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シャドーボクシング

プー!!プー!!
プー!!
プップー!!プー!!
プー!!プップー!!
プップップー!!

僕を先頭に5台ほど渋滞ができている。

仕方がないので車を降りて、そいつに話しかける。

「ちょっと、危ないですよ、なにやってるんですか」

返答がないので、車道でシャドー、あ、え、そういうこと?…いや、

「あの、なんでこんなところでシャドーボクシングしてるんですか?」

無視してシャドーボクシングを続ける上裸でゴムの紺の短パンの50くらいのおじさん。体はお世辞にも引きしまっていない。

「もしかして、車道だからですか?」

無視。

「車道でやってるから、車道ボクシングですか?」

「対戦者が見えますか?」

急に早口で何か言った。シャドーボクシングはやめずに。

「はい?」

「対戦者がいたら車道ボクシングですけど対戦者がいないんだから車道シャドーボクシングでしょ!」

ほほお、そう来たか。

負けるかボケ。

「対戦者がいないと言いますけど対戦者はいますよほら!この僕もそうですし見てくださいこの音きこえますかプップップップーってこれらがあなたにとっての対戦者いや!対向車じゃないですか?え?そういう意味ではあなたの理論から言うとこれは車道でやっているシャドーボクシングではなく車道でやっているボクシングすなわち!車道ボクシングです!」

「違う!」

「なにが違うんですか?」

「車は対戦者じゃない人じゃないから!」

「僕は人ですよ?」

「あっ」

「僕は車ですか?違いますよね?もっと言えばプップ鳴らしてるのも人人人人人人人人人ですよ!あなたの対戦者はあなたがここを退かない限りどんどんどんどんどんどん今も増えていってますようるさいでしょうこの音?え?大人しく車道ボクシングだと認めましょうよ」

「ボクシングをしていない!」

「はい?」

「君たちはボクシングをしていない!オレはボクシングをしている!だから対戦者ではない!」

「…ハハ、ハハハハハ」

「なにがおかしい!?」

「いま、あなたなんとおっしゃいました?」

「だ、だからぁ!君たちはボクシングをしていない!オレはボクシングをしている!だから

「ボクシングをしている、そうおっしゃいましたね?」

「あっ」

「シャドーボクシングではなくボクシングをしているんですよねいまあなたがおっしゃいましたよねということはつまりあなたがいまやっているその行為は車道シャドーボクシングではなく車道ボクシングだといま認められましたね?」

「…くそっ!」

自分の外腿をグーで叩いて、シャドーボクシングをやめた。

「さ、では歩道ボクシングへ」

「歩道シャドーボクシングだ!」

「まぁそれはそうですね失礼いたしました」

「オレの勝ちだ!」

「いい歳してオレはやめましょう」

「いいだろ別に!」

「いいですけどね別に」

歩道にそのおじさんをエスコートして、車に戻ろうとすると怒りの矛先は僕に向いていた。

プップー!!
プップップー!!
プーーーーーー!!
プップー!!プップーー!!
プップッップー!!プー!!
プップー!!
プップップー!!
プーーーー!!プップー!!

早く車を出せと。

プー!!

はいはいすぐに出しますよ。

プップップップップー!!

お礼の一つもないのか。

プーーーーーーーーー!!

クッセェ。

プップー!!

おしりにタイヤが4つ付いた車がすごく流行っているのなんなんだ。

プー!!

はしり。

プップープップーー!!

はしりっていう車名もなんなんだ。

プーーーーーーーーーーー!!

ふざけている。

プッ!!

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完熟トマト新聞
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