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30代半ばからでも夢は叶えられるのか

10年銀行で勤めていたときは、やりたいことなんで考えないようにしていた。そもそも、趣味ですら新しいことを始めても続かないくらい毎日結構な密度で働いていたし、副業がばれたら本当にクビだった。

「目先の楽しみや利益よりも、来月の家賃と明日の飯を食える給料の方が大事」そう思っていた。だから、目の前の仕事しかみない。何年もそういう意識でいるうちに、次第に人生=銀行での仕事やキャリアになっていった。

「縛られるものが何もないな。何でもやろうと思えばできるじゃん」

つい最近感じたことだ。今はベンチャーで経営企画をしつつ、ヨガインストラクターの仕事もしている。出勤時間も自由、副業もOK。金融機関勤務時代のような厳しい社則もない。10年真面目に働いて培ったスキルや仕事への向き合い方のお陰で、仕事も余裕を持ってできている。

忙しかったときは、目を向けることすらしなかった、やりたかったこと。心のゆとりと時間を得てみると、これまでずっとやりたかったけど、先送りにしていたことが浮かび上がってきた。

だけどいつもそこで不安が過ぎる。「もうこの歳だし、可能性がないのではないか」と。

そんな中で、現在の職場の女性の先輩でデザイナーとしてフリーランスで活動している先輩に働き方について相談している中でこんなエピソードを耳にする。

「全く違う業界でプロジェクトマネージャーをしていた女性が、40代後半で一発記念してキャリアコンサルタントになった人がいる。やろうと思えば何歳からでもできるよ」

本当にそうなのか?得意のネット検索が始まった。アンテナを立てた瞬間、私を勇気づけてくれるような本といくつかの記事に行き当たった。

松尾たいこ「35歳わたしが輝くために捨てるもの」 (かんき出版)

イラストレータの松尾たいこさんの本。松尾さんは32歳で勤務していた広島の自動車会社を辞め上京し、35歳でイラストレーターとしてデビューされた経歴の持ち主。ちょうど私と同じ年齢の頃からスタートした仕事。彼女が今に至るまでに大切にしてきもの、手放したことについて書かれている。

面白かったのは、「ブレない信仰心を捨てる」ということ。最初に読んだときは、「え!ブレない自分じゃなくていいの!?」と感じた。しかし、よくよく読んでみると、こだわりすぎずに軽やかに考えや見方を変えることを受け入れられるようにする心持ちをするとうことだ。なるほど、だから人はいつからでも変われる、ということなのか。

「夢は困難の衣を着て近づいてくる」 書家 紫舟(Forbes Japan.com)

Forbes Japanの記事から。こちらは書家の紫舟さん。紫舟さんも20代でアパレルメーカーを辞め、書道の道に入ったそうだ。しかし、進んでいく中で、全くもって夢を叶えることが楽しくなかったとうことだったそうだ。

「夢が一層近づいているときこそ困難や苦難の姿をしているので、日々、困難のオンパレードになる。もし夢がそういうものだと知っていれば、あきらめずに、逃げずに、たとえ困難を解決できないにしても、立ち向かうことはできるのではないか。今となっては、そう思います。
夢を叶えることは楽しいことだと、ついつい思ってしまいますが、全然そうではなかった。夢とは、ジャンプしても手が届かないくらいのもので、叶えるのに困難があって当然。私は、夢が叶ったときも自分ではわからなくて、後ですべての問題が綺麗に片付いたときに、『ああ、夢を叶えたのだな』『あれ、夢を叶えるってこういうことなのか」と、やっと気づいたくらいで」

現在ではルーブルで開かれるフランス国民美術協会サロン展に、2015年に毎年世界で一人しか招待されない「主賓招待アーティスト」に選ばれるほどの成果だ。歴史の教科書で知られる横山大観以来だそうだ。

生命を燃やす創作家たちと世界を結ぶ──それが画家の家庭に生を享けた僕の宿命(Forbs Japan Career.com)

求人広告で見つけた記事だ。こちらの記事の陶芸家・市川透さんも35歳から陶芸の道に入った異色のキャリア。近所の陶芸教室で初めて土に触れてから、奥様を説得し1年半かけて師匠に弟子入りし、無償奉仕から修行を始めたそうだ。最長10年かかる修行を3年で行い、現在では個展が大盛況となっているそうだ。陶芸を始めたきっかけのコメントが印象的だった。

「土を触った瞬間、土の呼吸を感じたんです。生き物を触ってるような感覚で、色んな形に自分でしていくうちに、命の形が変わっていくような。衝撃でした。これを仕事にしよう、本気でやろうと心に決めて、すぐに家族に話しました」

表参道でインテリアショップ「ブランマリクロ」をオープンさせた女性2人の「40代からの夢の叶え方」。(NikkeiLUXE)

こちらの記事の関屋さん、くぼさんは、「ブランマリク」というイタリアのブランドを日本で展開させたい、という夢を40代叶えた方々だ。単身でイタリアに渡りブランドに猛アタックし業務提携を結ぶまでに至ったり、熱心な説明からビジネスパートナーを結ぶに至り、ショップを共同経営するに至ったそうだ。インタビュー記事の最後の言葉が印象的だった。

私たち2人の共通点は、フットワークの軽さだと思います。そして何でも「とりあえずやってみないとわからない」というポリシー。考えるより先に行動に移しているから、後から振り返ると夢が叶っていた、という感じです。とはいえ、じっくり考え込んでしまうときももちろんありますが、考えても、結局はマイナスな面ばかりが頭に浮かんでくることが多い。「でも、あれをするにはもう年齢的にアウトだ」とか「でも、資金がない」とか……。なんでも“でも”を頭につけて考えてしまう。その“でも”が積もり積もると、女性は慎重になりすぎてしまって、先に進む勇気を失うことが多いと思うんです。だから、何かをやりたいと思ったら、まず動いてみる、そして試してみることだと思います。やっていく中で見えてくるものがあれば軌道修正をすればいい。自分の人生の残り時間を考えたら、立ち止まっているひまなんてそんなにないですし(笑)。まさに思い立ったが吉日です。そして、“リスクを取らずして成長なし”──何でも成し遂げるためには、多少のリスクは付いてまわります。そこを怖がらず、年齢も一切考えずに突き進む。そして何かにつまずいたとき、“失敗”ととらえるか、“経験”ととらえるかで、その先が大きく変わると思います。

たまたま出会った1冊の本と3つの記事。いずれの方々も、「これだ!」と持ったものに迷わず飛び込み、腹をくくり成功するまでとにかく必死に向き合っている。しかし、結構夢を叶えるのはいばらの道だ。そのいばらの道を乗り越えるために、トライアルアンドエラーを繰り返しているのも印象的だ。

年齢を重ねているからこそ入ってくる情報や自分の持ち物も取捨選択し、必要なものを選び取っていく。だからこそ、年齢を重ねていても夢を叶えることができたのかもしれない。

30代半ばの遅めスタート。やりたいことがあるならば、悩んでいる暇はないらしい。



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