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吾輩は猫である

吾輩は猫である。

「いってきまーす」

主人が今日もご機嫌に怪物に飲み込まれていく。

怪物の口の中は高確率で明るくて、3ヵ月ごと(この概念はカレンダーで知ってます)に暖かい吐息、蒸すような吐息、カラッとした涼しい吐息、冷蔵庫のような冷たい吐息に押し返されるのである。

吾輩は主人が飲み込まれるとすぐに出窓に直行し、怪物の食道をすんすん進む主人に手を振られるのである。

8時間(この概念も時計で知ってます)くらい経つと決まって主人は何かしらを入れたビニール袋を手に怪物の口から吐き出される。

「ただいまー」

また何がそんなにってくらい機嫌が良さそうに。

しかし10度に1度の胃液でびしょびしょで吐き出されるときは流石につらそうな表情で、飲み込まれてから吐き出されるまでの間は胃液がやむことを窓越しに願うばかりなのである。6月は異常だ。

主人は決まって吐き出されてすぐに水を浴びる。そりゃそうだ。吾輩は飲み込まれたことがないので水を浴びたことがない。そりゃそうだ。

怪物の休肝日?なのか知らないが、それはカレンダーの青と赤の日だという法則に気付いたのはすぐだった。吾輩は頭が良いのである。

あ、でも飲み込まれたことがないというは嘘だったかも。全く覚えていないが、怪物の腹の中で胃液まみれで震えていた吾輩を命をかけて救ってくれたのは主人だそうだ。耳の長いアイツが言ってた。

アイツは玉みたいな糞をするから気味が悪い。気味が悪いのは主人も同意見で、吾輩とは違ってちゃんと閉じ込められている。

今朝、赤い日なのに、アイツと主人が一緒に飲み込まれた。2時間もすると主人が吐き出された。主人の顔は胃液でぐしゃぐしゃで、吾輩に胃液をこすり付けてきた。

次の日も、また次の日も、アイツは吐き出されない。

アイツの話が本当なら、主人がまた救ってくれるだろう。

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完熟トマト新聞
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