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検査値が正常なら健康なのか?

私が今より世をすねてとがっていた頃、カナダで犯罪学の授業をうけていまして。そのときの授業で印象的だったお話をここでひとつ。

"相関(correlation)"という言葉。相関とは何か2つの事柄の、一方が変われば他方もそれに連れて変わるとか、あるものの影響を受けてかかわり合っている、例えば学校で習った比例や反比例の関係です。犯罪学では収入が低い地域では犯罪件数が多いとか、若年層の方が老年層より犯罪率が高いとか、そんな議論のときに使います。

Aが増えたとき、Bも増えている・・・そんなときAが原因となってBが起きている、AとBは相関性があるのでは?と考えてしまいますよね。

でも、データを扱うときに注意しなくてはならないことに"見た目状の相関性”というものがあります。実は、犯罪率が上がると、アイスクリームの消費量があがるという統計があります。では、アイスクリームを食べることで人は冷静さを失い犯罪に走るのでしょうか?アイスクリームはそんなに危険なものだったのか??

もちろんそんなことはありません、安心してくださいね。夏になると気温が上がり、アイスクリームの消費量が増加します。そして気温が上がると人は外を出歩き、犯罪の件数が上がるのだそうです。相関関係になるのは気温とアイスクリームの消費量、そして気温と犯罪件数です。一見AとBに相関性があるように見えて、実は全く別のCという要素が関係していることもある、だからデータ上の数字の動きにとらわれすぎない分析的な視点を持とうね、というお話でした。

で、健康診断の検査値の話しになります。

検査の結果、基準値に収まっていれば「あ、良かった!」と思いますよね。その検査の基準値はどう決まるのでしょうか?

実は一部を除いて、多くの検査項目の基準値はただの平均値だったりします。具体的には、100人いたら95人が収まる数値を基準値として設定しているだけです。つまり、5人は必ず異常値になりますし、極端な話し母集団(最初に集めた100人)がみんな病気なら、異常値がそのまま基準値として設定されてしまいます。

例えば貧血の診断として用いられるヘモグロビンの数値。男性は13.5~17.5、女性は11.5~15.0(g・dL)となっていますが、別に女性の体は男性よりヘモグロビンの数値が低くても元気に過ごせる、という科学的根拠があるわけではありません。女性が全体にヘモグロビンが低いのでこの数値が設定されただけです。現に、基準値を満たしていても貧血様症状を訴える女性は多くいらっしゃいます。

だからといって検査値に全く何の意味もないわけではありません。もちろん目安にはなりますし、前回の検査値との比較は体調の変化を知る大きな手がかりになります。

ここでいいたいのは”検査が基準値に収まっている=問題なし”なのではく、検査値と自分の体の声の両方を大切にしなくては、ということです。今の検査値は病気との相関性が本当にあるのか、それとも他の要素のCが見つかっていないだけなのか不明なものも多いためです。

検査値に異常ないから、といって無理を続ける人や、検査値に異常がないから治療できないと医者に言われたという人をたくさん見てきたので・・・。何にせよ分析に頼りすぎるのはよくないですね。

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