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400字で分かる落語「うれしなき」

「う」の96:うれし泣き(うれしなき)
【粗筋】 長屋の裏を流れるどぶ川に赤ん坊の死骸が流れ着き、それから夜になると赤ん坊の泣き声が聞こえるようになった。近所の坊さんでも、名僧の供養でも泣き声がやまない。そこに現れた坊主が、自分こそ本当の名僧だから任せておけと言う。夜が更けてこの坊主がお経をあげるが、赤ん坊の泣き声はやむ気配がない。長屋の衆が、
「やっぱり駄目だ」と言うと、赤ん坊の声が、「これはうれし泣きです」
【成立】 1960年頃、露の五郎(後の五郎兵衛)ら、噺家が下宿していたアパートの裏のどぶ川に赤ん坊の死骸が流れ着き、それからというもの、五郎や師匠の文我(先代)らは、夜になって酒を飲んで帰ると赤ん坊の泣き真似をしてふざけていた。しばらくすると、川岸に碑が建てられた。夜な夜な聞こえる赤ん坊の泣き声におびえた近所の人が、霊をなぐさめるために建てたのであった。
 この話を聞いた林家彦六(正蔵8)が、この噺を作った。
「(この成立過程を聞いたのは)私が学生の頃のことだった。ただし、この話全部がシャレである可能性もあることをお断りしておく。」(川戸乙吉)

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