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青森・岩手・秋田の2024年Google検索ワード急上昇ランキングについて解説してみた
先日、Googleは2024年に日本国内で昨年と比較して検索数が急上昇した検索ワードのランキングを発表した。
このランキングは全体とジャンル別のほか、都道府県名と共に検索されたワード上位5つも掲載されているのだが、見てみると予想以上にローカル色が強く、他の地域のものについては「なんのこっちゃ」と思うものばかりで面白い。
というわけで今回は自分がある程度把握できている青森・岩手・秋田の北東北3県で2024年にGoogle検索数ランキングTOP5について考察を交えつつ解説していく。
【青森県】
1位 イトーヨーカドー 青森店
2位 イオンシネマ新青森
3位 MEGAドン・キホーテ
4位 ジブリ展
5位 シーナシーナ青森
1位 イトーヨーカドー青森店
5位 シーナシーナ青森
ランキングを見る限り、2024年の青森県を最も賑わせたニュースはイトーヨーカドーの大幅な店舗数の削減のようだ。少し変則的になるが5位のシーナシーナ青森もこの件に関連するワードとなっているのでまとめて解説する。
こちらは全国的なニュースになったが、イトーヨーカドーは2024年に地方を中心に多数の店舗を閉店した。
特に元々県内に五所川原、青森、八戸、弘前に4店舗を構えていた青森県は全店舗が閉店し、青森県からイトーヨーカドーは撤退する運びとなった。
青森県は昔から県庁所在地である青森市、青森県の旧南部藩地域である南部地方の中心である八戸、旧津軽藩地域である津軽地方の中心である弘前市 (※)の3市が経済的にも文化的にも中心となっており、ほとんどの青森県民はイトーヨーカドー青森店・八戸沼舘店・弘前店のいずれかに行った経験があるはずだ。
※ 青森市も津軽に分類されるのだが、青森が県の中心として本格的に発展したのは廃藩置県以降であり津軽という括りでの文化的な話では弘前の方が中心的な印象がある
この後、青森、弘前、五所川原の旧イトーヨーカドーについては近年急成長を遂げているOICグループのロピアが出店。
イトーヨーカドー五所川原店は元々ELMというショッピングモールの核テナントではあったものの、あくまで建物としてはELMであり特に建物としての名称の変更もなくイトーヨーカドー五所川原店撤退の3月末から4ヶ月後にロピアとしてオープン。
青森と弘前についてはイトーヨーカドー撤退後はロピアを中心としたシーナシーナ青森、並びにシーナシーナ弘前となり、シーナシーナ青森は先日12月10日にオープン、シーナシーナ弘前は10月31日にプレオープンといずれも2024年内に再オープンしている。
対してイトーヨーカドー八戸沼舘店の入っていたピアドゥなのだが、こちらについてはイオン東北が出店することが決定しているがオープン時期は2025年春と明確な日時は現在のところ未定。
2024年12月現在、外装は塗り替えられているとのことで工事は着々と進んでいるようだが、続報が待たれる。
2位 イオンシネマ新青森
3位 MEGAドン・キホーテ
2位、3位にランクインしているワードはいずれも青森市にあるガーラタウンという複合商業施設に関連するワードであり、2024年3月に大規模なテナントが次々と新規オープンした。
まずは2位のイオンシネマ新青森なのだが。この映画館はガーラタウン内にて2001年から2021年まで営業していた青森市のシネマコンプレックスである青森コロナシネマワールドの跡地に2024年の3月にオープンを果たした映画館だ。
現在青森市内にある映画館のうちシネコンに分類される大規模な映画館はこのイオンシネマ新青森のみで、他の2館であるシネマディクトならびに松竹アムゼはミニシアターに分類される。
つまり青森コロナシネマワールド閉館からイオンシネマ新青森が開館するまでの約2年半もの間、青森市は県庁所在地でありながらシネコン空白地帯となっていたのである。この検索数にも、どれだけ青森市民がシネコンの帰還を待ち侘びていたがが窺える。
また、同じくガーラタウン内には同月に3位にMEGAドン・キホーテ青森店がオープン。ガーラタウンの新たな核テナントとなっている。
4位 ジブリ展
4位のジブリ展については、青森県立美術館にて2024年11月13日からスタートして2025年2月9日まで開催が予定されている企画展ジブリパークとジブリ展についてだろう。
企画展には特に力を入れている青森県立美術館だが、今回も非常に盛況のようだ。
【岩手県】
1位 台風
2位 サンリオ展
3位 県魚
4位 新幹線 駅
5位 豚熱
1位 台風
1位の台風については2024年8月中旬に岩手県に上陸し大きな被害をもたらした台風5号についてだろう。岩手県内では特に県南地域での被害が大きく、土砂崩れや床上浸水などが多発した。以前記事にした龍泉洞も大きな被害を受け、2週間ほど休業を余儀なくされた。
政府はこの災害を局地激甚災害に指定し、特に被害の大きかった宮古市と岩泉町では復旧の支援における国の補助率が引き上げられている。
2位 サンリオ展
そして2位のサンリオ展。こちらは2024年8月10日から10月6日にかけて岩手県立美術館で行われていたサンリオ展についてのものだろう。
テレビCMが盛んに放映され、グッズ販売も盛況だったらしく企画展にしては比較的短期間だったとはいえ非常に大きな注目を集めていたことが窺える。
3位 県魚
都道府県名と一緒に検索されたワードとのことなので「岩手 県魚」で検索されたことが多かったということだろう。
岩手県の県魚は南部さけである。ちなみに青森の県魚はヒラメ、秋田の県魚は言うまでもなくハタハタである。
しかしこの南部さけ、今まさにピンチを迎えている。これは岩手県に限った話ではないのだが、今サケの漁獲量が大幅に減少しているのだ。
最盛期は7万トンを越え、その後も2万トンから3万トンで推移してきた岩手県の鮭の漁獲量であるが10年ほど前から大きく落ち込み、2023年度に至ってはなんと134トンというにわかには信じ難い状態となってしまった。
その原因の1つと言われているのが、三陸沖の水温の著しい上昇である。
かつては本州一の漁獲量を誇り、特に発情期を迎え遡上してきた鮭は南部鼻曲がりとして新巻鮭に加工されてきた。しかし現在は県内の鮭で新巻鮭を作ることさえ難しい状況が続いている。
4位 新幹線 駅
これについては確実にこれだ!と言える自信がないのであくまで推測になるが、2024年9月末に完結した漫画『呪術廻戦』にて北上駅が登場した影響によるものだと思われる。
世界的な人気作である上に作中では明確に地名が出ていなかったこともあり「あの駅はどこだ?」と思ったファンが「岩手 新幹線 駅」で検索したことでこのワードの検索数が爆発的に伸びたのかもしれない。
なお呪術廻戦の作者である芥見下々氏は岩手県出身であり、同話には小岩井農場が登場するなど他にも岩手ネタが散りばめられている。
呪術廻戦完結後に小岩井農場のツアーに参加した際には、作者が岩手県出身であることと合わせてこの件も紹介されていた。
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5位 豚熱
2024年の5月28日、洋野町の養豚場にて豚熱が発生した。豚熱は読んで字の如くブタやイノシシが感染する伝染病で、致死率の高さと伝染力の強さが特徴だ。家畜伝染病予防法で指定されている家畜伝染病の1つでもある。そして一度発生したとなれば、蔓延を防ぐため発生した養豚場の豚は全て殺処分しなくてはならない。この養豚場でも2万頭近いブタが殺処分となった。
ここ最近の東北地方では積雪量が大幅に減少している影響もあってか、雪に弱いと言われているイノシシの生息域が拡大しており農作物被害も急増している。さらに特に畜産が盛んな岩手県では、イノシシの存在はブタへの感染症の感染源となることも問題視されている。
実際に岩手県の調査では豚熱陽性の野生イノシシの存在が確認されており、岩手県内では野生イノシシの生息地に豚熱傾向ワクチンを混ぜた餌を撒くことなどで感染の拡大に取り組んでいる。
イノシシによる被害は農作物被害や人的被害の恐れに留まらないのだ。
【秋田県】
1位 プレミアム付き商品券
2位 ジブリ展
3位 駒ヶ岳 噴火
4位 名物 オランダ焼きの由来
5位 へっちゃまげな
1位 プレミアム付き商品券
こちらは読んで字の如く、秋田県プレミアム付き商品券についてものだ。
秋田県在住者は2024年9月1日から9月14日までの申し込みで購入できたものであり、1万円分の購入で1万5千円分の商品券になるという非常にお得な商品券であった。
また、サイトの方を見ると分かる通り県内の中小企業が対象ながらも秋田県全域が対象ということで、非常に使える範囲が広いのも特徴だ。
なお使用締め切りは2024年12月31日まで。
お手元にある方は忘れずに使用していただきたい。
2位 ジブリ展
青森県の4位と同じワードであるのだが、こちらは秋田県横手市にある秋田県近代美術館で2024年10月12日から始まり来年2024年1月13日まで開催が予定されている企画展金曜ロードショーとジブリ展についてのものだろう。
もちろん題材が人気のキャラクターにまつわるものということもあれど、青森のジブリ展、岩手のサンリオ展と並び企画展がランクインされているあたり、北東北の美術館への注目の高さが窺える。
3位 駒ヶ岳 噴火
これは11月10日、十和田八幡平市国立公園の秋田側最南端に位置する秋田駒ケ岳の火山性地震が急激に増加したことに関連するワードだ。
秋田駒ケ岳に限らず、同じく十和田八幡平国立公園の一部に指定されている岩手山の噴火警戒レベルが10月の初頭から2に引き上げられているほか、十和田湖周辺でも11月の末に火山性地震が頻発している。奥羽山脈の北部の地下で何が起きているのか、現代の技術ではまだまだ分からないことも多いが何かと注意しておくことに越したことはないだろう。
なお駒ヶ岳の名称を持つ山は日本全国に存在することも「秋田 駒ヶ岳 噴火」というワードでの検索が多かった影響の1つになったのかもしれない。
4位 名物 オランダ焼きの由来
昨今の日本のインターネットの新たな論争になっている「中に餡子やカスタードクリームなどを入れて小麦粉などを主体にした生地を使い金属製の型で焼いた円盤状の和菓子」の名称問題。
長くなるので以下、北東北では一般的な呼称である大判焼きの名前で当記事内では呼称させてもらうが、この論争の一部としてSNS上にて秋田県内の一部で使われているオランダ焼きという名称も話題になった……のだが、大判焼きの別称としてこの呼称が使われる、という理解ははいささか誤解がある。
オランダ焼きはこの形態の菓子全体を指すのではなく、この中でもマヨネーズとハムを具材にしたものを湯沢市では指すというのが正しい。中身が餡子やクリームではオランダ焼きにはならないのだ。
なお肝心の由来についてはGoogle検索で真っ先に出てくるのは「並んだハムが風車のように見えるから」というものだが、他にも「自分のもの」と言う意味の「オラのだ」が変形した「おらんだ」から来ているという説もあり自分は正直こちらの方がそれらしい気がする。
余談ながら、オランダ焼きという名称そのものはあまり使われないもののハム+マヨネーズを具材にした大判焼きあるいはたい焼きは北東北では度々見られ、甘い生地と塩辛い中味の組み合わせが中々に美味。食べたことのない方には是非試していただきたい。
5位 へっちゃまげな
これはほぼ確実に今年10月に1990年代から2000年代に大ヒットし、今年に入って再びシリーズが再始動している『踊る大捜査線』シリーズに関連したものだろう。
シリーズ再始動にあたり2024年はスピンオフ作品として、シリーズの登場人物の1人である室井慎次にフォーカスした作品二部作である『室井慎次 破れざる者』と『室井慎次 生き続ける者』が10月31日と同年11月15日から上映されている。
室井慎次は秋田県出身という設定の人物であり、時折秋田弁が飛び出しきりたんぽ鍋作りが趣味というというキャラクター付けがされている。また、今年公開されたスピンオフ作品も秋田県が舞台となっている。
「へっちゃまげな」という台詞は過去シリーズ中にで室井慎次が主人公である青島俊作に言ったセリフであり、シリーズ再始動にあたり改めて見返した人が「そういえばこれはどういう意味なんだ?」と思って検索した人が多かったのであろう。
なお、あくまでこのランキングは2024年1月1日から2024年11月20日までの段階でのランキングであることにもご留意いただきたい。
あくまでも予想なのだが、12月15日現在のデータで集計した場合は、11月30日に秋田市内のいとく土崎みなと店に野生のツキノワグマが侵入し、従業員に怪我をさせた上に以降2日以上に渡り立て篭もった事件に関連するワードなどもランクインしていた可能性もある。なお、該当の店舗は清掃作業を行なった上で12月7日から営業を再開している。
年の瀬が近づきつつあるとはいえ、2024年もまだ残り2週間ある。今年は久々に冬らしい冬を迎えられそうだが、だからこそ雪害などにも備え良い2025年を迎えたいものである。