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アフターコロナは、ソビエト崩壊後のロシアと似ているのでは・・・という話
コロナ騒動で、世界がざわざわしている。
人々の不安が、混乱が、空気を重くしている。
そんな今のような空気を、わたしはなんとなく1997年当時のロシアと重ね合わせている。
わたしがロシアで働き始めた年だ。
1997年のロシア。
1991年にソビエト連邦が崩壊し、まだまだ混乱の真っ最中だった。
理想をかかげ、民衆が革命を起こしてできた国、ソビエト連邦。
彼らが理想とした計画経済のその先には、明るい未来が待っているはずであった。
しかし、その壮大な実験国家はあっけなく崩壊した。
そして、約3億人の国民は、いきなり自分たちの国、世界が消えたのだ。
自分たちが信じていた、守ってくれていた国が、政治が、システムが消えたのだ。
まさに今、わたしたちがうっすらと感じている空気は、このステップに当てはまるのではないか。
自分たちが信じていた、守ってくれていた国が、政治が、資本主義のシステムが、消えるのではないか・・・
この先、日本は、世界はどうなってしまうのか。
金融崩壊で現金が紙くず?
物不足で行列?
治安悪化で暴力がはびこる?
貧富の格差がさらに広がる?
そのおびえる先の光景は、ソビエト崩壊当時と似ていないか・・・
ということで、気ままにつらつらと当時の大ヒット映画「Брат(ブラート)」を見ながら思い出して書いてみる。
1997年のロシアを、映画「Брат(ブラート)」で遡る
1997年のロシア。
わたしが働いていた場所は、首都モスクワ。
そこはまさにカオス(混乱)だった。
夢や希望がなく、ただ目の前の現実を受け入れて淡々と生きていく。
どんな未来が待っているのかもまったくわからない。
そして、1998年にはデフォルト(ロシア財政危機)。
混乱はさらに拍車がかかる。
こうやってテキストで書いてもいまいちイメージがわかないと思う。
その当時のロシアの映画が参考になる。
当時ロシアで大ヒットした映画「Брат(ブラート)」。
(日本公開タイトル「ロシアン・ブラザー」)
1分間の予告トレーラーがこちら。
https://youtu.be/Zq55yxODJiA
本編がこちら。
https://youtu.be/YewLBN43HqI
時間が許すのであれば、映画本編の以下のところをポイントでチェックしてみてほしい。
そのシーンから、当時のロシアの空気感が色濃く感じられるだろう。
(書いてある数字が、そのジーンが出てくる時間です)
■やる気のない店員(4:47)
当時のお店は、まだソビエト式の「カッサ」という購入システムが残っていた。
棚の商品を指さして番号を教えてもらう。
離れた場所のレジで番号を言ってお金を払う。
レシートをもらって棚の担当の店員のところへ行って、商品と交換。
とにかく面倒くさいシステム。
サービスが悪くても、笑顔で対応しなくても関係ない。
市場競争がなければこうなる。
■質素な食事(5:12)
食事は、スープとパンが基本。
それに、おかず、チーズ、サラミ等が少々
これがリアルロシア料理。
■警察&パスポートチェック(8:31)
警察官は、ちょくちょくパスポートチェックをしてくる。
そして、ナンクセつけて賄賂を要求する。
だから、警察を出来るかぎり避けて歩く。
■CD・DVDは海賊版(10:00)
当時売られていたCD・DVDのほとんどは海賊版だったような気がします。
パッケージの紙は、カラーコピー。
えらく安かったです。
■道ばたで何に使えるのかわからないものを売っている(11:15)
道端や、駅や地下道の出入り口付近では、まったく使える気配がないものを売っているひとたちがいた。
このシーンでは、電話のダイヤルのみたいなものが売られている。
ネコやイヌなどの動物も売っていた。
■ガラの悪い輩(13:50)
こういったガラの悪い輩がウロウロしていた。
たいてい酒臭い。
■時代の先端にいるつもりのパンクな若者(16:38)
パンクロック的なファッションに身を包み、貧富や態勢などに反抗するような姿勢を見せる若者たち。
■当時のステイタスシンボルは西側のウイスキー(17:43)
「シーバス・リーガル」「ジョニーウォーカー」といった西側のウィスキーを飲むことが、当時の高いステイタスシンボルだった。
「マールボロ」などのタバコなども同じく。
冷戦の反動が垣間見える。
ただ、これらの偽物も多かった。
■当時の最先端バッグはビニール袋(23:36)
当時は、色鮮やかな写真が転写されたビニールバッグが最先端。
市場とかで買い物しても、日本のように無料で袋をくれたりしない。
なので、こういったビニールバッグを購入し、何度も使う。
今でいうエコバッグ。
■ロシアと言えばウォッカでしょ(25:45)
ロシア=ウォッカ。
この映画でも、ダメ男の象徴的な小道具として登場。
当時のウォッカは偽物が多かった。
冷凍庫に入れたウォッカが凍っていたこともある(度数的に凍らない)。
スーパーで並んでいるボトルを見ると、液体の量が微妙に違っていたなんてことも。
■武器が蔓延していた(26:40)
1990年代後半は、チェチェン戦争が長引き、ロシアに暗い影を落としていた。
主人公も軍隊あがりで武器の使用になれていて、軍から横流しされた武器などもはびこっていた。
■市民の胃袋を満たす市場(28:32)
当時の市場は、マフィアが牛耳っていた。
この映画では、チェチェンマフィアが出てくる。
他にも中国系や朝鮮系など、いろいろな系統の市場があった。
こういった市場で買い物をするのが、当時の数少ない楽しみの1つだった。
■アルコールのつまみの定番は魚の干物(32:38)
当時のアルコールのつまみの定番は魚の干物(ボブラ)。
鯉のような川魚が定番で、臭いのきつい燻製ですね。
この臭いが、さらにアルコールのピッチを加速させる。
■食器が洗面器(42:07)
どかっと作った総菜は、ホーローの洗面器に入れて保存。
そのまま食卓へ。
■最先端の音楽はロック(45:24)
当時の若者のうっぷんを代弁するロックが人気。
この映画のシーンに出てくるのは「Наутилус(ナウチールス)」というグループ。
黒いTシャツが定番。
■マリファナで現実逃避(54:09)
ストレスがたまった若者が夜な夜な集まるナイトクラブ。
マリファナで現実逃避する。
■当時の最先端はマクドナルド(1:30:06)
当時マクドナルドは、モスクワに1~2軒だった。
西側の象徴的な存在だったマクドナルドで食べることは、彼らのあこがれだった。
ちなみに、ロシアのみのメニューもあります。
あの頃のロシアの仲間は、「上」でなく「前」を見ていた
どうでしたか?
1997年のロシア。
画面に広がるグレーの空、画面に漂う何とも言えない重苦しい空気・・・
当時わたしは、モスクワの小さなホテルで住み込みの仕事をしていた。
いっしょに働いていた仲間の多くは、中央アジアからきた朝鮮系の3世の人たちだった。
彼らは、ソビエト時代に北朝鮮から中央アジアへ移り住んだ移住者の子孫だ。
彼らと一緒に朝から晩までいっしょに仕事をした。
1枚のパンを分け合って食べた。
それぞれの誕生日にはウォッカを飲み、バタークリームたっぷりのケーキをぱくつき、ささやかな楽しい時間を過ごした。
熱が出たら、ウォッカをあおり、彼らが漬けたキムチを食べた。
彼らは、どんな未来を想像していたのだろうか。
自分たちが信じていた世界が崩壊し、仕事もお金もない。
マフィアがお金をせびりに来る。
子どもたちは、軍隊に徴兵され、チェチェン戦争へと送られる。
そんな現実のなかでも、彼らはたくましく生きていた。
腹がすわっていた。
「上」は見ていなくても、「前」は見ていた。
今思えば、彼らは本当に強かった。
今の時代、わたしたちには武器がある
アフターコロナの世界は、どんな世界が待っているのだろうか。
ソビエト崩壊後のような、絶望の空気が広がるカオスな世界が広がるのだろうか。
でも、わたしは決して悲観しているわけではない。
社会主義から資本主義というまったく違う世界を移動したロシア人たちは、今もしたたかにたくましく生きている。
わたしがいっしょに働いていた仲間も、今もしっかり元気に生きている。
笑顔も増えた。
そして、テクノロジーもあの頃とはまったく違う。
当時は、Windows95が出始めた時代。
日本とのやりとりも、ファックスが主流だった。
今は、インターネットもスマホもある。
検索エンジンもSNSもある。
これらは、今のわたしたちの大きな大きな武器だ。
ちょっとだけ混乱と痛みはあるかもしれない。
だが、それは新しい世界へ変化するためには必要なプロセスなのだろう。
なので、不安を恐れず、目の前を見て、笑顔のある生活を淡々と続けることが大事なのかなーなんて思っている。