索させるおっさん(もちろん女性が担当の時に来る)。

「あ、閉架書庫が冷凍室だったら?」綾瀬が言う。

書棚にあるのは蔵書の全てではない。
古い本や貴重な本などは閉架書庫に収められ、必要な時に取りに行くのだ。

「冷凍ならカビないかも」井上が真顔で言う。
「でも急に探せって言われて」宇野が眉をひそめる。
「見つからないと、どんどん寒くなる……」遠藤が顔を曇らせる。
「それはイヤだな」岡部が苦笑した。

加藤も薄笑いを顔に浮かべた。

マイナス25度の特別閉架書庫。
ベテラン主任から蔵書検索を命じられたが、探すことができず力尽きた司書や職員たちがあちこちで倒れている。

実はその蔵書は存在しない。反抗への報復だった。

加藤は心の中でつぶやく。

うちの図書館で、もうやってるから。

(412字)



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お題「書庫冷凍」

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【今日の写真】みんなのフォトギャラリーから。
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ウイーン国立図書館だそうです。

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