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11年間トマト農場を経営をしてバイアウトしたので、一次生産者のことは理屈抜きでリスペクトしてる

3年くらい前まで自分は「トマトの人」だった。2008年に農場をいちき串木野市に作って、最終的には8000m2まで拡大。2019年にNECグループのNECAPさんに売却した。

当時としてはIT導入も早かったし、資材を自社でオランダから輸入したり、IPMを導入したりといろんなことをして割と注目も浴び、試行錯誤と投資を繰り返して最終的には自分として納得のいくトマトも出来た。糖度は8度くらいだけど一定の酸味を持たせることで舌にバグを起こさせて12度くらいに感じさせると言う作り方でミシュランシェフにも糖度10度以上あるね!と言ってもらえたのは嬉しかった。

オリザ鹿児島ファームのHP

ただ、後述の理由で経営に限界を感じたので、その当時から付き合いのあるNECAPさんが日本全国で投資/買収先での大きなネットワークを作るというので、株式を買ってもらい参画することにした。今は小平社で2割ほど株を残して、私は取締役として経営のアドバイスを行うという立場になった。

なぜ、一次産業の経営は難しいのか。理由の一つは売上変動性の高さ、もう一つは消費地との距離は変えられない制約、と言う二つの理由だと思う。

今やっているエネルギーの事業では売上がゼロになることはない。売上予算との差があっても5%とか多くて10%程度。ただ、農業生産事業だと簡単にゼロになる。もしくは売上単価が70%落ちることもザラ。今日外はシケなんだけど漁師さんの売上はゼロになるだろう。そんな産業は他に無い。ただ変動は多いがプラスに上がることはほとんどなく(単価が少々上がるがそう言う時は生産量どんと下がるので変わらない)、下方向への変動だけが大きい産業になっている。

もう一点が消費地との距離が単価形成に大きく影響を与えるがそれは後で変えようがないこと。生産地のロケーションで農業ビジネスの9割が決まると言うのは持論。うちの場合は鹿児島にあると言うことで、輸送に東京まで中一日かかるのと、九州の各産地との過度な競争を避けられないと言うことが大きかった。

それでも工夫して流通スタートアップと組みレストラン向け売上を3割まで増やした、ふるさと納税も増やした、九州内では量販店向けに値段に抑えて提供して量を捌くのも頑張った、コストを下げるためにエネルギーは自社で工夫したし、資材もオランダから直輸入、自分で区画契約のスタートアップを作ってプラスの売上も作ろうとした。ただ、いかんせん、熊本でのミニトマト出荷量の増加の波にも飲まれ、最終的に限界を迎えてしまった。

と言うことで自分の血と涙を飲み込んだ11年にわたるミニトマト経営を手放して2年経つが、ようやく気持ちを文章にできた。悔しいのは確かだが、生産事業でリベンジしようとはもう思わない。ただ、今もがいている一次生産者のことは心の底からリスペクトしている。エネルギーでも流通でも貿易でも手伝えることがあればなんでもやりたいと思う。Success is the best revenge とカニエウエストが言ってるが鹿児島の一次生産者の成功を支援することで、自分のリベンジとしたいと思ってる。

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