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カヴァー曲の傑作#3 The WHO サマータイムブルース       

 今の時代、なんでもかんでもポイントである。地元のスーパーに行ってもレジで「当店のポイントカードはお持ちですか?」なんていちいち聞かれる。持ってねえよ!

 私はポイントカードというのが大嫌いだ。ポイントを貯めようと意識すると、「え、明日からポイント2倍セールが始まるのか。じゃあ、今日は買い物はがまんしようか。」なんて、購買行動がポイントによって制限されてしまう。
かといって、ポイントの存在を忘れて暮らしていると、いつのまにか1年くらい経過していて、いざ、ポイントを使おうと思い立った時には「お客様のポイントは先月で消滅しております。」なんてことになる。

 そもそも、ポイントを貯めていくためにはポイントカードなるものを作成する必要があり、それを作るためには代償として自分の個人情報を企業側に知らさなければならない。財布はどうでもいいようなポイントカードでパンパンに膨らんでいく。

 ポイントの基本は「たくさん消費してくれたご褒美」のはずだ。200円購入ごとに1ポイント差し上げます!てなもんだ。

 ところが、この夏「節電ポイント」なるものが実施されるらしい。
電気を節電した人には「ご苦労さん、よく電気を使わないで頑張りましたね」ということで、ご褒美ポイントが付与されていく。

は?

 夏場の電気消費といえばエアコン。これを節約したらご褒美でポイントがもらえる。
「ポイントを貯めることに一生懸命で、無理にエアコンの使用を控えた一人暮らしの老人が、自宅で熱中症になって病院へ搬送」というニュース見出しが今から目に浮かぶよ。

 それで、その節電ポイントのアプリを政府から請け負った企業は丸儲け。政府は「どうだすばらしいアイデアだろ!」とドヤ顔で胸を張る。
 ネットでは「私はこうやって節電ポイントを稼ぎました」なんていう、自称「賢い主婦」の投稿が連日アップされることでしょう。
 
 教員志望の若者が減っている問題を、どうしたら是正できるか、ということを話し合おうとするフォーラムがあったとしよう。
 出席者のひとりが手を挙げて、「良い提案があります。えーと、教員採用ポイントカードを導入したらどうでしょう。教育実習に行ったらポイント、採用試験を受験したらポイント、合格したらポイント5倍で」なんて真面目な顔で提案してきたら、私は即座にその場を去るね。あなたもきっと「いや、問題はそこじゃないだろ」って思うでしょうよ。
 
 それと同じか、あるいはそれ以上のダメダメ感があふれる「節電ポイント」のアイデア。この国は、脳みそまで衰退国になっていくのか。

 情けない気分を払しょくするべく、SUMMERTIME BLUES を聴くことにする。
 オリジナルはエディコクランで1958年リリース。エディコクランはエルヴィスプレスリーに代表されるロカビリーの代表的シンガーの一人。1960年に自動車事故で死亡(享年21歳)。

Eddie Cochran - Summertime Blues (Town Hall Party - 1959) - YouTube

 ロカビリーブームを原体験した世代はもう後期高齢者のはず。私も原体験はしていない。だからエルヴィスやエディコクランに憧れる、ということはなかった。
私のサマータイムブルース原体験は、サル中学生だった頃、AMラジオの深夜放送で突然流れてきたザ フー のサマータイムブルース。たしかDJは野末陳平だったな。
 イントロのギターサウンドに「うわ!かっこええ!」とアドレナリンが逆流。「The WHOはかっこいい」という刷り込みが一瞬で完成された。

The Who- Summertime Blues - YouTube

 でも70年代初期、日本ではThe WHO は評価の低いバンドだった。
「ステージ上でアンプとドラムセットをぶっこわした」とか「プライベートで暴力事件を起こした」とか「ライブでの音量がでかすぎる」とか、そんな大仁田厚並みのデンジャラスなイメージばかりが先行して、プロモーターもトラブルを恐れて、来日公演を実現しようとはしなかったそうだ。

サマータイムブルースは「彼女と泊りデートをしたいけど、まずは金が無いからアルバイトしなきゃ。でもバイトの時給は安いし、休めないし、キツすぎてやってられねえ。思いあまって地元の議員に陳情に行ったら、選挙権のないガキだからといって相手にされなかった」といった内容。
世界共通の高校生ならではの鬱屈した気分を歌っています。

議員のセリフはこの部分

I'd like to help you son, but you are too young to vote !
 
  「何とかしてあげたいけど、君はまだ選挙権ないだろ」

 60年も昔に、世の中の真実のカケラがロックの歌詞になっていたのだ。
中学で習う構文、too 形容詞 to do (ーーするには~すぎる)には最適の例文だな。

 選挙が近い。期日前投票も始まった。

 日本の若い世代は選挙に行かない。「興味ないし、誰がなっても一緒でしょ」とか言って。
 ジジババは選挙に行く。世の中が変わるのはいやだから政権党に投票。
 当然ながら、政権与党の政治家は、雨が降ろうが槍が降ろうが選挙に行って自分を支持してくれるジジババの望むような世の中にしようとする。
30年後のことなんか知ったこっちゃあねえよ。ああ、衰退国の哀れ。

 

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