#008 ココアを溶かしながら
娘が眠った後の勉強タイム 最近のお供はココアだ
少し前にドラッグストアで買い物をしていて たまたまココアが安くなっているのを見つけた 普段ココアを飲む習慣はないし ここ何年も飲んでいないのだけど その時は不思議と目に止まって いつの間にか一つカートに入れていた
あまり飲む機会のないココアを手にとったのにはいくつか理由があったと思う
まずは割引 日本の商品が高価な台湾では割引されてやっと手が届くようになる 二つ目は季節 台湾でも肌寒い日が続いていたので 「ココアか いいかもな」って気になった 三つ目は商品自体の魅力 パッケージの真ん中に描かれたバンホーテンのロゴ その横には少し控えめな大きさで「大人のほろにがココア」と書かれていた
好きか嫌いかできかれれば甘いものは好きだ でも甘い飲み物を飲む習慣はないのでココアにしてもこの「ほろにが」と言うワードは巧みな誘い文句だった
そういうわけで購入したココア 牛乳すら飲む習慣がないので ココアを飲むためにわざわざ牛乳を買いに行くことになった コンビニで紙パック飲料のコーナーを見ているとオーツミルクのパックが目に入った 最近流行っているやつかと思った
どんなものか試してみたい気になって牛乳の他にそのオーツミルクの方も買ってみた 帰宅してオーツミルクを少し飲んでみると ほんのり甘みを感じて嫌な気はしなかった 普通に飲めるなという感じだった
その日の夜 せっかく開けたからという理由で数年ぶりのココアをこのオーツミルクで溶かして飲むことにした
結果 ココアはやっぱり... 牛乳だな
ココア自体が甘さ控えめなこともあって 数年前の記憶から期待した味ではなかった
次の夜には牛乳で溶かして飲んだ やっぱりこれだな 牛乳で溶かしたほろにがココアは 夜の勉強のお供にはちょうどよく思えた
牛乳は本来ミルクパンでじっくり温めるのがいいのだろうが ズボラなわたしとしては夜中に洗い物を増やすのは避けたい カップに注いだ牛乳を電子レンジに入れて できるだけ弱めの出力で温める そして温まった牛乳に適量のココアを入れてスプーンで混ぜていく 粉類を液体で溶かす場合 最初に少量の液体で少しづつ溶かしてから伸ばすと効率がいい 洗い物をケチってうまく溶けない粉に苦戦しながら 結局これが手間じゃん と冷静な自分が正論を投じた
実家にいた頃 家族が寝静まった夜に 寒さに身震いしながらキッチンに小さな明かりをつけて たびたび牛乳を温めたことを思い出す 実家にはミルクパンなんて小洒落た鍋はなかったから 使うのはもっぱら雪平鍋であった 勉強の合間に母が一度作ってくれたことがきっかけで 自分でやるようになったことだった
あの時間のことを考えていると 夜中に洗い物を増やす面倒さよりも ほんの数分の間勉強の手を止めて ただ鍋の中で牛乳が温まっていくのを眺めている時間の尊さが 今の自分に必要な気もしてくる
「手間」の多くは無駄とされ省かれていくけれども その「手間」にこそ生活の質が詰まっていたりするものだ
毎回は難しいとしても 時々自分の心が許すようなら その手間を楽しむ余裕を持ちたい
なんてことを考えながら 今夜もその手間を面倒に思い ダマになった粉を一生懸命混ぜているのだ
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