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中国の歴史・思想・文化

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中国の古代思想と伝統文化について、現職時に研究テーマとしていた論考や、授業で使った講義ノートなどをアレンジしてみました。
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#創作大賞2024

「長恨歌」が語らない楊貴妃の話

楊貴妃と「長恨歌」中国の「四大美女」と言えば、 の4人とされています。 「世界三大美人…

泉聲悠韻
9か月前
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始皇帝と仙薬~飽くなき「不老長生」の妄執

天下統一を果たし、この世で欲しい物は全て手に入れた始皇帝が次に求めたものは「不老長生」で…

泉聲悠韻
10か月前
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毒を仰いだ韓非~天下統一、影の立て役者

韓非は、戦国時代末期、韓の王族に生まれた。 尊称で「韓非子」とも呼ばれる。 法家思想の第…

泉聲悠韻
10か月前
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恐るべし、元祖教育ママ~孟子の母親の話

孟子は、理屈っぽい。 諸子百家の時代、弁舌で身を立てるのだから、当然と言えば当然だが、 …

泉聲悠韻
10か月前
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『楚辞』「漁父」~莞爾として笑い、枻を鼓して去る

中国の戦国時代後期、西暦では紀元前4世紀から3世紀頃、南方の楚の国に『楚辞』という韻文の…

泉聲悠韻
1年前
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中国の漢字にまつわる吉祥と禁忌

どこの文化にもタブーがある。 うっかり犯すと、恥をかいたり、顰蹙を買ったり、 運が悪い…

泉聲悠韻
1年前
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『覇王別姫』~歴史、京劇、小説、そして映画『さらば、わが愛』

『覇王別姫』は、「覇王」項羽が「姫」虞美人に今生の別れを告げる物語である。  もとは『史記』「項羽本紀」に見える項羽の最期を伝える歴史故事であるが、後にこれが潤色されて、京劇、小説、映画など、さまざまなジャンルで語り継がれていく。 『史記』「項羽本紀」 『史記』「項羽本紀」は、楚の武将項籍(字は羽)の伝記である。  時は秦末、都咸陽が陥落すると、再び世が乱れ、諸侯が並び立つ。  当初は、項羽が自ら「西楚の覇王」と号し、実権を握っていたが、徐々に勢力を増した漢王劉邦がこ

【中国人の面子】二千年変わらぬ中国人の体質

中国人と面子  「面子」(メンツ)は、中国人を理解する上でのキーワードである。  「顔…

泉聲悠韻
1年前
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【荘子】「胡蝶の夢」~チョウチョにとっては迷惑な話だという話

荘子については、こちらをご参照ください。↓↓↓ 荘子は、名は周、戦国時代の人。 老子の思…

泉聲悠韻
1年前
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【老子】「無為自然」~やらないということをやるという話

 老子については、以下の記事をご参照ください。↓↓↓ 「無為自然」とは 老子は、人間は「…

泉聲悠韻
1年前
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【老子】「道の道うべきは常の道に非ず」~わからないということがわかればよろしいと…

謎の老人~老子の正体老子、言わずと知れた道家の祖である。 孔子と並んで中国思想界の双璧で…

泉聲悠韻
1年前
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唐代伝奇「杜子春伝」を読む~芥川龍之介は何処を如何に改編したのか

印度の説話 近代日本を代表する文豪・芥川龍之介の小説「杜子春」が、中国の小説を改編した…

泉聲悠韻
1年前
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『聊斎志異』に描かれた「狂」と「痴」

はじめに  本稿は、清朝初期の文人蒲松齢(1640~1713)の怪異小説集『聊斎志異』に登場す…

泉聲悠韻
1年前
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中国怪異小説⑦「趙泰の冥土巡り」~泰山府君と仏陀(『幽明録』より)

魏晋南北朝時代、「六朝志怪」と呼ばれる怪異小説が盛行しました。 その中から、南朝宋・劉義慶撰『幽明録』に収められている「趙泰の冥土巡り」の話を読みます。 趙泰の冥土巡り 趙泰は、字を文和といい、清河郡貝邱県(山東省)の人であった。朝廷からお呼びが掛かっても出仕せず、学問に精進し、郷里では名士と称えられていた。 三十五歳の時、宋の太始五年七月十三日の深夜、突然、心臓に痛みが走って亡くなった。 胸にわずかなぬくもりがあり、体を屈伸させていたので、家の者は、すぐに埋葬せずに、