残置物
「あーけっこう広いですね」
「そうですねぇ、図面で見るよりだいぶ広く感じますね」
「これ電気って残ってるんですか?」
「あーいま電気が通ってないんでわからないんですけど、照明関係は全て残置物ですので、使えたらそのまま使っていただいてもって感じです」
「ざんちぶつ?ってなんですか?」
「あ、前の居住者さんが置いていったものですね、残して置いてある物で残置物ですね」
「残置物、なるほど」
「分譲なんで、備え付けがないんですよね基本」
「なるほど、こっちがトイレで、はい、お風呂、なるほど、あ、こっちがリビングですかね」
「そうですね」
「あっ!エアコンあるじゃないですか!」
「あっ、ほんとだ、こちらも残置物だと思いますので、使えたら使っていただいて問題ないと思いますが、念のため管理会社にも確認しておきます」
「あ、でもリビングだけ残してるって感じなんですね」
「そうですね」
「壊れてる可能性もあるってことですよね」
「そうなんですよ、壊れてるからわざと残置物にされた可能性もあるんですよね、こればっかりは電気通ってからじゃないとわからないですね」
「あ、このモヒカンのプロレスラーみたいなのは」
「ザンギエフですね」
「ザンギエフなんですね」
「ザンギエフですね」
「あ、和室こっちか、あっ、実家にこんなんありました」
「あー懐かしいですね、紐で引っ張るタイプの吊り照明」
「んーけどリモコン操作できないですよね」
「さすがにそうですね、残置物なんでご希望によっては入居前に処分もできますので」
「この必殺技を出そうとしたらその場でジャンプしちゃうのは」
「ザンギエフですね」
「ザンギエフですよね」
「ザンギエフですね」
「あ、物干し竿は」
「残置物ですね」
「この干してる赤いパンツは」
「ザンギエフですね」
「ザンギエフですよね」
「ザンギエフですね」
「前の人ってペットとかって飼ってました?」
「えーっとまぁペット可ではあるんでその可能性はありますが」
「なんかここすごい茶色い毛が落ちて」
「ザンギエフですね」
「ザンギエフか」
「ザンギエフの胸毛ですね」
「ここ壁のとこグーで殴ったみたいな穴」
「ザンギエフ」
「ザンギエフだ」
「ザンギエフ」
「てかめちゃめちゃ天井も床も凹んでま」
「ザンギエフザンギエフ」
「ザンギエフね」
「高く飛び上がってドーン」
「高く飛び上がってドーンか」
「管理会社に言っておきますね」
「なんかちょっと頭重くなってき」
「低気圧ですね」
「低気圧ですか」
「低気圧ですね」
「なんか目も回ってきました」
「ザンギエフですね」
「ザンギエフですよね」
「ザンギエフの両手いっぱいに広げてぐるぐる回転するやつですね」
「その症状がなんで僕に出てるんですか」
「憑依エフですね」
「憑依エフか」
「憑依エフですね」
「ザンギエフがここで死んだってことですか?」
「ザンギエフがここで死んだってことですね」
「家賃安すぎるから怪しいと思ったんですよ」
「すみません」
「先に言ってもらえますかそういうの無理なんで」
「懺悔エフですね」
「いまトイレって使えますか」
「はい水は通ってるんで大丈夫ですよ」
「ウンチ出すですね」
「ウンチ出すですか」