はじめてのサイン本
普段はのんびり派の自分が、まれに、「思い立ったが吉日」で行動することがあります。
6年前、チャド・マレーンが本を出版し、ルミネ the よしもとで記念サイン会があると知ったその日に「行こう!」と思い立ち、速攻でスケジュールを組み、それに合わせて往復の切符を手配する猪突猛進スタイル。
人生初となるサイン会に迷いなんて1ミリもありませんでした。
チャド・マレーン(以下チャドと呼ぶ)の知名度を考え、チャドを紹介するため”検索”に頼りたくなりましたが、ここはやはり、自分の力で紹介しようと思います。
参考にしたのはもちろん、チャドの初出版本『世にも奇妙なニッポンのお笑い』です。
『はじめに』の全6ページから、簡単なチャド紹介となるように抜粋してぎゅっとまとめてみました。
現在のチャドは、英語字幕の仕事で注目をあびており、本書には『笑いを翻訳するのは難しい』という章もあります。
自分の生まれ育った街パースを「のんきな街」と称するなど、飄々としたチャドの魅力満載な一冊ですが、この調子でいくと本題から離れてしまいますので、ここはぐっとこらえて、あと一つだけ、わたしがチャドを知ることとなった経緯を本書から引用します。
残念ながらわたしはチャドのこのドキュメンタリー番組を見ていないのですが、この上京から1年後、チャドはオーストラリアに強制送還されるかどうかの瀬戸際にたつこととなりました。
その当時チャドは、伝統芸を学ぶという文化活動ビザ(チャドの場合は漫才)で日本に滞在していたのですが、本書の中でチャドいわく、「お笑い天国の大阪ではすんなり認められたビザ」が、東京に来て1回目の更新で、「お前がなんでこんなビザ取れたんだ」という話になり、「これ以上延長させん」というお達しが出たそうで、たまたま何かで、この事の経緯を知ったわたしは、以降、チャドのことをチェックしているうちにファンになってしまったというわけなのです。
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では、いよいよ、サイン会当日の話に突入します。
この頃は名古屋市民だった私は、東京に到着するまでの間、音楽を聴きながらチャドに伝える言葉をあれやこれやと考えたり、窓の景色をぼんやり眺めたり、今で言う”推し”に会いに行く気分絶頂の中にいました。
ところが、……です。
憧れのチャドを前にした私は、チャドの目に自分の姿が入りこんでいることに舞い上がってしまい、「今日は名古屋から来ました」と言うのが精一杯。本にサインする際に添えてくれる名前を聞かれて、「○○○です」と我にかえったしだいです。
そんなわたしを歯がゆく思ってくれたのでしょう。チャドは「サービスやで~」と言いながら2回目の握手をしてくれました。
「ありがとう」も言えないままペコリと会釈したわたしは、不甲斐ないと言えば不甲斐なく、わたしらしいと言えばわたしらしく……。
思い出すだけで心ほんわりとなる、はじめてのサイン本の思い出です。
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ここからは、今のわたしのちょっとしたひとり言です。
自分の記事の詳細(日程と場所)に間違いがないか”チャド・マレーンサイン会”で検索したところ、6年前のチャドのTwitter(現X)が表示されました。よくよく読むと「ステキな写真が撮れるか!」とあり、あの日、一緒に写真を撮れていたかもしれないと意気消沈するも、あの時の光景はしっかり瞼の裏に残っているから、それで「良し」とします。
お読みくださり、ありがとうございました。