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雪の音
「雪が積もると静かに感じるのは、雪が音を吸収するから」という物理的な根拠に鋭気をもらったことがあります。
それは、自分好みな現象にもちゃんと理由があったことに対する悦びで、自画自賛めいた活力となりました。
なんでも、雪が音を吸収する効果は吸音材と同じだそうで、雪のふわふわした隙間が音の振動を吸収してしまうそうです。
音を吸収し熱エネルギーに変えて反射を抑える効果、との説明には、わたしの頭の中で雪と熱が結びつかず、文系寄りな自分の理解力をつくづく思い知りましたが、これもまた楽し。「なるほどな」な世界です。
先日の朝も、いつにない静けさに、カーテンを開けなくても雪が降り積もったことが分かるほどで、あらためて「なるほどな」を実感しました。
とはいえ、立春を過ぎてからの記録的な寒波到来で、大雪に立ち往生する各地のニュースを見たり、積雪地に高齢な両親だけで暮らすことを案ずる話を聞いたりして、雪の音云々なんて言っていられない面もあり、わたしも大雪の通勤に難儀した一人です。
それでも、雪には人を童心にする一面もあって、職場では大の大人が窓のブラインド越しに降りしきる雪を眺め、
「マジか!」
「マジっすか!」
だけで会話する姿に、非日常的な可笑しみを感じました。
その様子と結びついたのが、なぜか芭蕉の句
いざ行む雪見にころぶ所まで
――です。
そして、雪の音を詠んだ句(作者:有働亨)
音絶えしこの音が雪降る音か
――この記事のきっかけとなった1句です。
最後に、雪の音について留めておきたいことを2つ。
自分の備忘録みたいに箇条書きでまとめます。
・今週、大雪を伝えるテレビニュースで、白川郷を訪れたインドネシアの女性が、初めて目にした雪についての感想を述べるなかに、”quiet heavy snow"
(字幕:静かな大雪)という箇所があって、それが心に残りました。
・ずいぶん前に観た『外国人が好きな日本のオノマトペ(擬音語)』といった内容の動画だったか何かのコーナーで、「雪がしんしん」が挙げられていて、なんだか嬉しいな、と思いました。
お読みくださり、ありがとうございました。