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400字で分かる落語「馬のす」
「う」の76:馬のす(うまのす)
【粗筋】 釣りに行くのに天蚕糸(テグス)が使えなくなっている。つないであった馬の尻尾を抜くと、通り掛かった友達が「馬の尻尾を抜くと大変なことになる」と言う。何が大変なのか教えてくれと言うと、「俺もただで習った訳じゃない」と言うので、枝豆をつまみに酒をご馳走する。男はじらしてたらふく飲み、枝豆も残らず食いつくし、「はい、これでお終い、ごちそうさん」「さあ、馬の尻尾ォ抜くとどうなるんだい」「馬の尻尾ォ抜くとね」「うん」「馬が痛がるんだよ」
【成立】 1712(正徳2)年『笑眉』の「秘事は睫」、安永4(1775)年の『花笑顔』にある「馬尾」など、子供が悪戯で抜くのを叱るだけ。
寛政9(1797)年正月出版、烏亭終焉馬の咄の会から収録した『詞葉の花』にある狂馬楽の部屋住作「馬のす」が現在に近い。「馬のす」は馬の尾を「みそこし」などの「簀(す)」に使ったもの。釣りでは水でふやけないが弱いのが欠点。テグスはもちりん絹糸。テグス蚕の幼虫から取る。「テングス」とも。
桂文楽(8)の独断場だった。小島政二郎は「この枝豆を一ト粒一ト粒食べる仕種のうまさ、文楽でなければできないうまさだ」と書いている。その文楽は「円馬師匠は、羊羹一つたべるしぐさでも、どういう家の羊羹か、ちゃんとたべわけてみせてくれるし、豆だって、枝豆、そら豆、甘納豆と、たべ方が違うんですね」と書いている。そういえば文楽も、この他、「明烏」の甘納豆など、十八番には多く食べる仕草が入っている。ただ、これらの芸談ではどこがどう違うのか全く伝わらない。ビデオが残っているが、私にはその違いを伝える能力がない。この食べ方の違いが書けないので評論家を断念したのだ。歳をとってから、どの評論家も書いていないことに気付いた。
我が家のある近くのお店ではピーナッツがおいしい。千葉も評判だが、うちの方がはるかにおいしい。しかし、違いは説明できない。出来たらピーナッツ評論家になっている。
※ 比叡山での厳しい修行を終えて、無事帰って参りました。引き続きよろしくお願い申し上げます。