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おいしくリニューアルしました
いつも買っている棒状のチョコチップパンが短くなってる気がする。
パッケージには「おいしくリニューアルしました!」とポジティブに書いてあるが、実際は3センチくらい短くしただけではないか?
あんたを見ない日はない僕の目はごまかせない。
「短くした分うまみを凝縮しました!」って正直に嘘を織り交ぜて書いてくれればまだ可愛げがあるのだが、あ、デジャブ?いや、そうか、あの渡り廊下で「正直に言ったら帰してやる」と言われたパン側の体験がフラッシュバックした。
小学5年生のとき、僕は登り棒を短くした。
実家が鉄工所なので、物心ついた頃から鉄を切る術も道具も手順も全て揃っていた。
鉄を切って遊戯王カードを買ったりしていたのである。
動機はとくにない。
何かへの腹いせでもイタズラってわけでもなく、ただ、やってみた、という今で言うYouTuberの走りだったのかもしれない。
深夜3時に家をこっそり抜け出して作業場から道具を調達してプールの柵から校庭に忍び込んで登り棒のてっぺん付近までよじ登る。
すぐには切らない。
輪っかの刃が高速回転して切るので音がすごいのである。
こんな静寂の中では危険すぎる。
コケコッコーーーーーーーーー!!
キュイイイイイイイイイイイイイ!!
オッケー。
今日はここまで。
明日も明後日も明明後日もこれを続けるのである。
飼育小屋のニワトリが鳴くのは3:30、あとは誤差。
ちょうど1週間かけて、切断に成功したのである。
あの1週間は学校のある日は眠かった。
帰宅して3時間後には何事もなかったかのように起床。
ほんの少しスリルでドキドキワクワクしていたので実際に寝付ける日はまれだった。
土日は昼過ぎまで寝れて最高だった。
スマップのシェイクの「明日は休みだ仕事もない」のとこの歌詞にひどく感銘を受けてたまに家族や友達とカラオケに行ったときに歌うことでちょっとしたヒントを出しているつもりだった。(わかるわけないがwって感じで楽しかった)
切断完遂からさらに1週間後、他クラスの担任の冨田先生に呼ばれた。
「実家、鉄工所やんな?」
という喋り出しから、冨田先生は全てお見通しだった。
あくまで全て推理といった感じで、目撃したっぽくもない様子だった。
「正直に言ったら帰したる」
「いや、でも、証拠が」
「ほんまにやってない奴はな、証拠とか言わんねん、え?なんの話ですか?そんなことやってないですよ、って言い続けるねん、ひと通り黙〜って下向いて聞いてて第一声が証拠がって言う奴は犯人や」
グウの音も出なくて、涙が出てきた。
「たのしくリニューアルしました」
先生はブハッと乾いた笑いをして、
「ええように言うな」
と肩を小突いた。
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