ペット不可ゲーム

そういえば貫崎（かんざき）がいない。夏休み中に親の都合で九州に引っ越したらしい。貫崎との思い出は一つだけある。貫崎は誰かと喋っているところを見たことがないが、去年の11月、高1のとき、自転車で下校中に同じ制服の男が自販機の前でしゃがみ込んでいて、なんとなく誰か気になってブレーキをしたら首だけこっちを向いてあー貫崎だってなってどうしたか聞いたら、ペットボトルのコーラと麦茶を買ったら2本とも引っ掛かって取れなくなったとのこと。でも言ったすぐにあ取れたと言って取れていた。どっちかいるか聞かれていや自分が飲むんやろって言ったら飲まないって意味がわからんことを言っていた。僕が遠慮して麦茶を選んだらいややっぱ麦茶が飲みたいわって言ってコーラを渡してきた。2人で飲みながら自転車を押しながらなんかちょっと初めて話しながら帰っていたら、貫崎がなんか賃貸募集の張り紙を見て「ペット可」と言った。

「ペット可？」
　「ペット可」
「ペット可？」
　「ペットき」
「ペットき？」
　「ペットき」
「あー、じゃあ、ペットく」
　「ペットけ」
「ペットこ」
　「ペットさ」
「ペットし」
　「ペットす」
「ペットせ」
　「ペットそ」
「ペットた」
　「ペットち」
「ペットつ」
　「ペットて」
「ペットと」
　「ペットな」
「ペットに」
　「ペットぬ」
「ペットね」
　「ペットの」
「ペット、、は！」
　「ペットひ」
「ペットふ」
　「ペットへ」
「ペットほ」
　「、、、ペットま」
「ペットみ」
　「ペットむ」
「ペットめ」
　「ペットも」
「ペットや」
　「ペットゆ」
「ペットよ」
　「ペットわ」
「ペットら　やで」
　「あペットら」
「間違えてもえんこれ？」
　「まぁじゃあ、そっちの勝ちで」
「勝ちってなんなん（笑）」
　「ペット不可」
「えー、ペット不き」
　「いや、ペットへき」
「、、おーそっちも？えー」
　「ペット不可」
「えー、ペットへき」
　「ペットふく」
「ペットへけ」
　「ペッ」
「あれちょっと待って！ペットへけはおかしいな」
　「え、ペット不可、ペットへき、ペットほく、か」
「なんか戻ってるな、へけは、え行、え段が揃ってるの変やもん」
　「どっちが間違えたん？」
「もう、わからん」
　「ペット不可！」
「えーーーーペットへけ！」
　「ペットほこ！」
「ペットぉーーーーーーーあかさたなはまーペットまき！ちゃう！ペットまさ！」
　「ペット、み、し」
「ペットむーーす」
　「ペットめせ」
「えーちょっと待って？またえ段が一緒なってる」
　「もーわからん（笑）」
「むずすぎるこれ（笑）」
　「でもこれ流行るんちゃん？」
「どこで流行んねんこんなん」
　「脳にはなんか良さそうじゃない？あれあのーボケ防止？みたいな」
「ペット不可ゲーム？」
　「そうそうそう（笑）」
「ペット不可避！」
　「ハッハッハ（笑）むっずっ！」
「ペット不可避！」
　「ペットーーえーーーはひふへーで、かき、へき、不可避のひ、ふ、で？なに？ペットえーーー、ふ、へ、き、ふ、ペットへきふ！」
「ペットほくへ！」
　「はやっ（笑笑笑）」
「ペットほくへ！」
　「ほくへっ（笑笑笑）」
「ペットまけほ！ペットみこま！ペットむさみ！」
　「ちょ（笑笑笑笑）、なんで（笑笑）、なんで急に得意（笑笑笑笑）」
「ペットむさみ」
　「むさみ（笑笑笑）、、、誰ぇ（笑笑笑笑）」

貫崎は笑いすぎて自転車をこかして道に仰向けに転がってしまい、後ろから車が来たので引っ張り上げた。僕も笑いながら。