法医学 異常環境死
凍死(寒冷死)
寒冷により体温が低下、血管が収縮、循環不全などにより心不全に陥り死亡すること
低温障害
①凍瘡:しもやけのこと 0~10度程度
②凍傷:-5度から組織凍結しだす
Ⅰ度・・・紅斑性凍傷
Ⅱ度・・・水疱性凍傷
Ⅲ度・・・壊死性凍傷
発生要因
①気候、環境要因:低温環境、風が強い、雨天など
②身体要因:疲労、空腹、睡眠不足など
凍死過程
興奮期
熱産生=熱放散
血管収縮
体温をなんとか維持
虚脱期
熱放散が大幅に上回る
精神・運動能力低下
自律神経中枢麻痺
血圧低下、呼吸困難、不整脈→凍死
体温と症状
35度:倦怠感、思考力減退、行動不活発、筋硬直
33~34度:麻痺期 呼吸困難、幻覚、行動困難
31度:意識消失
29度:不整脈、生命危機
25度:硬直解け、凍死
凍死所見
①直腸温低下
25度以下が多い
②死斑の淡紅色調
死後も動脈血中に酸素ヘモグロビンが保存
死後に寒冷下に置かれた場合も同様
③左右心臓血の色調差
左は淡紅色 右は暗赤色
死亡直前まで冷たい空気を吸入していたことを示唆
④血液凝固能保持
剖検時に凝固しだすことがある
⑤その他
Wischnewski斑:胃の出血性びらん
肺虚脱
腸腰筋出血
心外膜下点状出血
熱射病・日射病
熱射病
通気性の悪い高温多湿環境下で脱水、熱産生増加状態でうつ熱状態となり、体温調節機能異常により高体温症に陥り組織障害となる
日射病
炎天下において長時間日光が頭部に直接あたり全身性皮膚血管拡張、筋血流増加が加わり相対的に循環血漿量低下する
病因学的に区別は難しい
熱射病・日射病所見
直腸温異常高値
脳浮腫
臓器うっ血
電解質バランス崩壊
ミオグロビン尿
尿細管ミオグロビン円柱
なおいずれも特異的所見ではない
感電死
電気の傷害による死亡
リスク因子
①電気側因子
交流のが危険
周波数50~60Hz
高電圧
高電流
長時間通電
②人体側因子
皮膚抵抗:角質層の厚さと湿潤程度に左右される
電流通過経路:重要臓器を経路すると危険
心疾患など
感電死体所見
①電流斑
②鉱性変化:電極端子、導体の金属が組織内に付着、沈着
③電流熱傷
④電紋:皮膚変化線状斑
⑤全身所見:筋断裂、骨折、脱臼など
落雷死
こちらは自然現象によるもの
数千万V、数万~数十万Aの電流が流れて電気的・機械的・熱エネルギーで死亡
落雷死死体所見
外表:電紋、熱傷、皮膚損傷、所持品損壊
内部:脳浮腫、縦隔内出血、骨折
減圧症
降圧環境から急激に大気圧に戻ることで血液や組織に溶存していた窒素が気泡となりガス塞栓を生じる
症状
Ⅰ型:皮膚掻痒感、四肢関節痛、丘疹
Ⅱ型:中枢神経及び呼吸・循環障害
死体所見
血管内気泡
皮下組織気腫
脊髄実質内の微小出血
潜水夫病
潜水服作業中に何らかの原因で潜水服の気圧が低下し、体幹部は水圧で圧迫、頭部は低圧によりうっ血状態となること
放射線障害
電離を起こす放射線の被曝により生じる障害
放射線の種類、被曝様式、被曝量などで変わる
飢餓死
生存に必要な栄養分の補給の欠乏・停止による死
保護責任者遺棄致死の可能性
所見
①高度るい痩、浮腫、皮膚弛緩・乾燥、高度貧血
②内部脂肪消失、臓器萎縮、筋委縮
③胃腸内からっぽ
④尿中アセトン、アセト酢酸
機序
①脱水
②グルコース枯渇→脂肪消費→ケトーシス→タンパク消費→分解産物による自家中毒
③栄養不良→抵抗力低下