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【ピリカグランプリ・後夜祭】ETERNITY

ぐるぐると回っている。だんだんと細くなる階段は、一体いつまで続くのだろうとだんだん不安が募る。荒くなってきた自分の息を感じた時、いきなり足が止まった。
どうやら上が渋滞しているようだ。

クリスマス前の自由の女神の中は人で溢れかえっている。

この調子だと展望台へ行くのはだいぶ時間がかかるな。夕食はミュージカルを見た後にゆっくり取った方が良いかもしれない。そんな他愛もないことを逡巡しながら、しばらく寸止めをくらっていると疲労感が体中をじわりじわりと襲ってきた。彼女はさっきから熱心に小さな窓の外を眺めている。何か見えるのだろうか。カモメかな?

するといきなり下の方から何か聞こえてきた。その何かがじわりじわりと上に上がってくる。叫び声だろうか、話し声だろうか。こんな感覚は生まれて初めてだ。
それは信じられないけれど、歌声だった。その歌声が歌声をつなぎだんだんと大きくなって、しまいには僕達を追い抜いて上まで上がっていった。
みんなで合唱する状態になっているが、細い螺旋階段の中は声が反響するのでものすごい迫力だ。

「すごい!映画みたい、ほら、ゴスペルの!こんなドラマティックなことある?」

「本当だね、『○○にラブソング』を、だったかな。本当に映画を見てるようだね」

振り返り、興奮しながら香るように笑う彼女に僕は、ドキッとしてニューヨークの高揚感を抱きしめたくなった。

ガシャーン

大きな音にびっくりして目を開けると、目の前に巨大なシャンデリアが落ちていた。
照明がゆっくりと明るくなり、眠っていたことに気付く頃、人々はそれぞれ休憩に立っていく。

その時だった。ふわりとした甘い何かが僕の中を強烈に駆け巡った。
このかおり、この香りの名は・・・

ニューヨーク、自由の女神、オペラ座の怪人、彼女の香り。パズルのピースがピタリとはまる。20年間、どんなに考えても思い出せなかった香水の名前を、ふと思い出す。

この香りに街で出会う度息苦しくなったことからやっと開放される。ここまで来てしまったけれど。

郷愁に浸る安らかな気持ちの中で、僕のお腹はグーっと音を立てて笑った。


【869文字】

・・・


ピリカグランプリ、ありがとう。

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