鈑金塗装費用をコストダウンするための3原則
鈑金塗装って、正直少なくても万単位、十万単位でお金が必要です。
それはどうしようもない事実なのですが、その中でも費用を抑えるポイントを3つ説明していきます。
それはつまるところ
落とす・減らす・省く
の3つになります。
全部実行すれば当然安くなりますが、最も大事なのは修理されるご本人が修理に対してどういう考えなのか?を具体的にしておくことです。
完璧に近い修理を求めながら強くコストダウンしたいというのは無理があります。新品に拘るのに修理代は安くしろ。というようなものです。
かといって適当修理で良いから最安で。というのもみすぼらしいものになってしまいます。
せっかく修理するんだから見栄えもよくそれでいてコストを抑える。というところを自分なりにかみ砕いて伝えるというのが良いと思います。
つまり修理のどこを譲れてどこを譲れないのか。費用をかけれる個所かけれない箇所をある程度はっきりさせておきましょう。
中古部品を使いつつ自然に仕上げてもらう。とか、ラヂエーターは社外品で十分です。とかね。
妥協と言えば妥協なんだけど、落とす・減らす・省くの3要素を上手く取り込みながら見た目からはそれを感じさせないような仕上げを目指す。そういう事が上手く伝えれるお客さんが結果いい修理になる事が多い。と修理する側の自分は実感しています。
さてさて始めましょう。
先ずは落とすから。
落とすとはグレードを落とすという事です。
高額な部品や修理方法を安いものに落とす事で金額を抑えるという方法です。
代表的なのは中古部品です。
中古部品は言ってしまえば運なのですがその辺は業者さんとの日ごろの付き合いでいい品を優先的に紹介してもらう事が出来ます。
中古部品でも場合によっては新品より高いというものもありますが、だいたいは新品の半額から70%程度で入手できます。
キレイなヘッドライトや同色の程度のいい部品であればポン付けと言って部品代と交換工賃だけで済む場合もあります。
お客さん自身に知識があるのであれば自ら部品を持ち込みというのもアリだと思います。
ですが持ち込みは部品代は最安で済む一方、その際は鈑金塗装店と事前に話し合ってどちらがどこまで責任を負うのかをハッキリさせておかないと後々のトラブルになりかねませんからから要注意です。持ち込み部品の品質が悪いのに取付納車後にすぐ作動しなくなるなどよくある話です。
同じような具体例に部品を取り換える際、純正品から社外品に変える。というものがあります。
中古と似ていますがこちらは新品です。しかし自動車純正部品メーカー以外のメーカーが作っている互換品です。
代表的な物はラヂエーター・コンデンサ、バンパーやフェンダーなど。フロントガラスにパワーウインドウのマスタースイッチやリアゲートのガスダンパーなんかもあり多岐にわたっています。
外装品は全ての車種のすべてのパーツに社外品がある訳ではありませんが、特にアクアやプリウス、エブリイなど定番で売れ筋と言われる車種には豊富にあります。
外装部品に隠れる部品でいえばラヂエーター・コンデンサなどは同じものを数車種で採用しているのでかなりの確率で社外品があります。
気になる金額ですが例えば30プリウスの純正フロントバンパーは色付きで65,000円ほどしますが、社外品であれば色付きで4~5万円程度で手に入ります。これだけで30%程度部品代を抑える事が可能です。
もちろん各鈑金塗装店の考え方で社外品は取り扱わない。などありますから要確認です。
また、社外品は純正品に比べて昔よりだいぶマシになったとはいえ加工精度は劣ります。この辺を後々の事を考えて職人さんが嫌うから取り扱わないというのもよくある話です。
形成した際のキワのバリの処理が甘かったり、形成そのものが不十分で歪んでいたりします。そういうのも踏まえてですが、純製品にこだわらない細かい所は気にならない、とにかく費用を抑える事が優先という人にはおすすめです。
その他塗装では使用する塗料のグレードを落とすというのもあります。
例えばクリアーなんかはその代表です。クリアーは各塗料メーカーから数種類ラインナップされている事がほとんどです。
自社で扱っているアクサルタなんかは10種類ぐらいあります。
当然クリアーにも安い物から高い物までグレードがありますからその辺を聞いてみるのもいいかと思います。
ただ、塗料はある程度の面積を塗った時じゃないと価格に大きな差が出ないというのも事実です。
また各鈑金塗装店がそのメーカーのクリアー全てをラインナップしているわけではありません。
松竹梅のようにペインターの好みや扱いやすさ、価格と品質のバランスなどを考えて数種類を使用するに至っている訳ですから、安いからという理由だけで無理に指定するのはやめましょう。
次の減らすはグレードは変えずに数量を減らすという事です。
再利用もこれに当たります。
例を挙げるとショートパーツの再利用などがあります。
ショートパーツが再利用できれば結果新品を使う量が減ります。
ショートパーツというのは、バンパーなどの外装パーツを固定するためのパーツの総称です。
一つ100円程度のクリップ類やリテーナーなどが代表格です。
通常見積りにはショートパーツ類は脱着の際に壊れるという前提であらかじめまとめて3000円とか計上されることがほとんどです。
まあ実際壊れる事も多い部品なので消耗品的位置づけにあるのも否めませんが、外した時に壊れなければ再利用できるものもあります。クリップ類は期待薄ですがバンパーリテーナーなんかは外しても壊れない物もあるので再利用して欲しいとお願いしておくのもアリだと思います。
たかがバンパーリテーナーと言えど数千円する物もザラです。
ドアの部品でいえばウエザーモールなんかも再利用できます。これは外して再利用派とそもそも交換派に分かれますが基本再利用で外してダメなら交換というスタンスで良いと思います。
この部品もクラウンなどの車格になると一本6000円ぐらいしますから再利用するだけでそれなりのコストダウンになります。
修理方法では塗装する範囲を減らす。というものがあります。
分部塗装とか言ったりもします。
通常修理する対象はバンパーなら1本丸々塗装だし、ドアなら一枚塗るという前提で見積もられるのが普通です。
損傷状態や傷の場所、塗色、技術者の見立てなど複数要因が絡むのですが、例えばバンパーで擦りがちな左の角だけの傷を修理するのであればバンパーを縦に3等分した左側部分だけ1/3部分塗装で済む場合があります。
バンパーを一本塗装すれば国産車で6万程度だとすれば1/3塗装であれば半額程度で済むこともあります。
どうして費用が1/3にならないのか?と言えば調色やマスキングなどの塗装準備にかかる手間は全部塗装する場合とさほど変わらないからという点と、後で触れる調色の量が挙げられます。
ドアなどのパネルであれば形状や傷の場所にもよりますが、塗装をプレスラインで区切ったりすることで、ドアミラーやアウターハンドル、ウエザーモールの脱着の費用を抑える事が出来る場合があります。それだけで5千円~程度は安く済みます。
ドアを一枚塗装に対してドアの区切った塗装も、バンパーの1/3塗装も1本塗装と比べて塗装範囲が少ないことから塗装している時間が少なくて済むという事がコストダウンにつながる要因です。
ここで疑問出ますよね?
塗料代も少なくて済むんじゃないの?と思いますが、塗料代に関しては少なすぎる塗装の面積は割高になります。
ある程度の精度で対象の車に合った色を調合するにはそれなりの量を調色しないと再現できないという理由があります。
塗装は範囲に応じて使う材料の総量が変わりますが少ない範囲(例えばバンパー1/3だけ)とかになるとかえって割高になります。
必要な塗料が10㏄だとしても同じ色に調合して整える調色で作る量は最低100㏄ぐらい必要です(自社メーカーの場合250㏄から推奨)もちろんペインターのセンスとかもあるけど。
それはカレーを一口分だけ作るのは難しいのと同じ理由です。
例え必要なのは一口であっても味を再現するためには最低2人前~作る必要があります。
車の色を再現するのも同じ理屈です。
なので塗装で塗料代を削減というのはある程度の塗装範囲がある場合に限ります。
最後の省くは何かをやめるという事です。
修理に来て省かれると聞くとなんかこいつ手抜きしてんじゃないの?と疑われますが、違います。
今すぐに直す必要があるのかないのか判断してお客さんに助言するという事です。
そもそも論です。
車を誤ってぶつけたという人の中には単なる不安なだけという人が自分の統計上日本国内だけで1億人います。
つまりこの不安な気持ちを専門家に聞きたい話したい。答えとなる何かを欲しているだけ。という人です。
例えば樹脂のバンパーをほんのちょっとぶつけて「錆びてきたら困る」と来店する方もいます。
この人は修理するかしないか?のボーダーラインを錆びるかどうか?という所に置いています。
なので「ここはプラスチックだから錆びませんよ、直せば少なくても数万は必要になるし、バンパーはむしろ当てるところだから。どうしても気になるなら直しますよ。」という感じで帰して上げます。
するとなんという事でしょう。
そのお客さんはまるで天使のような凄い穏やかな表情になるとともに速やかにお帰りになられます。
お客さんが何に不安を感じているのかよく話を聞けばおのずとわかってきます。
それを怠ったまま「ハイ修理~~!あざーす!!」
なんて強引にやるからトラブルになるんですよね。
自動車の修理はせず不安だけを取り除く。これが究極の省きです。
受けるだけが仕事じゃないんですね。
他には予算の関係で一番目立つ損傷だけ修理して他の箇所は今はやらない。というのもいい省き提案になります。
傷とかは気にしだすと無限に出てきます。
全部直せば高額な修理代も、修理箇所を絞ればお手頃価格で満足度も高くなると思います。
後で予算が出来たらその時追加で修理するというのも立派な選択肢です。
ほんとにデキる職人さんは客さんに合った優先順位を助言してくれます。また、無理な物は無理とちゃんと説明してくれます。
それを加味した中で全体的にいい仕上がりになるように考えてくれるはずです。
どうでしたか?
鈑金塗装のコストダウン3原則をよく把握して有意義な修理に役立ててみたください。