カラーマーケティング VOL.02【 マーケティング・デザイン視点から見た色彩 】
結論から言うと「売れる色がある」ということは、いまからおよそ35〜40年前に、あらかたの研究が終わっています。「売れる色」は存在しています。
そして、この投稿に「共感できるデザイン関係者」がいるとすれば、それは「売れるもののデザイン」を いくつも作り上げてきている デザイン関係の業界で、トップクラスの人だけだろうと思いながら 書いています。
そのことを大前提に、順序立てて「色彩をどうマーケティングしていけばいいのか?」。「売れるデザインを作るには、どうすれば良いのか?」の概要をご案内していきます。
前回の投稿
つづき・・・
1)色はセールスマン
「パッケージはサイレント(無言の)・セールスマンだ」 私がこの言葉に出会ったのは40年前。流通業=百貨店に入社して3年め=1985年ごろです。
マーケティング部門に配属されて3年めのころでした。人間のセールスマンではない、広告というものがセールスマンの役目を果たしていることは仕事がら理解していました。
しかし、広告には大変な費用がかかります。それと比べた場合、パッケージをセールスマンに使えるなら実質的にセールスマンの給料はタダです。
商品を裸のままで売るわけにはいきません。当然、パッケージは必要です。であれば、パッケージがセールスマンになるのなら「有効利用の一石二鳥」といった話にもなります。
正直、私は、パッケージがセールスマンになれるなどと考えたこともありませんでした。とはいえ、毎日 支店の百貨店の全ての売場を見て回っていました。
職種がら「売れる商品」「売れる売場」を探して店頭リサーチを続けているうちに、売れる売場には「ディスプレイ」「プライスカード」「POP」。
この3つが必ず揃っていることがわかってきていました。そして、売れる「パッケージ商品」を見ているうちに「基本は売れている売場と同じなんだな」・・・
そう感じるようになりました。私は、現場百遍の巡回をしたことで、良い売場と、売れる商品のパッケージ・デザインの「工夫された同じポイント」を肌で感じとれるようになっていました。
ですから、上司の口から出てきた「パッケージは無言のセールスマン」という言葉に出会った 瞬間「そうだ!」という共感的な感動があったのです。
その言葉は、次のように言い代えることができます。 「パッケージデザインは無言のセールスマンである」「カラーは無言のセールスマンである」
この言葉を強く意識し、心に焼き付けておくことが大切だと思います。この言葉の中に、現代の販売の本質が隠されているからです。
昔の販売は「物」を売るという感じが強かったのですが、現代の販売は、物ではなく心理的な価値、 すなわち「満足価値」を売っています。
分かりやすくいえば、ゆがんだキュウリは「デパ地下」では売れないのです。ゆがんだキュウリは、百貨店には仕入れられず、最悪、契約農家で処分されてしまうのです。
考えてみると、もったいない話ですが、これが現実です。 そうです、現代はパッケージ・デザインの美しさが商品価値になってしまうのです・
言い換えると、 エンドユーザーは「パッケージを買っている」ということです。つまり、外側のデザイン次第で売れ行きが変わるということなのです。
心理的な価値は、言葉では説明できません。しかし、この心理的価値をユーザーに 雄弁に語ってくれ るのがデザインです。
デザインは、うまく作ればすばらしいセールスをします。ところが、そのようなデザインを作るためには購入者側の感覚を、しっかりと学習しなければなりません。
ここに、カラーマーケティングの 出発点があるのです。
2)「色」で売る
「色」で売るというと、唐突に聞こえるかもしれません。まして「マーケティングは色である」といったら、なおさらでしよう。
しかし、 マーケティングが色彩戦略で始まったのは事実なのです。今から100年前、1920年代の末、アメリカで大不況が起こり、世界中に波及して世界中が大恐慌にみまわれました。
たまたまそのころ、自動車販売で劣勢であったGM(ゼネラル・モータース)は、自動車に色を塗ることを思いつきました。
実は「当時の自動車は黒いもの」と決まっていたのです。ライバル会社のフオードは自動車 生産の量産に成功して、GMを完全に圧倒し一人勝ちの独占状態でした。
しかし、一般大衆は「黒一辺倒」のフォードの自動車に飽き飽きしていたのです。ですから、黒以外の色が塗られたGM車の登場は大衆の目を一気に集めました。
だれの目にもカッコ良く映り、爆発的に売れたのです。その結果、あれほど優勢であったフオード車が百万台規模で売れ行きを落としていきました。
そして、その大事件以降、何十年にもわたりGM社が世界一の地位に君臨し続けたのです。 これは「色で売る」ということが実践された世界で最初の大きな事例でした。
それはまさに「色彩戦争」でした。 しかしながら、フォード社は大量生産によるコスト競争にこだわり、カラーというものの価値を まったく認めませんでした。
大衆はカラーによって高価になったGM車よりも安いフォードの車を選ぶと信じ続けたのです。この思い込みが当時のフオードに決定的なダメージを与えました。
GM社としても、カラー(で塗装すること)がこれほどの大勝利をもたらしてくれるとは夢にも思わなかったでしょう。むしろ苦肉の策だったと推察できます。
しかし、ここに色彩というものの不思議さがあります。 カラーというものの価値は評価しにくいものです。色そのものには重さも大きさもありません。
実は、カラーの価値は心の中の「心理的価値」です。すなわち、それは「喜びであり、満足であり、感動」です。 ですが、その感動といものもその大きさを測ることが難しい…。
心理的な側面で唯ーコントロールが可能なのは「好き嫌い」です。好き嫌いはだれでも敏感に自覚できるものです。したがって、好き嫌い調査を行って売れる色を判定する。
これは、一見、くだらそうに見えます。しかし、この「買う側への好き嫌いの確認」こそが マーケティングの基本中の基本なのです。
そのようにして、販売前・開発前に手間をかけて売れる可能性を判断することが、カラーマーケティングの本質なのです。
この話の続き
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