蛇はカッコイイ?
アダムとイヴを誘惑して以来、蛇と言えば人類の敵。
狡猾で忌まわしい動物として嫌悪と畏怖の対象になってきた。
このようなイメージは中国においてもまた然り。
蛇魅の祟りや蟒蛇の襲来を語る話は枚挙にいとまがない。
そんな中で異彩を放つのが、明代の短編小説集『警世通言』に収められた「白娘子永鎮雷峰塔」である。
一般には「白蛇伝」として知られるこの故事は、上田秋成『雨月物語』の「蛇精の淫」の原話でもある。
杭州の若者が西湖を渡る船の上で白娘子と出会い結ばれるが、実は女は白蛇の化身で、最後に法海禅師によって雷峰塔に閉じ込められるという物語だ。
本来は妖怪退治の物語であるが、のちにこの話が芝居や語り物として民間に広がるにつれ、人々はしだいに白蛇に同情を寄せるようになる。
白娘子はもはや化け物ではなく、男との愛に命を懸ける一途な女性へと変容する。蛇の醜悪なイメージはすっかり消え失せ、妖艶な美しささえ漂わせるようになる。
世が変わるにつれ、諸々の物のイメージも時代と共に変わる。
現役時代、わたしは怪異小説の研究をしていた。
こんなことを息子に質問するバカな親はあまりいないと思うが、当時小学生だった息子に、
「蛇ってどう思う?」
とバカな質問をした。
すると、
「超カッコイイ!」
という予想外の返事だった。
しばし首をかしげたが、はたと思い当たった。
どうやらポケモンの影響のようだ。
「蛇ポケモン」と総称する蛇をモチーフとしたポケモンの仲間がいて、
「強靭な筋肉の塊である蛇の特性から技はパワフル」なのだそうだ。
「へびにらみ」とか「とぐろをまく」とか、蛇ならではの得意技もあるんだそうだ。
う~ん、知らなかった。
まあ、ミッキーマウスは鼠だし、キャスパーや Q 太郎はオバケだし、
蛇がカッコイイのも不思議ではない。
*ヘッダー画像は、中国ドラマ『新・白蛇伝』
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