ラフテーと東坡肉
ラフテーは沖縄の郷土料理です。
皮付きの豚の三枚肉を醤油と砂糖と泡盛を使って柔らかく煮込みます。
豚肉の角煮に近い料理です。
三枚肉とはバラ肉のことです。
皮と赤身と脂身が三層になっているので三枚肉と呼ばれます。
皮付きのまま使う点が角煮と違うところです。
長時間煮込むことで脂が抜けて脂身がとろりと柔らかくなります。
ラフテーは漢字では「羅火腿」と書きます。
中国から伝わった料理と考えられています。
その起源となったのは「東坡肉」という豚肉料理です。
「トンポーロウ」とカタカナで表記されることもあります。
東坡肉は北宋の時代に作られました。
蘇軾(そしょく)という詩人が考案したと伝えられています。
蘇軾は詩人でもあり書家でもあり政治家でもありました。
東坡居士という雅号を持つので蘇東坡(そとうば)とも呼ばれます。
彼が政治家として失脚して湖北省の黄州に左遷されたとき、当地の豚肉が非常に美味であることを発見しました。
その豚肉を使った料理が紅焼豚(ホンシャオロウ)です。
豚肉を醤油で煮た料理であり、東坡肉の原型とされています。
いったん中央政界に復帰した後、今度は浙江省の杭州に左遷されます。
そこでもまた豚肉と紹興酒を使った料理を作りました。
それが東坡肉の始まりといわれています。
今でも杭州の名物料理だそうです。
やがて沖縄に伝わりラフテーが生まれました。
また長崎では卓袱(しっぽく)料理の東坡煮(とうばに)となりました。
日本料理にすっかり定着している豚の角煮を楽しむことができるのは、蘇軾さんのおかげです。
たとえ左遷されても逆境から美味しい料理を考案するのですから、蘇軾さんはすごい人物です。