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環境大善のブランディング裏話 「私のデザイン経営 強くて愛されるブランドをつくる人々 No.7 特別編」

※この記事は2021年10月4日に行われたオンライントークイベント「私のデザイン経営 強くて愛されるブランドをつくる人々」にて放送された内容をもとに編集しています。

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青山:これまでの「私のデザイン経営」は経営者さんやデザイン経営に携わっている方、窪之内社長が感化された方をゲストにお招きしてきたのですが、今回はちょっと違うんですよね。

窪之内:なぜ特別編をやろうという話になったかというと、ずっと仕込んでいた商品のリニューアル第一弾がやっと終わって今日(※2021年10月4日)発売という運びになりましたが、ここに来るまで3年半かかってるんですよ。お客様や仕入れ先さんから「なんでそんな時間かかったの?」っていう話をいただいたので、ここまでの経緯を時系列に沿ってお話しすることで、これからリブランディングや新しく商品を作ろうという方の参考になれば幸いかなと思い、この企画をしてみました。

鎌田:私自身、ブランディングって実際何やってるのってすごく聞かれるんですけど、お医者さんに行って診断結果が一人ひとり違うようにブランディングも全部違うんですよね。一概に言えないので深く語ることってあまりないんですけど、今日は環境大善さんにスポットを当ててあんなことやこんなことをいろいろ話せたらなと思います。

青山:では年表みたいな感じで今日はひとつずつ振り返っていきましょうか。

リニューアルパッケージが生まれるまで

窪之内:牛の尿を特殊なやり方で発酵培養して出来上がった液体にいろんな有用な物質が含まれていて、それが臭いのもとに効くという商品が『きえ〜る』なんですよ。良い匂いは消さず嫌な臭いだけ消す、特にアンモニアや腐敗臭にてきめんに効果があるのが特徴で、なかなか消えない臭いが消えるということでネーミングに由来するんですが、最近は幅広く使っていただけるケースが増えたなと思っています。
今回発売したSシリーズ・Dシリーズ・Hシリーズっていうのはそれぞれセグメント分けしていて、Sは百貨店や専門店、Dはバラエティショップや雑貨店、Hはホームセンターが筆頭になります。SとDはインテリアとしても映えるように、Hは年齢の高い方にも愛着を持って使っていただけるようなデザインに、鎌田さんをはじめKDの皆さんが仕上げてくれて、完成したのがこの3ラインになります。
Sシリーズにはサステナブルやスペシャルって意味があるんですが、ボトルにバイオマスの素材を使ってまして、環境への配慮を今後どんどんやっていくっていう意志の表れでもあるんですよ。環境対応の商品のフラッグシップ的な位置づけですね。
Dシリーズは今まであったUシリーズの後継に当たります。『トイレ用』っていう新商品を出してみたり新たなチャレンジをして市場を開拓していくっていう意味で、よりデザインを追求したモデルになっています。
Hシリーズはホームセンターに置いていた『きえ〜る』の後継品という形で、親しみやすかったり温かみのあるデザインに仕上げていただきました。

鎌田:デザインの詳細は後半の方でお話ししましょう。

青山:では、これらが生まれるまでの経緯をお話ししていきましょう。

窪之内:以前からパッケージのリニューアルはやらなきゃダメだろうと考えていて、いろんなデザイナーさんやパッケージをやっているところのお話を聞いたときに、「他にないユニークな商品なので、デザインを良くしたら確実に売れる」ということを言われたんですが、それだけではダメだということを感じてたんですね。しっかりビジョンを建て付けしてやらなきゃダメだろうなって思ってたんですけど、なかなか踏ん切りがつかなかったんですよ。
で、鎌田さんに会った時に「窪之内さんの言いたいことは社員の方々に伝わってるんでしょうか」って言われたんですよ。この人おもしろいなと思ったら、一発目に言われたのが「私とやるんだったら3年は時間をみてくれ」って。

鎌田:ビジョンがしっかりと企業のロゴなどに反映されてないと効果が期待できません。パッケージはそこと密接に結び付いているものなので、パッケージだけ変えて多少は売れるようになっても次に繋がっていかないかなっていう話をさせていただいたんだと思います。
3年間の中でゴールに向かって何かやるときに全部成功するわけじゃなくて、ちょっと良くなかったから直そうとかもっとこうしたらいいんじゃないかって意見が当然出てくるんですけど、微調整しながら進めていくにはやっぱりそれぐらいの期間が必要で。
今回3年半かかったのは、半年はコロナで余計な時間がかかってしまったっていうのはあります。それを承諾していただけたのでじっくり腰を据えてやれたっていうのはありますね。最初の依頼はブランディングとかではなく、『きえ〜る』のデザインをやってくださいっていうことでした。

青山:作業としてデザインから入ったわけではないですよね?

窪之内:『きえ〜る』ってその段階で研究開発を進めてなかったんで、まだ何者かっていうのがぜんぜんわかってなかったんですよ。効くけど、安全性も高いけど、なぜ効くのかということがきちんと発信ができる状態じゃなかったので、事業承継をやるんだったらブランディングと研究開発を両翼でやっていかなきゃいけないよねっていう発想だったんですよ。

青山:そして「急がば回れ」ということで、新企業理念「発酵経営®」を作ったと。

窪之内:これって私が社長になるタイミングでやったはずなんですよ。

鎌田:デザインを行う前の段階が重要ということです。クライアントに言われたままデザインを始めてしまうと、すべきことと別のことをやっちゃう可能性があって。まずしっかりとお客さんにお話を聞いて、環境大善さんの場合は決算書も見せていただけたのでしっかりと時間が取れたんですよね。
創業者の窪之内会長にお会いしていろいろお話も聞いたんですけど、これは社長と全然性格が違うなって思ったんですよ。だから社長のお考えを社内にしっかり周知しないと、最終的にパッケージデザインを作ったときにもどういう思いで作ったかわかんない、商品が社内で愛されてないって変な状況が生まれちゃうんで「理念っていうのはおありなんですか?」みたいなところから話していった感じですね。

青山:窪之内社長からすれば「どうして決算書?」ってなりませんでしたか?

窪之内:それはあんまり思わなくて。中川政七商店の中川会長の本を読んだ時に、きっちりビジョンを立てたりブランディングしていく中で、いくら予算が使えて、やりきった後にどれくらい利益が出てくるのかってとこまで見ないとなかなか効果が出たってことにならないと書いてあって。
継続的に企業として動いていくためにデザインしたものをちゃんと世の中に伝わるようにしようって部分でいくと、手に取ってお金を支払っていただけるような商品を作り上げなきゃいけないよってところがあったので、決算書を見ていただくことに抵抗はなかったです。
お互いのコンディションをしっかり整えてから進めた方がいいなっていうのがあって、そういうふうになりましたね。

鎌田:決算書を見せていただく理由として、見るといろんな側面から企業の在り方が見えてくるんですけども、実際3年かかるって言ったものの本当に3年かけてやれるのかっていうのがあるんですよ。要はお金なかったらもっと早く成果を出さなければいけないですよね。
環境大善さんがお金持ちって話をしてるんじゃなくて、利益の出方とかを見て「この会社だったら3年かけても大丈夫だな」って思ったんですよ。今の商品でも利益がしっかり出せていて、一番良いタイミングで商品が出せるなって思いました。それは決算書を見せていただかないとわからない部分ですね。
あとは費用対効果です。今、社長の背景に新聞広告を貼ってもらってますけど、広告を出せる企業の体力があるのか、それにふさわしい費用対効果を生まなきゃいけない。そういったところも決算書を見せていただくとイメージできるし、提案しやすいですよね。

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窪之内:それから半年くらいは鎌田さんと僕とで一対一でこの会社をどうしていきたいだとか、そういうヒアリングを毎月定例で一回やって、いつになったらデザインが出てくるのかなって思ったら、まず従業員の皆さんに対して社長に就任する際に渡す理念や考えが載った書類を作りましょうってことになって、出来上がったのがこれなんですよ。

青山:『環境ダイゼンの考え』ですね。

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窪之内:僕が会社に後継として入って、社員は「こいつはどこに向かって走るんだ」って思うじゃないですか。僕も言葉でしゃべることはできるけど、立ち返るときにこういう冊子があると社員も「何をこの会社はこれからやっていくんだろう」ってことがわかるよって提案をいただいて、これを「従業員の皆さまへ」ってことで作って渡しました。

青山:同じベクトルを向くための材料を鎌田さんは一緒に作ってくれた感じですよね。

窪之内:そうですね。そして次の年に作ったのが『経営指針の書』です。さっきの『環境ダイゼンの考え』がアップデートされたもので、お客さんとの約束はブランドプロミスという形で作って「環境大善は北見の善玉活性水ブランドです」ってことが書いてある。

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青山:『善玉活性水』っていう言葉そのものは実際なかったですよね。私もCMに出るに当たって窪之内会長から『きえ〜る』ってこういうものなんだってお話をお聞きして、「本物だ、大丈夫だ」ってなったんですけど、なんて言っていいかわからない。
とにかく牛の尿からすごくいいものができて、それが消臭液になってるんですよと紹介するしかなかった。それが『善玉活性水』っていうたった五文字で表せられたっていうのは画期的だったんじゃないかなって思うんですけど。

窪之内:その通りで、鎌田さんのやり方で素晴らしいなと思うのはすごく伏線を張ってそれを回収していくところなんですよ。もともと『善玉活性水』という言葉はないです。造語です。牛の尿を善玉菌で分解した特別な液体で『善玉活性水』っていう造語が周知されていくと、環境大善という社名や『発酵』『善玉菌』なんかがすべて絡んでくるので、我々にもお客様にも納得感が出る。青山さんも言ったように怪しさとかが出なくなるようにしていきたいなって私たちは思って作ってます。

青山:鎌田さんはこのネーミング、いつぐらいにピンときたんですか?

鎌田:一番最初に窪之内社長がいらっしゃって説明していただいたときに「牛の尿からできてるんですよ」ってちょっと後ろめたい感じでお話になられてたのが印象に残ってて、私はそれがすごくかっこいいなと思ったんですよ。天然成分100%ですし。世の中的に3年前はサステナブルって言葉はメジャーではなかったですけど、これは時代が追い付いたら、強いことなんじゃないかなって思ったんですよね。『きえ〜る』って社名にしちゃえばいいくらいに最初は思いました。
いろいろ話していくうちに、『善玉活性水』から『きえ〜る』や『土いきかえる』という土壌改良材を作ってたり水質改善の商品があったり、土・水・空気っていう地球そのものの環境を良くしちゃうような商品を作ってるブランドっていうのが炙り出されてきたんですよね。それは会社自体に強みがあると考えて、『環境ダイゼン』って社名を前面に出した方がいいと思いました。また、そこから導き出されたパッケージデザインとなっていた方が、社会に出したときに強いと思って。
ブランディングって要は伝えるってことなんですよね。言いたいことを、もしくは価値を正確に伝える。それこそがブランディングなんですけど、めちゃめちゃ説明しなきゃいけないことを、一言で言える名前を考えようと思って出てきたのが、そのまま「善玉を活性させる水」。あんまり悩まなかったですけどね。

青山:これを聞いた瞬間、鎌田さん神だなって思いました(笑)。続いて思い切った社名変更ということで『環境大善』が誕生しましたね。

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窪之内:企業ロゴを善玉菌の大善君って私たちは言ってるんですけど、ご提案いただいたのは2案だったんだよね。だけど全会一致でこっちになったんですよ。鎌田さんとロゴの提案の前にタイガー魔法瓶のタイガーくんとかああいうマークって愛着あるよねって話をしてて、うちの会長ってすごくおとぼけキャラでいろんな人に助けられて今まで来たじゃないですか。私はどっちかというとステップ踏んできっちりやりたい派なんですよ。これバランス取るにはこういう抜け感がないとダメだなってことで、こっちしかないと思って。コーポレートスローガン(地球の健康を見つめる)にこのロゴが絡んでるっていうのも僕たちとしては一本筋が通っていた。

青山:『ダイゼン』ってカタカナだったところを、漢字の『大善』にしたのはどんな意図があったんですか?

鎌田:ブランディングをするに当たってデザインと同じくらい重要視してるのが名前なんですよね。企業のミッションやビジョンとかをぎゅっと凝縮してひとつの名前にすることによって伝達力がぐっと強くなる。善玉菌を増やすってことが地球を良くしていく、企業のやりたいことなので「大きい善」という表現が最適だと思いました。この企業名だったらみんな好きになるんじゃないかってことから、思い切って社名の変更を提案しました。

窪之内:清松さんっていうコピーライターが書いてくれた「地球の健康を見つめる」っていうのが会社のコーポレートスローガンになっていて、研究所を作るとか、今足りないことを足していったり、やらないことを決めたりっていうのは、このコーポレートスローガンと、理念である「発酵経営®」っていうのに沿ってやると。やることがすごくシンプルになったので、これは良い決断だったなって思いますね。

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そこから社内のインナーブランディングをもっとしっかりやろうってことになりました。「地球の健康を見つめていくのが環境大善の考えてることです」みたいな話になってくると、スタッフも徐々にそういう方向に向いていくわけですよ。マーケティングであれば、なぜこの液を販売するのかっていうと、僕らは牛の尿をたくさん処理して善玉活性水に変えられる、価値のあるものに変えられると。それを販売することで消費者と一緒になって牛の尿を処理することができる。それを拡大していけば自然と地球の健康は良くなるよねと。創業期に「公害のもとが公害を制す」というキャッチフレーズを使っていたのですが、それができるようになるってことで、社内はだんだんまとまっていったんですね。
会社名を変えることで請求書とか納品書までデザインを入れてもらって、もともとはありきたりなものだったんですけどフォントも統一して、とっても見やすくなったと思います。領収書も遊び心のある感じで。スタッフの審美眼を養うという意味で、インナーブランディングは大事だなって思いますね。

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鎌田:書体は一貫してパッケージにも同じものが使われていますね。請求書とかデザインしてデザイナーの自己満足じゃないかみたいに言われたりもするんですけど、これけっこう意味があって、経理のスタッフは毎日これを見て過ごしている。それが前より素敵になったなって思うだけで、モノを見る解像度が上がってくる。それがお客さんへの接客にも関係してくるようになる。そういう相乗効果を狙って、様々なアイテムをデザインしています。

青山:続いては『環境大善の考え』という冊子についてですが…。

窪之内:これはお客様向けの資料なんです。さっきの『環境ダイゼンの考え』のバージョンアップ版で、社員手帳である『経営指針の書』に載ってるものからお客様や関係先にお渡ししてもいいものだけ抜粋してここに書いてあります。「発酵経営®」やブランドプロミスがあり、シンボルマークのコンセプトをご説明して、『善玉活性水』をここで定義してるんですよね。「善玉菌を増やし、悪玉菌を減らす。この液を善玉活性水(TM)とする」と。これは知財戦略も同時に打っていて、『善玉活性水』も商標取ってるんですよ。『環境大善』でも取ってるし、うちで作ってる造語だとか日々使う言葉に関しては最大限の努力をして商標を取りにいってます。
あとは『アップサイクル型循環システム』の仕組みついて説明しています。牛の尿を微生物分解し、それを特殊なやり方で消臭液や土壌改良材にして大地に還していったり、臭いのもとに振りかけて消臭することで地球の健康に貢献するってことを皆さんと一緒にやっていくための仕組みです。牛の尿に大きく価値を付けて地球に還していくための仕組みとして、これをやり続けるには地球の健康を探求する場が必要じゃないか?ということになり、『土、水、空気研究所』を立ち上げました。研究所では、そうして見つけた課題の解決策を探したり、善玉活性水の効果・効能を明らかにして、困っている方にお届けすることを環境大善としてのミッションとしています。

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青山:そしてデザイン経営をテーマに、オンライン番組『私のデザイン経営』がスタート。いろんな方に出ていただきましたが、デザインをひとつの軸としておきながらも経営にまつわる話をしていくっていうのは勉強になったというお声をたくさんいただきました。3年目というタイミングでの番組企画も珍しいと思うのですが、始めから考えていたんですか?

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窪之内:本当は、会社名の変更のタイミングでお披露目会みたいなのを計画していたんですけど新型コロナウイルス感染拡大の影響でできなくなり。だけど僕たちがやってることを何かの形でお伝えできたらいいよねってことで「プロセスを一回話してみたらどうですか、ゲストを呼んで」という鎌田さんのご提案から、6回目まで続いたのがこの番組です。

鎌田:発表会がダメになった時に考えたことなんですけど、要はロゴの宣伝なんですよね。新しくロゴが変わったことを世に知らしめるために企画しました。オンライン番組もひとつのメディアと捉えて、2ヶ月にいっぺんくらいやれば1年間、環境大善のロゴが変わったことを言い続けられるなと。ロゴって変わっちゃったらそこからニュースに載らなくなっちゃって、それだともったいないなということで発想しました。

窪之内:ゲストがめちゃ豪華で、毎回大変勉強になりましたね。それからこの番組と並行して、新聞広告を打ったんですよね。掲載日をオンライン番組の日に全部ぶつけるっていう、制作的には滅茶苦茶大変なスケジュールで(笑)。

鎌田:2ヶ月に一回、打ちましたね。大善さんは『きえ〜る』がメインの商品なので『きえ〜る』のパンフレットとか資料はいっぱいありました。でもちゃんと会社に目を向けると土壌改善だったり農業に貢献したり、水質汚染にも貢献できる能力を持っていたり、空気だってきれいにしちゃう。そういう企業ビジョン、ミッションを持っている会社なのに『きえ〜る』のことしか発信したことがなかったんです。なので企業の取り組みの全てをしっかりと言葉にして、整理して、世の中にちゃんと打っておくってことがパッケージをリニューアルした時に繋がっていくかなってすごく思って。新聞はたくさん文字があっても許される媒体なので、ちょっと多めに語ってる6回の広告でしたね。

リニューアルデザインについて

鎌田:そして、パッケージが完成しました。Sシリーズはサステナブルやスペシャルの意味があるってお話しでしたが、このボトルには仕掛けがあって、シュリンクを剥がすと「地球の健康を見つめる」ってコピーの英語版が出てくるんです。遠くから見たらほとんど真っ白なボトルで、ボトル自体に質感の上質なものを選んでいるので、詰め替えボトルとして使っていただく仕様になっています。要は『きえ〜る』って書いてあるパッケージは宣伝用なんです。お店の中では『きえ〜る』を見つけてもらわないといけないんですが、家に持って帰ったときにそれが嫌な人っていると思うんですよ。そういう人が使い捨てしなくていいような配慮をしているのがSシリーズです。

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青山:確かに私も剥がしちゃう。

鎌田:剥がしていただくと艶消しの石膏みたいな質感のボトルが現れるので、お部屋に置いても邪魔にならないかなと。次はDシリーズですね。Dっていうのは大善のDです。環境大善の中心になっているシリーズっていう意味が込められています。イラストは、人がいたような気配を感じさせる、人がいないビジュアルです。

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青山:『室内用』だったらカーテンがひらひらってしてるから誰かがいたんだろうなとか、『洗濯用』はシャツが干してあって誰かいたのかなって。

窪之内:すごく統一感があります。色も鮮やかで見やすい。

鎌田:鮮やかに感じるんですけど、例えば『室内用』は黄色しか部分的に使ってないんですね。だから店頭ではカラフルに感じるんですけど家に帰ったらあんまり色がなくて部屋になじむみたいな、そういう意味でインテリアになじむことを意図して作ってるシリーズですね。『洗濯用』は水色しか使ってないんで。店頭でそれぞれが並ぶと色がけっこうあるように見えます。
最後はHシリーズですね。主にホームセンターに置かれるシリーズなんで他社の商品との争いが激しいですよね。なので少し色も多めに使っています。Dシリーズとの違いは、人が登場してきてちょっとハートフルな世界が描かれている点です。変わった色使いをしていて、例えば『毎日の介護用』は、普通は蛍光イエローのお布団では寝ないんですけど、使わないような色をあえて使ってるんです。色数は少ないんですけど店頭ですごく色が多く感じるのは、ちょっと変わった色使いをしているからです。説明するのが難しいんですけど。

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窪之内:Hシリーズはもともとお取り扱いいただいてるお客様やご使用いただいている方が多いなかで、非常に評価いただいてるんですよ。棚に並べると壮観で、めっちゃ世界観が出る。

鎌田:ちょっとツッコミどころ満載の、よく見るとかわいいシリーズです。

青山:ブレーメンの音楽隊みたいなやつもありますよね。

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窪之内:あるある、『ペット用』ね。

鎌田:黄色い魚の上に、ウサギが乗ってます。イラストレーターの小川さんのユーモアがすごい炸裂しています。

青山:かわいい!新聞広告のイラストと同じ方なんですか?だから統一感があるんですね。

窪之内:新聞広告は線画だから無機質な感じだけど、パッケージもこのテイストで来たらどうなるんだろう、全部モノトーンでいくのかなって思っていたら、ぜんぜん違った。

鎌田:売る場所によって、色の出し加減を調整することをすごく考えています。地味なものを置いても目立たないというのは確かに間違いないので、あえてそこは全面的に色を使っていく。ただ、一色ずつ抜き出したらけっこう渋い色なんです。大人っぽい色を使っているので、子どもっぽくは感じないかなと思います。

窪之内:今まで半透明だったボトルも、元々この液体は光があまり得意ではなくて、技術を磨いてまったく問題ないようにできていたのですが、なるべくなら光に当てない方がいいねということで白のボトルに統一したんですよ。中身が見えないって声も絶対出ると思ったんですが、そこは品質と性能を担保するということで覚悟を決めて白にした。これが非常に良くて、清潔に見えるというかすっきり見えるようになったなと。ゼリーのボトルやスプレータイプも半透明だったんですが、白に統一しました。去年、コロナ禍で資材の調達が非常に難しかったんですよ。鎌田さんとも相談して、新商品は一般的に手に入りやすい資材をデザインワークできっちり伝わるように作り上げるっていうのが環境大善とクリエイティブチームの中での至上命題で。一般的に手に入る資材なんだけど、きっちりデザインしていけばこれだけ僕らも納得できて、お客様からも見やすくなったとかいいねと言っていただけるものができるんだという感じですよね。

青山:デザインの目的について、単純におしゃれにするのではないということですが…。

鎌田:デザインをご提案差し上げる時って皆さんおしゃれになったりかっこよくなったりを期待されてると思うんですけど、そこを判断基準にしてしまうと危険です。情報がちゃんと伝わってるかなとか、パッと見で見つけられるかなとか、商品のアイデンティティがしっかりと表現できているか、がとっても重要であることをご説明しています。“効きそう”とか“安全そう”ってことが担保できてると結果的にデザインがいいものになっていきます。

窪之内:これが一番のテーマだったかもしれませんね、ちゃんと効きそうだっていう。青山さんも言ってたけど怪しいっていうのがあるじゃないですか、様々なものに効いてしまうと。そこを整理するようなパッケージにしてもらいました。理にかなったパッケージデザインなんですよ。

鎌田:今日はご提案資料をお見せします。例えば、「こんなデザインになります」って言って、パッケージだけをポンとお見せして、提案を終えてもいいとは思うんですけど、お金をいただいてデザインしているので、もし自分が「なんかかっこいいから良くなりますよ」って感じで説明を受けたら「本当かな?」って思うじゃないですか。細かい部分ひとつ取ってもなんでこうなってるかって説明してほしいって私だったら思うので、丁寧にご説明するようにしています。ですので、必ず提案資料を付けるようにしています。
こっちは商品ラインナップの呼び名をご提案したときの資料ですね。ちょっとブランディング裏話をすると、未来に向けてパッケージとか企業ロゴを作ってるんですけど、現実問題として、今ちゃんと儲けを出さなきゃいけないっていうのも目の前にあるわけじゃないですか。それがないと3年後に繋がっていかないので、新商品が出ることになったらどんな名前にするかなど、現状の細かい監修なんかもブランディングと同時進行でやっています。最終的に全て繋がってくるので、それはブランディングにとっても重要なことだと考えています。

青山:『KIE〜RU』がひらがな表示になりました。今までローマ字だった商品名をひらがなでポンと見せる、これがすごくわかりやすくなったなと思います。

鎌田:旧Uシリーズは商品名がアルファベットでしたもんね。例え話ですがハンドソープのデザインと言ったら『キレイキレイ』を真っ先に思い浮かべる人ってけっこういると思うんですけど、あのパッケージって最強だなと思って。キレイキレイって二回言ってて、これで必要なことは全て伝えている。ハンドソープって手をきれいにするために使うものなので、この名前にプラスしてとっても安心するようなイラストが付いてる、そこだけで全部説明できちゃってるっていう構造が強いなと思った時に、『きえ〜る』も同じことができると思いました。消えるってことが商品名になってるってめちゃくちゃ強いなと。なのでアルファベットにしたら弱いなって思ったものですから、ひらがなに戻しました。構図は同じなんですよ。『きえ〜る』っていう名前がポンとあって、そこにちょっとだけ説明があって、あと信頼できそうな絵が付いてる。そういうことにすれば商品のポテンシャルが伝わるんじゃないかなと。

青山:あとなんで『きえ〜る』は「〜」なんでしょう?

窪之内:もともと真っすぐだったのは意味があって、ネットでハッシュタグとか打つ時に「〜」って引っかかりにくいので「ー」にしてたんですよね。だけど関西のTV番組で『なるみ・岡村の過ぎるTV』っていう番組に取り上げていただいた時になるみさんが「きえ〜るきえ〜る」ってひたすら「〜」を手で表現しながら言ってて、これはひとつのアイデンティティじゃないかって話になったんですよ。ハッシュタグでネットの認知を取るのか、それとも商品名できっちり取ってくのかっていう時に「〜」はシンボルだということになって、こっちを採用しました。

鎌田:真っすぐの方がシュッとされてるなって思うんだけど、ツッコミポイントっていうんですかね。そういうのがあった方がブランドとしては心くすぐるっていうか。『きえ〜る』って言ってしまいたくなるような部分を残した方がおもしろいと考えました。

窪之内:『きえ〜る』を使うにしても、基本的に「きえる」って標準文字だから商標が取りにくい。でもうちの弁護士さん・弁理士さんチームにお願いして、3年くらいかかりましたけど『きえ〜る』で商標が取れて、リニューアルにギリギリ間に合った。かかった時間に驚いたけど、これぐらいなかったら無理なんだなと今だったら思います。あとこれも触れておかないといけないね。

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鎌田:パッケージの裏面に用途が絵で表現されてるんですけど、この商品って説明しなきゃいけないことがいっぱいあるんですよ。だけど説明書って読みたくないじゃないですか。見てわかるようになんなきゃいけないな、一番大きい文字とアイコンだけ見たらだいたいわかっちゃうみたいな構造にしたいなと思って、このアイコン一個一個のデザインをシンボルマーク一個作るぐらいの気合いで作りました。全部で80個ぐらいあるんですかね、うちのデザイナーがくる日もくる日も作っていました。

窪之内:これ、バイヤーさんからものすごくお褒めの言葉をいただいたんですよ。こうやってやらなきゃわかんないよねっておっしゃっていただいて、実際僕らもそうだと思いますね。非常にありがたいなと。

青山:パッと見てわかりますもんね。ここまでデザインの話をお伺いしてきましたけど、最後に今後の大善はどんな風に進んでいくと思われますか。

鎌田:一家に一台『きえ〜る』があるみたいに、家に必ず環境大善の商品があればいいなという思いでここまでやってきましたので、それが実現できればと本気で思います。

青山:窪之内社長からは今後の大善の展望についてお願いします。

窪之内:会長の代から継いできて、良い商品を作ることは勿論、お客様に愛され続ける商品になるために、機能的価値と情緒的価値の両面を整理してお伝えすることを考え続けてきた3年半でした。実はリニューアル第二弾、第三弾って待ち構えてるんですよ。様々な企業さんと商品のコラボも始まりますし、あっと言うような商品の開発も進めていますので、ぜひお楽しみにしていただけるとありがたいなと。今日からやっと販売が始まってどんどんお店にこれから並んでいきますし、まだまだ取り扱い店が増えていく予定なので、楽しみにしていただければと思います。


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