【物語の現場015】融川の子供たちの作品を見て(狩野派展鑑賞メモから)
「融女寛好」の第十四章に、融川寛信の子供たちが出てきます。舜川昭信と友川助信。
当初、この二人については、最終章で浜町狩野家のその後について記す際にさらっと紹介するだけの予定でした。それを、可愛らしい兄弟として物語の中に登場させることにしたのは、彼等の作品を見る機会を得たためです。
一昨年の春、池上本門寺の霊宝殿で開かれていた狩野派展を訪れた際(2022.4.23)、融川の若描きの作品などと一緒に、二人の作品も展示されていました。
舜川昭信は、滝を登る鯉と滝を下る鯉の双幅(絹本着色)
友川助信は、柳の木と寄り添う二頭の馬の図(紙本水墨)
その日は晴天。心地よい春風と缶コーヒーをお供に、境内のベンチに座って鑑賞メモを作成しておきました(掲載の画像)。
どちらもテクニック的には稚拙。構図も恐らく粉本(絵手本)通りで独創性ゼロ。しかし、落款を見て納得しました。どちらも名前の下に「十五童」と入っているのです。
元服時の記念作品なのかも。何にせよ、父・融川の死後、二人とも、融女寛好や一門の年長者の指導の下、絵画の修行に励んでいたのでしょう。
そう思うと、たとえ取って付けた様なシーンになるとしても、二人の登場シーンを書き加えずにはいられなかった次第です。
なお、池上本門寺霊宝殿では、毎年春、所蔵の狩野派作品や奥絵師家墓所の調査資料などの特別展示を行っています。興味のある方は是非(2024年以降にいては、必ず同寺のホームページで開催の有無・日程等をご確認ください)。