【Designship2020】で印象に残ったトークTOP3について語ってみた
こんにちは、デザイナーのkannaです。
今年で3回目の開催となる、日本最大級のデザインカンファレンスであるDesignshipに、今年も参加してきました。
コロナ下でも、デザイナーや関連業界の人々に学びの場を提供できるように、オンライン環境を整えて下さった広野さんをはじめ運営スタッフの皆様、本当にありがとうございました。
その想いを一人でも多くの人につなげていきたいので、このイベントに参加して何を学べるのか、私の解釈と合わせて少しご紹介しようと思います。
脱境界 | 齋藤 精一
株式会社ライゾマティクス 代表取締役
現在、2020年グッドデザイン賞審査委員副委員長、2020年ドバイ万博 日本館クリエイティブ・アドバイザー、2025年大阪・関西万博People’s Living Labクリエイター。(Designshipの紹介文より抜粋)
まず、はじめにインパクトが大きかったのは「非分野主義」という言葉でした。
プロダクトを進める上で各分野に境界線を設けるのではなく、できるだけお互いに横断するということが大切だという。
たとえば、今までマーケティングを見るのはマーケティングを専門にやってきた人だけだった。
でも、今のこの情報社会であれば、誰でも知識を得ようとおもえばできるようになってきた。
ならば、デザイナーがマーケティングに対して提案したり、逆にマーケティングからデザインに対して違う視点から意見するのもアリだよねということ。
仕事をしていると、この垣根を超えていかなくてはと思えることがよくあります。
例えば自分の場合…
・クライアントと直接コミュニケーションが取れない時(間にディレクターとか営業が入っている)
・ターゲットユーザーへの訴求方法がおかしいと思うけど、トップダウンだから上に意見できない時
・発言できる立場や地位にいないために何もできない時
こんなふうに、仕事の境界線があることにもどかしさを感じている人は、実は結構いるのではないだろうか。
でも、デザイナーこそ変えてゆける。
私たちは新しい社会を創造するために、業界、世代、立場や地位など全ての枠組みから脱していく必要があるのだと。
自分のテリトリー外の分野の知識を学び、それぞれが自分の領域を広げていくことで、プロダクトに関わる人たちが共鳴し合って、そこから新しい発想が生まれて、そしてそれが形となって新しい社会を形づくっていける、そんな未来が来たら凄く素敵だなと思う。
↓これは自分の解釈(一番下っ端からスタートするパターン)
個人:疑問があったら発し続ける
↓
自分の周りの人:少しずつ感化されて受け入れていく
↓
更にまわりの人:意識が伝染する
↓
企業:全体の半数以上になってくると意識変わってくる?
↓
企業の外:関連会社や情報発信により他の団体に浸透していく
↓
社会全体の認識が変わる
現状のやり方や人々の認識、環境を変えるのは簡単なことではありません。
でも、脱境界をするためにはみんなが共通の認識を持って日々行動し続けることが必要で、そうすることで未来は少しずつ、確実に変わっていくはず。
だから、諦めずに行動をし続けようと思う。
お話の中でSDGsという言葉が出てきて、初めて耳にする単語だったので、少し調べてみました。なんだか近代社会のテストで出そうなワード。
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。 SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
17個の目標のうち、1つ目が「貧困をなくそう」、2つ目が「飢餓をゼロに」となっており、とても高い目標設定になっていることに驚いた。
日本では「おてらおやつクラブ」という社会福祉活動があるそうで、お寺にお供えされるさまざまな「おそなえ」を、仏さまからの「おさがり」として頂戴し、子どもをサポートする支援団体の協力の下、経済的に困難な状況にあるご家庭へ「おすそわけ」している。
国内でも、未だに飢餓で苦しみ亡くなっている方がいるので、こうした活動が県や自治体で増えてくると素敵だと思うし、こういう仕組みを考えて提案するのもデザイナーが得意とする部分だし、社会貢献できる部分だなと思う。
デザインを続けるということ | 灰色 ハイジ
All Turtles デザイナー
サンフランシスコ在住。新潟県生まれ。スタートアップスタジオAll Turtlesのシニアデザイナーとして、デジタルプロダクトや、ブランドのデザインに従事。渡米後はフリーランスとしてブランディングやパッケージデザインなどへ領域を広げながら、現地のデザイナー養成所Tradecraftを経て現職。著書に『デザイナーの英語帳』がある。(Designshipの紹介文より抜粋)
今回、初めて灰色ハイジさんのお話を聴いたのですが、話し方がとても上手で、聴いているとまるで自分もその場にいたかのような錯覚に陥った。
彼女の体験したことや、その時の感情が流れ込んでくるような、そんな感じ。
歩んできた歴史と、その中でどんな壁にぶつかったのか、そして、それをどのように乗り越えてきたのかを語ってくれた。
普段、他のデザイナーさんの成長過程を直接言葉できけるチャンスは滅多にないので、とても参考になった。
特に印象深かったのは、サンフランシスコに移住したあとのお話。
旦那さんがサンフランシスコ在住で、せっかくなら現地で働いてみたいとおもって移住したが、現実は厳しく最初は無職だった。
英会話が全くできなかったので、まずはコミュニケーションができるようになることを目標に掲げた。
3ヶ月のデザイン訓練スクールTradecraftに入るが、言葉の意思疎通すらままならないのに難しい大量の英文の課題と向き合わなければならず、当初は毎晩泣いて過ごしていた。
どれだけ苦しかっただろうか。悔しかっただろうか。計り知れない苦しみだったに違いない。
デザインスクールではゲリラユーザビリティテストという課題があったそうで、5人1グループで課題の対象ペルソナがいそうな場所に出向いてアンケート実施するという内容だった。
カフェを1杯おごるのを謝礼としてアンケートに協力してもらうことが多いらしい。
これがアメリカンスタイルなのだろうか?
日本でこれをやったら、めっちゃ怪しい人認定されて通報されかねないかもしれないなと、私の頭はここで妄想の世界に入りかけた。
その他に、グループで現地のスタートアップのプロダクト改善を行ったりと実践的な取り組みが多い印象でした。
日本とはスタンスが全く違いますね。少子化の時代なのだから即戦力になる人材を育成するためにも、日本の専門学校や職業訓練所も実践的なプログラムにしていく必要があると思った。
もうひとつ、いいなと思ったのは、海外だとデザイナーの価値が高く見られるので、いろんな業界の人がデザインの訓練学校に学びに来るという点。
年齢や職種問わずというところはまさに越境した学びそのもの。
海外ではすでにそれが当たり前になっているということなのでしょう。
日本のそういった意識の遅れを痛感する。
ハイジさんは日々英語に苦しむ中である時、苦しんでいるのは自分だけじゃないということに気がついたという。
それは、英語は理解できてもデザインの知識や経験がまったくない他業界の人たちが、課題を上手く解決できないのに対して、自分はとくに苦を感じずに課題をクリアできていたことだった。
プロジェクトを進める上での優先順位付けや組み立て方などは、積み上げてきたいろんな仕事の経験があったからこそできるのだと、言葉が通じない環境にいったからこそ気づけた。
それに気づいてからは、自分の得意なことをチームのために使おうと思えるようになり、たくさん絵を描いてチームに知識を共有するように行動をした。
教えていると今度は質問もしやすくなり、結果的に双方win−winの関係性を築くことができた。
そしてこれらの体験を得て、最後に一番心に響いた言葉がきた。
リセットされたように感じても、積み上げてきたものは消えない
めっちゃくちゃ心に響いた…。
同じように、自分もいろんな職種を経験してきたが、毎回仕事が変わる度に知識がゼロに戻った気がしていた。
新しい会社に入ったら一から学び直しだと思っていた。デザイナーになる前は営業事務とか貿易事務をやっていた。デザインとは微塵も関連性がなかった。なんの役にもたたない経験をしていたと思っていた。
でも、フリーランスをやりはじめてから、昔やった簿記が役に立ったり、利益率の計算ができたりと思い返せば無駄じゃなかったんだなと、この話を聞いて改めてそう思えた。
「後悔しなくていいんだよ!」って言われたような気がした。
生きていれば困難にぶつかったり、不安になったり、どこへ向かえば良いのか分からなくなる時がある。
だけど、経験してきたこと一つ一つが自分でも気づいていないかもしれないけれど、確実に役に立っているんだと、ハイジさんのお話をきいて気付かされた。
今回お話して下さった内容が、下記のサイトでも紹介されていたので、ぜひ読んでみて欲しい。
「このデザインでいこう!」事業を推進する意思決定のやり方 | 宇野 雄
クックパッド株式会社VP of Design / デザイン戦略部 本部長 / UIデザイナー
多くは語りません。全てはこの記事↓を読んで頂ければOKです😉
資料に全てまとめてくださっているので、本当にいつも助かります!
「あったほうがいい」は いらない
これは、もう名言といってもいいと思います。
自分がぶち当たって、明確な答えを見いだせていなかったところをビシっと結論を出して、さらにそれを共有して下さるので本当にありがたい。
クックパッドのデザインは全てミッションから始める
他のセミナーなどでもよく原点に戻って考えるということを耳にしますが、実際にデザインを考える時に、普段とどう思考回路が異なるかまでは正直まだ分かっていません。
けれど、とても大事なことを言っているのだけは分かります。
ミッションから始めるとはどういうことなのかを考えながら、今後はデザインをしていこうと思います。
道筋がずれないように。
去年は「おせっかいなデザイン」というのに感銘を受けたのを覚えています。大変勉強になったので、そのときの記事も一応貼っておきます。
イベントのもう一つの楽しみ方
今年はONLINE開催ということもあり、今回はmiroというサービスを使って、イベント参加者達がおのおの思っていることや考えについて交流する場所を用意してくれました。
グラレコも描いて下さっている方が多く、分かりやすくまとめてくれています。参加者がコメントをつけれるので、他のデザイナーの考えも見れて新しい良い体験ができました。
デザイナーを目指す学生さんにとっても学びの場になるかと思うので、勇気を出してチラッと覗いてみて下さい。
リンクはこちら↓
【おまけ】イベントに参加したきっかけ小話
実はDesignshipの存在を知ったのは2019年の7月〜8月ごろ。
前職の職場の友人からその存在をきいて初めてその存在を知りました。
当初は参加をするかどうか、凄く悩みました。
理由はシンプル。
・どれだけ自分にとって有益になるか分からない
・家計に余裕がない(チケット料金が自分には高かった)
冒険をするか、しないか迷っていたとき、その友人から「絶対に参加する価値があると思うよ!」と言われて、参加を決意したのを今でも覚えています。
結果はというと、金額以上の価値がそこにはありました。
様々な企業やデザイナーの方々と出会い、学びや気づきを得ることができて、Twitterもたくさんフォローして、そこから派生したイベントにもいくようになって、自分の世界が一回り広がったように思えました。
毎年、違った発見や刺激があって本当に参加して良かったなと思えました。
参加するかどうか迷っている人がいるなら、ぜひ勇気を出して一歩踏み出して欲しい。きっと新しい出会いや刺激がそこにはあるから。
おわりに
昨年は「越境」、今年は「脱境界」というテーマでした。
今年は、コロナウイルスによって人間社会が大きく変化してきて、新しい生活スタイル、常識、考え方が生まれきています。
モノづくりに携わる私たちも、自ら率先して一歩踏み出さなければいけないなと強く感じました。
リードデザイナー方の強いメッセージを頂けたことに、このイベントに参加した意義はあると思います。
今回は3つのお話に絞って記事にしましたが、他にも良いお話がたくさんあります。11/1よりアーカイブ動画がリリースされるようなので、参加できなかった方や、デザイン業界に興味のある方も是非この機会に視聴してみて下さい。
<追記>
2020年11月8日にExtra Stage(オンライン参加無料)もあるようです。
気になる方は要チェックです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました🌼