鳥インフルエンザの殺処分現場から
今年もやってきましたね鳥インフルエンザ。
以前は4年に1回でるくらいな病気だったのに、最近は毎年のように発生するようになってしまっています。
1匹でも不審死の鳥を発見すると、鳥インフルかもしれないので検査を行い、その結果が陽性であれば、養鶏場の鶏を全て殺処分ということです。
公務員の時はどこかで不審死発見となると情報が回ってきて、もしかしたら対応に入るかもしれないということで、緊急シフトが組まれました。(殺処分を行っているのは基本全て公務員です。)
陽性だった場合はなるべく早く全てを処分したいので、夜中からでも何時でも検査結果がでたら、24時間体制で処分スタートです。
あまり一般の方に辛い現状が知られていないので、どんな様子か少しでも知っていただき、関心をもっていただければ幸いです。これ以上鳥インフルエンザが広がらないことを祈るばかりです。
なぜ殺処分する必要があるのか
鳥インフルエンザは人間のインフルエンザと違って、かかるとウイルスが全身に回って100%死亡してしまいます。養鶏場の中は見たことがある方はわかるかと思いますが、かなりかなり密です。人間でいう収容所のような状態なので、一匹なれば瞬く間に全部の鶏に広がり、全滅となってしまいます。
その養鶏場が全滅となることはまだしも、他の養鶏場にまで移ってはしまっては、その県の鶏、最悪の場合全国の鶏が一気に死んでしまうということになるので、”その養鶏所以上はインフルエンザによる影響を出さない”ために全羽殺処分して、焼却又は埋めるて拡散を防ぐということです。
殺処分にむかう格好
よくニュースで白い防護服を着た人たちがぞろぞろ活動している様子を観るかと思いますが、養鶏場に向かうバスの中から既にあの防護服を装着しています。
人間に鳥インフルエンザが移った試しは今のところないそうですが、移らない可能性が0なわけではないですし、移った場合どうなるのか分かりません。なので、素肌は極限まで出さず、全て使い捨ての格好で向かいます。
薄い防護服の上に、分厚い防護服を着る
防護服の前のシールを止めて、首元もシールでしっかり塞ぐ
長靴を履き、防護服とテープでつなぐ
手は2重にゴム手袋をはめて、防護服とテープでつなぐ
頭には髪の毛をまとめるネットを装着し、防護服のフードを2重に被る
医療用の硬いマスクを装着
目にはシュノーケリングで使用するようなゴーグルを装着
このように完全防備で養鶏場へと向かいます。全員が同じ格好をしているので、誰が誰だかわからないため、防護服に名前を書いています。
鳥インフルエンザの時期は基本的に真冬なので、寒い時は防護服の中にカイロを貼ったり、靴下を2重に履いたりしていました。特に夜中の活動の際は凍えます。途中で暑さ調節ができないので、要注意です。
殺処分工程
❶鶏をケージからだして、移動式ワゴンにのせて広いところへ運ぶ
❷大きい蓋つきのゴミ箱に何羽かいれて隙間からガスを入れる
❸数秒すると鶏がお亡くなりになり、それを小さい蓋つきの容器や段ボールに数えながら入れる
❹容器を広い場所に運び、穴に入れて埋める
書いているだけで悲しくなってきますが、ひたすらこれの繰り返しです。ケージ全体にガスをまいて、全部が亡くなっている状態の場合もあります。その時はひたすら容器に数えながら遺体を入れていく作業です。これを養鶏場の位置する都道府県の県職員が行っています。(事務職も技術職も全員です)
処分場の様子
心を鬼にした公務員たちがてきぱきと慣れた様子で作業をしています。慣れない服装で、かなり激しく動くことが多いので4時間ほどの作業でもかなり疲れます。
人によっては殺伐とした空気、慣れない作業、目を伏せたくなる現状に体調を崩す方や、ノイローゼになる方、一生鶏が食べれなくなる方もいます。
昼夜問わず、寒い中、雨でも雪でも行わなくてはなりません。鳥の鳴き叫ぶ声がずっと鳴り響いています。遺体であふれかえり、すごい異臭を発している場所もあります。
鳥を家で飼われている方や、愛好家の方には死んでもできない作業かと思います。必ず申告して殺処分ではない作業をさせてもらってください。
殺処分以外の作業
殺処分するだけが、活動ではなくそれに伴った様々な作業があります。
❶殺処分が全て終わった空っぽのケージにおいて、餌や卵の回収
❷活動する方々の着替えの準備や手伝い
❸行き来する車やフォークリフトの交通整備
❹養鶏場に出入りする車の消毒
この辺であれば、そこまでメンタルをやられなくて済むかもしれません。心と相談して、活動を選べるようであれば選ぶことをお勧めします。
なぜ入ってきてしまうのか
養鶏場を経営されている方々もかなりインフルエンザには注意をはらって普段からもちこまない、もちこませないで対応をされているにも関わらず、発生が止まりません。
聞いた話ではありますが、持ち込んでくるのは動物が多いそうです。ねずみや野鳥などが忍び込みウイルスを運ぶのだとか。残念なことに殺処分を行っているその時に足元にねずみがいたり、一歩ケージからでるとカラスがいたりしたこともありました。
空を塞ぐことはできませんし、小さな穴をすべて塞ぐことも難しいのかもしれませんが、どうにかならないものかと心から思います。
活動されるかたへ
その都道府県の鶏を守るための大事な活動ではありますが、ご自身の体調が一番です。一生の傷を負わないように、心を守りながら活動されてください。これから寒い日が続きます。どうかお気をつけください。