早期リタイヤ。『お金』と『時間』。仕事と人生のやりがい。
過去の私は、誰もが疑う余地のないほどに『仕事人間』であった。
美容師として、本当にひっきり無しにいろんな所を飛び回った。
そんな私の『働き蜂』の様な活動ぶりは、美容師さんであればご存知の方も多いだろう。
大阪で1週間仕事をしたら、翌日には東京へ飛び、そこで1週間仕事をする。
そして、最後のお客様が終わり次第、羽田空港からシンガポールへフライト。
シンガポールで1週間の仕事が終われば、同じくそのまま香港で3日間の仕事。
さらにそこから台北で3日間の仕事。
それからやっと大阪に戻り、洗濯物と荷物を伊丹空港で妻にパスして、新たな荷物を受け取り、そこからロンドンへ1週間のフライト。
といった感じで、1年間でものすごい数の離着陸を繰り返しながら『仕事人生』を送っていた。
もちろん、ANAマイレージは100万マイルを裕に超え、年間のフライトポイントも常に20万ポイントを超えて『ANAダイヤモンドメンバー』としてANAの上顧客にもなった。
『お正月休み』が1週間あっても、その中3日間で上海に行って仕事をする。ということもあったりした。
国際線の移動を仕事時間に含めると、年間の休日数は30日あるかないか?というぐらいだった。
と、まぁ、忙しさアピールはこれぐらいにして、、、。
妻と子供にはほとんど会えず、かなり寂しい思いをさせていただろうと、今になって思う。
そんな疾風怒濤の様な生活が、新型コロナのお陰で強制的にストップして、働く環境は意にそぐわず激変させられた。
その時、初めて立ち止まり、周りの景色をゆっくりと眺めることができたのだ。
そして、改めて、自分にとっての幸せとは何か?を考え始めた。
『仕事こそが人生を豊かにするものだ!』と教えられてきたし、自分自身も何も疑わずにそう信じてやっていた。
時間をお金に変えてきた人生。
何も疑いは無かった。
しかし、『セミリタイヤ』をリアルに考える様になってから、自分の中の価値観が方が少しずつ変わっていった。
私が『リタイヤする!』と宣言すると、大きく分けて二つの意見が周りの人達から返ってきた。
一つは、「良いですね!私もそんな生活をしたいです。」という肯定的な意見。
そしてもう一つは「仕事やめてどうすんの?そんなに早くやめちゃダメだよ。」という否定的な意見だ。
まぁ、肯定的な意見は置いておいて、今回は否定的な意見に対して自分なりに受け入れながら、噛み砕いてみようと思う。
『早期リタイヤ』について否定的な意見を持つ多くの方に、嫌味や悪気は全くない。
純粋に、本当に心から『仕事こそが人生のやりがいだ!』と思っている人たちの言葉だ。
まぁ、いわゆる、昔の私と同類の人たちだ。
しかし私は、その様な人たち(昔の自分)に対して以下のような問いを持っている。
・定年退職して仕事がなくなった場合、人生の『生き甲斐い』は本当に無くなるのか?
・仕事をしていない専業主婦のような女性(男性)には、『人生のやり甲斐』がないのか?
実はこの2つの問いに関しては、『仕事こそが人生のやりがいだ!』と信じていた過去の私に、いつも付き纏っていた疑問でもあった。
これから私が展開していく内容は、私がセミリタイヤする事に対して受ける、ある種の『批判』に対して、自分の正当性(防衛)を主張するために強引に生み出した答えなのかもしれないが、それでも、今は心から純粋な私なりの答えとして展開させてもらおうと思う。
上記の2つの問いに対しての私のシンプルな回答は、「そんなことは無いな。」である。
定年した人でも、主婦の方でも、仕事をしていない人でも、『生き甲斐』や『やり甲斐』は十分に持ち合わせることができる。
そうでなければ、そんな人たちの『生きる尊厳』を根っこから否定してしまう事になるからだ。
私はこれまで、上記で説明したように圧倒的な『時間』を仕事で消費した。
そして、その対価として、十分な『お金』を手に入れた。
もちろん、そんなに沢山の時間を消費しなくても、お金を稼ぐ方法は、世の中には他にあるのだろうけれども、私には『美容師』としての技術と能力しかなく、そのノウハウで稼ぐためには、『圧倒的な時間の消費』は避けては通れなかった。
自分の自由な時間というものは、周りの人たちと相対的に比べれば殆ど無かったし、家族との時間も、ほとんど犠牲にした。
子供の成長や行事ごとには参加できなかったし、結婚記念日や誕生日でさえも、一緒に過ごすことはできなかった。
それでも勿論、仕事は嫌いでは無く楽しかったし、やり甲斐もあった。
これまで、約28年間働いた結果的、子供たちの大学卒業までを見越した学費、教育費を含め、夫婦2人が老後(死ぬ)までには、十分だと思える金額が貯まった時に、仕事に時間を費やして対価のお金を手に入れることを止めるという決断をしたのだ。
これからも働き続ければ、もっと、もっと、お金を稼ぐこともできたが、その為にはやはり、時間を消費する必要があった。
お金か?時間か?を比べたときに、時間を手に入れることを選択したのだ。
それからというもの、今の私の『生き甲斐や』『やり甲斐』は、妻と2人でゆっくり贅沢に時間を過ごすことに変わった。
すでに失ってしまった(過ぎ去った)時間は取り返す事はできないが、その分、まるで失われた時間を取り戻すかのように、この時間を夫婦2人でゆっくりと過ごしている。
そして、美容師という仕事は趣味へと変換され、3ヶ月に1週間だけ、東京と大阪で、今も変わらず通ってくれるお客様を担当させていただいている。
今思うに、人生の中に仕事があり、人生を楽しむ為の道具として『仕事』はあるのだと思う。
『仕事』そのものが楽しくて、『生き甲斐』や『やり甲斐』になっている人は、もちろん、そのままでも何の問題ない。
ただ、『生きるために働いてる。』という若い世代の人には一言、アドバイスをしておきたい。
「仕事に人生を捧げてはいけない。仕事を苦行にしてはいけない。人生を楽しむための仕事にしろ。時間を大切に。」
過去の私のように、脇目も振らずに真面目に頑張ってる仲間たちもいっぱいいるけど、仕事を辞めて人生を楽しめる様なライフスタイルもあるんだよ。とお勧めしたい。
そのため(早期リタイヤのため)にどうすれば良いのか?は、又、いつかの時に書こうと思う。