北半球にしか生息しないサケがなぜチリから輸入されるのか
ギンザケは低温を好む魚です。
千島列島よりも北の海域を回遊しています。
ごく稀に知床あたりで獲れることがありますが、
北海道以南の河川に遡上することは滅多にありません。
かつては遠洋漁業によって水揚げされていました。
オホーツク海やベーリング海が主な漁場でした。
しかし現在は、市場に出回るギンザケのほとんどは養殖です。
成長が早く、低価格で一年中安定して供給されています。
しかもシロザケ、ベニザケよりも脂が乗っています。
塩ザケとして流通しているサケの多くはギンザケです。
日本国内のギンザケの主要な養殖地は宮城県です。
残念ながら東日本大震災で養殖場は壊滅的な打撃を受けました。
震災直後は出荷量がゼロに落ち込んでしまいましたが、
復興が進み、生産量が震災前に回復しているそうです。
これまで地元の人々が懸命に努力してきたおかげです。
ありがたくギンザケをいただきたいと思います。
しかし、国内産よりも輸入されているギンザケがはるかに多く、
輸入量が最も多い国はチリです。
チリ産のギンザケは、市場ではチリギンと呼ばれるそうです。
チリではエサとなるアンチョビが豊富なので脂が乗っています。
ところで、ギンザケは北半球にしか生息しない魚です。
なぜ南半球のチリから輸入されるのでしょうか。
南半球のサケの養殖は19世紀後半から実験的に始まりました。
当初はサケが故郷の川に戻らず失敗の連続だったそうです
やがてチリで養殖の成功例が見られるようになりました。
現在では世界で最も多くギンザケを養殖しています。
枯渇する水産資源を守ろうとする取り組みは大切です。
しかし注意しなければならない点もあります。
それは、自然の生態系を守ることです。
もともとその地域に生息していない外来種を持ち込むことは
その地域の生態系を乱す恐れがあります。
ときには、その地域の固有種が絶滅するかもしれません。
そうならないように配慮しなければなりません。