ネコちゃん、こっちだよ。
昨日の夜、久しぶりにネコの鳴き声を聞いた。鳴き声からすると、子ネコ。お母さんを探しているみたい・・・
私はまあまあ大きい町に住んでいて、野良猫は全然見かけない。私が育った町は田舎で野良猫がうろうろしてた。子供の頃は、春になると、とにかくうるさかったよ。ネコも発情するんでね、争いも起きるんですよね〜。でも、最近は全然見ないし、鳴き声さえ聞かない。だから、びっくりしたの。まだ、このへんにも野良猫がいたんだなって。
ずっと鳴いている。でも、その声は、必死で、どこかにいるお母さんに届けと言わんばかりに大きい声だった。
おかあさ〜ん、どこ? どこに行ったの?
ぼくを置いていかないでよ・・・
返事をして、おかあさん・・・
鳴いても、鳴いても返事はない。人が来る気配もない。私はただアパートの部屋から聞いているだけ。大丈夫かな?大きい道があるから気をつけてね。お母さんが戻ってきたらいいね。
おかあさ〜ん、どこ行っちゃったの?
ぼく、今どこにいるかわからないよ・・・
返事をして、おかあさん・・・
雨が降り出した。しとしとと、静かに降る雨だった。子ネコの鳴き声はどんどん大きくなった。
おかあさ〜ん、おかあさ〜ん・・・
ここだよ・・・ここにいるよ・・・
小さな小さなネコの鳴き声が聞こえてきた。
あ!お母さんが来てくれた。
子ネコは気付いたようです。お母さんネコが近くにいることに。子ネコもお母さんネコもお互いに呼び合っています。でもね、子ネコの鳴き声がどんどん遠くなる。
違うよ、違うよ。反対だよ。そっちじゃないよ。お母さんは、こっち。こっちだよ。戻っておいで。
おちびちゃん、ここよ。お母さんはここにいるよ。聞こえる?ここよ。
はたと気付いたのが、子ネコの鳴き声がまた近づいてきた。
よかった・・・そうそう。こっちこっち。出会えたかな?会えたかな?
でも、まだ子ネコもお母さんネコも泣き続けていた。
あ〜もうじれったい。今、どこにいるんだろう。ネコって夜も見えるんじゃなかったっけ?どこにいるの?早く気付いて!早く見つけて。
私は、このネコのドラマに寝られなくなった。うちの近くには大きい川と道がある。だから、車にひかれないように、川に落ちないように、それが気がかりでしょうがなかった。それだけを祈りながら、このドラマの結末を、Happy endをイメージしていた・・・・
気付いたら、朝になってた。ネコの鳴き声はなく、静かな朝だった。子ネコはお母さんネコに会えたかな?会えたよね。うん、間違いない。あれから、子ネコの鳴き声を聞いていないからね。もう、迷子にならないようにね。ちゃんと、お母さんについていくんだよ。