モンブラン失言【毎週ショートショートnote】
昼下がりのカフェ。
わたしの前でミーコは涙ぐんでいる。
「大丈夫なの?ずっと泣いてるじゃない」
「大丈夫。後で話すから」
「じゃ、ケーキセットのケーキ、何にする?」
ミーコは普段絶対注文しない高いケーキを選んだ。
「モンブラン」
「プラス三百円なのに?いいの?」
「いいの」ミーコは赤い眼で言った。
オーダーした後、わたしはミーコの顔をまっすぐ見た。
ミーコはわたしの視線をそらすように下を向く。
これは……
きっと彼氏、ヒロトと別れて、ショックを癒すための高級モンブランだ。
長いことつきあっていたからね。
ヒロトの端正な横顔を思い出していると、ケーキセットが運ばれてきた。
ミーコはモンブランを一口食べ、なんと笑顔を見せた。
「実はヒロトさんにプロポーズされて、嬉しくて涙が」
「ええっ?失恋じゃないの?」
「なんで失恋よ」ミーコは笑う。
「だっていつもケチなミーコがプラス三百円よ。てっきり失恋モンブランかと思って……」
あ、やばっ。口を押さえたが遅かった。
(412字)
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お題「モンブラン失言」
主人公は、ミーコの結婚式に招待されるでしょうか……(怖)
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栗好きなのでみんな美味しそう。