天津丼と天津甘栗
天津丼や天津飯と呼ばれる料理があります。
蟹玉をご飯に乗せて甘酸あんをかけた料理です。
主に東日本では天津丼、西日本では天津飯と呼ぶそうです。
しかし中国の天津市には天津丼も天津飯もありません。
日本で考案されたというのが定説です。
こうした料理は中華料理ではなく中華風料理といいます。
蟹玉は広東料理の芙蓉蟹からヒントを得ています。
芙蓉蟹はカニのほぐし身を混ぜた中華オムレツです。
カニは高価なので蟹玉にはよくカニ風味かまぼこが使われます。
刻んだチャーシューやエビで代用することもあります。
ふわふわの蟹玉ととろりとした甘酢あんが熱々のご飯に合います。
しかしなぜ天津丼や天津飯と呼ばれるのでしょうか。
いつどこで誰が最初に作ったのでしょうか。
諸説があるようですが、詳しいことはわかっていません。
わかっているのは天津市発祥ではないということだけです。
まるでナポリ発祥ではないナポリタンスパゲッティみたいです。
もう一つ天津の名がつくお馴染みの食べものがあります。
それは天津甘栗です。
天津甘栗には小粒のシナグリという品種が使われています。
渋皮がはがれやすく簡単に手で殻をむくことができます。
中国の河北省がシナグリの主な生産地だそうです。
ところで天津甘栗が甘いのはなぜでしょうか。
もともと甘味の強い品種という理由もありますが、石焼き芋と同じ原理で焼き上げるからです。
高温の石が出す遠赤外線によって中までゆっくり加熱されることで栗に含まれる酵素がデンプンを糖に変えていくのです。
天津甘栗は天津が名産地というわけではありません。
じつは名産地としては北京がよく知られています。
ではなぜ天津甘栗と呼ばれるのでしょうか。
それは天津港から日本に輸出していたためです。
天津から日本に来る甘栗ですから天津甘栗という名も不思議ではありません。
中国では天津甘栗を何と呼んでいるのでしょうか。
中国語の発音はわかりませんが、「糖炒栗子」というらしいです。
発音できなくとも漢字を見れば納得できる名称です。