蕎麦でも気球は浮かんでる【毎週ショートショートnote】

この町の名物は気球だ。
五月に開催される気球フェスでは、大空に色とりどりの気球が浮かぶ。
乗ることもできて、子どもは大喜びだ。
有名ミュージシャンのライブがあり、グルメ屋台も並ぶ。
町の名前を出すと「あの気球の！」と言われるほどだ。

町の蕎麦生産組合の俺たちは、それがちょっと気に障る。
もともと町の名産品は蕎麦だ。
しかし、どうも存在が地味で、PR方法もいまひとつだった。
そのうちに、十年前に当時の町長が思いつきで始めた気球フェスが当たり、気球のほうが名物になってしまったのだ。

なんとか蕎麦も有名にしたい。
ある日、今年組合に入ったホクトが言った。
「新蕎麦の頃、秋に蕎麦フェスやりませんか？いろんなメニュー出して」
「いいね！」
「ついでに気球も飛ばしましょう。『蕎麦フェスでも気球は浮かんでる』
気球フェスのお客さんが流れてきますよ」

それは集客になる！

でも……気球頼みはなぁ……

でも……蕎麦を有名にしたい。

プライドは揺らぐ。
どうする、俺たち？


（412字）

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#毎週ショートショートnote に参加しました。
裏お題「蕎麦でも気球は浮かんでる」

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【今日の写真】みんなのフォトギャラリーから。
「気球」で検索。
佐賀バルーンフェスタの写真だそうです。

【2024年10月21日追記】少し書き直しました。